第7楽章その1 動き出す、それぞれの思惑
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
=第7楽章=
絡まる
「あいつら、行っちゃったな。」
翌日、少しだけ静かになった教室で、誰かが呟く。お昼休憩の後、3人で連れ立って出発したのだ。
「私たちは私たちのやるべきことをやるだけだよ。」
「そうだね。」
そんなやり取りをする中、少しだけ開いていた窓から紙ヒコウキが入ってくる。今日の空にはまだ雲一つなければ、そよ風一つも吹いていない。
「誰だか知らんが、すごいな。」
「どのくらい飛んでたのかな、コレ。」
教室内に入った後、一気に失速して床に落ちたソレを拾いながら、ジャンが想像してみる。広げてみると、そこにはとんでもないことが書かれていた。
「ナニナニ、『少女は預かった。返して欲しくばここまで来てみるがいい。』か。」
アスカが読み上げる。
「少女って、誰の事だろう。」
「この状況を鑑みると、フクシアだと捉えるのが自然だけど。」
「この時間になっても来ないもんね・・、フクシア。」
残された女子3人が分析する。
「くそっ!先手を取られた。」
レツが壁をグーで殴る。
「場所のことは書かれてないのか。」
「うーん、・・書かれてないみたいだね。」
レツが声を荒げるので、アスカの持つ紙をジャンが覗き込んで確認する。
「ミズ・ダリアに相談したうえで、手当たり次第に探すしかないかな。」
アマリリスが肩をすくめる。
レツが深呼吸をして冷静さを取り戻してから、指示を飛ばす。
「なら、ペアを組んでフクシアを探そう。ジャンとカンナはニフタ・ミナスから西側を、アスカとカミルレは北側を頼む。僕とリリーは校内を探した後、ニフタ・ミナス内をくまなく探してみる。イアンはとりあえず、ミズ・ダリアに報告を。そのあとは連絡係を頼む。」
「了解。」
彼らの不安な心を表すように、雲が空を覆い始めた。
「一雨来そうだな。そう少し行ったところで雨宿りでもするか。」
「はい。でも、行けるところまで行きませんか。雨雲は後ろから来ているので。」
「それもそうだな。よし、休息は目的地の近くでとろう。」
「了解。」
クレアとの決戦の地に向かう3人は、現在ネプトゥーネの北側130キロメートルの地点にいた。ポツリポツリと肩に落ちる雨粒を気にしながら、とにかく先を急ぐ。約束の時間があるからだ。
しかし、20キロメートルも進めないうちにザーッと大粒の雨が降ってくるようになってしまい、ちょうどよく見つけた洞穴で休息をとることとなった。
「雨・・ですね。」
「どうした。雨が気になるのか。」
空を見上げながらぽつり呟くアルメリアに、ジュピター校長が笑いながら問いかける。
「はい。冬なのに、雪ではなくて雨なんだなって。」
「それだけあったかいってことだろ。寒くて凍えるより戦いやすくていいじゃねーか。」
「そうだな。冷えてしまっては身体が動かなくなってしまうしな。雨で体温が落ちてしまう前に、決着をつけたいものだ。」
薄ぼんやりとしてきた空を雨雲が覆っている。
「少し仮眠をとるか。戦闘中に眠くなっても困るしな。」
ジュピター校長の作戦により仮眠が決まり目を閉じると、割とすぐに二人とも眠りに落ちた。
ふと、ポタンという水の音がして目が覚める。いつの間にか雨は止んでいた。どうやら、洞穴の天井に貯まっていた雨水が落ちる音だったようだ。
「気が付いたようだな。少しは休めたか。」
ジュピター校長の穏やかな声が聞こえる。
「ジュピター校長は休まれたのですか。」
アルメリアが目をこすりながら聞く。
「いや、空を眺めていた。」
単語につられて二人も空を見上げると、半開きの瞳に光属性魔法による街灯のまぶしい光が飛び込んできて、一気に覚醒する。
「さぁ行くか。夜だから明かりの魔法で照らしながら行こう。朝までには火口に出来るだけ近づきたい。二人とも、頼むぞ。」
「はい。」
「力になれるかはわかりませんが、よろしくお願いします。」
翌朝、亀の一刻。フォボス火山修験道入り口。
「あとおよそ十刻。頂上までは平均で六刻ほどらしいからな。少しゆっくり登りたい。頭に地形を叩き込むためにな。」
「了解。」
そして、太陽がネプトゥーネの町をすっかり明るくさせた頃合いの兎の一刻。大魔界からクレアがこちらの世界へやってくる。
「さらば大魔界。もう・・戻らないだろうな。」
ほんの一瞬だけ感傷に浸ったが、未舗装の修験道をキョロキョロしながら進む3人を見つけると、意識は簡単にそちらに向く。ヒトの姿ではなくコウモリの姿で来て良かったと思う。まだ3人にバレてはいない。
「仲間は二人かぁ。もっといっぱい連れてくると思ったのに。よほど大事にはしたくないんだろうな。ま、別にどうだっていいんだけどさ。」
そんな独り言を言いながら、空を行ったり来たりして時間を潰すことにした。
太陽が真上まで来た鷹の一刻。頂上を目前にした8合目地点の休息小屋。栄養補給を兼ねた、作戦の確認タイム。
「事前忠告の通りに、クレアは土属性の光耐性だ。この二つの属性の技はほとんど意味を成さないだろう。ついでに言っておくと、元が風属性のため、もし風属性の技が展開できたとしても全て躱されてしまうだろう。」
効果のある技が限られると、攻撃がパターン化しやすくなり、戦闘が長引くほど相手に有利に働いてしまいがちだ。そうならないためにはタイミングをずらすか、切り札となる技を取っておくのが一般的な戦い方ではあるが。
「二人の五光火はアイツにとっては奇襲となる。しかも、二人とも展開できるなど、想像だにしていないだろうな。」
この1週間でめちゃめちゃ特訓したのだ。素質があるとは言われたが、自分のモノにするにはほかの技と同じく鍛錬が必要だったのだ。おかげで5つ全てを一通り使えるようにはなったが。
「五光火は切り札にしておけ。あと、町は死守する。”火山の聖水”にも触れさせるなよ。」
「了解。」
そんな会話を知らないクレアは、コウモリの姿のまま火口を目指す。そんなクレアのことなど露知らず、3人は休息小屋を出発する。
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