第6楽章その7 五光火
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
「なんでカインだけなんだ?」
まず口を開いたのはイアンだった。
「確かに。全員じゃなかったね。」
「うーん、光属性だからじゃない?」
カンナが振り返ると、ジャンが考察する。
「でも、校長先生からの呼び出しってことは、クレアちゃんの関係じゃない?」
「え、でも、クレアちゃんて光属性か光耐性だかを持ってるって話じゃなかったっけ。」
「そういえばそうだったな。」
アスカの考えに、カミルレが大事なことを思い出すと、レツも頭を抱える。
「とりあえず、行ってくる。」
「ああ、そうだな。」
ここで立ち止まって考えていても仕方がない。ということで、後はカインに任せることにした。
「1年特待科、カイン・ヴォストークです。失礼します。」
2回ノックして、決まり文句を口にする。
「待っていたぞ。入れ。」
中からの声を受け、カインが校長室の中へ入っていく。五角形の部屋の真ん中にジュピター校長が一人いるだけで他に誰もおらず、どうやら呼ばれたのはカイン一人だけのようだった。
「アルメリアのことが心配か。」
「はい。まぁ、大事な仲間なので。」
クレアのことを話されるかと思っていたカインは、急にアルメリアの名前が出てきたことに少々驚いたが、アルメリアの入院に関してジュピター校長が口を出していたことを思い出し、平静を装って答えた。
「ふ、まぁ、そこまで心配しなくてよい。すでに回復はしている。今回の入院の目的は、後遺症の発現軽減治療だからな。」
「そうだったんですね、良かった。」
ジュピター校長の言葉に、カインは安堵する。その様子を見てから、本題に入る、と重い口調で言った。
「呼んだのはほかでもない、クレアのことで頼みがあったからだ。」
そこでカインは聞く。校長がクレアに予告をされたということを。そして、何人でも助っ人を連れて来てもいいと言われたことを。
「そこで、此度の決戦に、カインとアルメリアを連れていきたい。」
話しに唐突に自分の名前が出てきたところで、校長の話を一度制止する。
「ちょっと待ってください。僕とアルメリアは光属性ですよ。確か、クレアちゃんは光属性か光耐性の悪魔のはず。効果が無いんじゃ・・。それに、アルメリアは今、療養中なんですよ。いくらすぐに退院する予定だからと言っても、そんな大変な戦いにすぐ連れて出すなんて、少々酷では。」
校長は少し考えるそぶりを見せた後、静かに言った。
「光属性の技を使ってもらうのではなく、火属性の技を使ってもらいたくて呼んだのだ。」
「はい?」
言われている意味が分からず首を傾げる。
魔法使いは自分の持っている属性以外の属性の技については、使うことはほとんどできない。ほとんど、というのは、そもそもの技の威力が弱いものを、さらに弱くなら展開できるということだが、技として敵への対抗手段に使えるほどの威力はない。
例えば、水属性の攻撃魔法、アーグア・クチジョを光属性のカインが展開しようとしても、作り出せるナイフは短いもの1本がせいぜいで、しかも小指程度の太さの縄を切るのがやっとだ。それに対し、水属性のカミルレやレツが展開するなら、その刃の長さが自在な上に、数も能力があれば上限はない。能力値が高ければ、直径1メートルを超えるような巨木さえも断ち切ることが可能だ。
属性に関して、それくらいの能力差があることなど、校長ならわかっているはずなのだが。
「あの、意味が分からないんですが。火属性の技が有効なら、僕とアルメリアではなく、ジャンとアマリリスを連れていけばいいじゃないですか。」
「彼らでは無理だ。」
「どうしてそう言い切れるのか、説明をお願いします。」
頑ななジュピター校長に、カインが懇願すると、魔法に関する一つの不思議を口にし出した。
「光属性の魔法使いのみが展開できる火属性魔法がある。”五光火”と呼ばれる5つの技だ。あいつに傷をつけるのに、おそらく有効だろう。」
ジュピター校長は想像しながら話しているのか、なんだか気難しい顔をしている。カインは思わずジュピター校長から目をそらした。そらした視界の端に風呂敷を被った例の魔剣を捉える。なぜ捉えられたかというと、風呂敷の奥で小指の爪ほどの小ささだったろうか、埋め込まれた2つの宝石が怪しく光っていたからだ。その魔剣に、覚悟を決めろ、と言われているようで。
小さく息を吐いてから、一応確認する。
「その”五光火”って、訓練すれば展開できるようになるものなんですか。」
「まぁ、素質によるな。それで言うと、二人ともかなり高い質の魔法を持っているからな。少し特訓すればそこそこに展開できるようになるだろう。」
あまりにもはっきり”出来る”と言われて、驚きにポカンとしていると、納得と取られて勝手に話を進められた。
「決行は14日。今からでもお前たちなら間に合うだろう。クレアにも認められたお前の力を借りたいのだ。」
そこまで言われて、カインは大事なことを思い出す。
「あの、クレアちゃんをもし成仏させられたとしたら、校長先生も死んでしまうということですよね。」
「ふ、何、今更そんな心配するな。後悔はない。」
柔らかいまなざしでカインを見つめるジュピター。すでに覚悟は決まっているのだろう。ジュピター校長の言葉に、カインは表情を引き締める。
「わかりました。僕がやります。いえ、僕たちがやります。やらせてください。」
「その言葉が聞きたかった。ありがとう。」
嬉しそうに微笑むジュピターは、過去の走馬灯を見ているのか、どこか懐かしそうに高い天井を見上げていた。
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