side story カンナ編その6 受け継がれる強さ
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
「おーい、行かないようにって言ってるそばからやろうとしてるよー。」
鳥に変身してフクシアを足で抱えて飛んでいたアマリリスが、羽をパタパタさせながら指摘する。鳥になっているとはいえ、元は人間なので普通にしゃべれるのだ。
防衛魔法、エスペホ・コルティナ。(鏡のカーテン)
どうやら、竹林の3分の1程度をカバーするのが精一杯のようだ。
「フクシア!カンナんちの側を頼む。俺がそっち側に行く。カインは学校側で徹底防衛してくれ。」
「了解。」
イアンが指示を飛ばす。
「レツ!誘導頼む。空へ!」
「了解。」
アスカも叫ぶ。
攻撃魔法、リオ・ディレクトル。(川の指揮者)
水流を悪魔に当てて、竹林のそばから空の方へと押し上げる。水の勢いに負けて体勢を崩した悪魔が暴れて水の爆弾のようなものをいくつも吐き出す。
攻撃魔法、ピエドラ・ゴーマ。(石をゴムで飛ばす)
防衛魔法、コヒン・アブリゴ。(クッション・コート)
イアンとカインがそれらを打ち消す。
「がんばれー!」
「かてー!」
ふと子供の声が聞こえて振り返ると、学校の教室の窓が開いていて、子供たちが一生懸命に応援してくれていた。
「カンナ。」
アスカが、今日一番優しい声で呼びかける。プレッシャーからなのか、心配からか、はたまた観衆がいるからなのか。カンナの手が少し震えていたのだ。
「大丈夫。オレたちがいる。」
はっとして振り向いたカンナに、アスカが大きく頷く。
「守るんだろ。」
強くはないけど芯のある声が、身体の中にスッと入ってくる。手をぎゅっと握って気合を入れ直す。
攻撃魔法、クチジョ・トルナドー。(ナイフの竜巻)
葉っぱの形をしたナイフが上昇気流で巻き上がる。ナイフは確実に悪魔だけを狙い、すぐ真下にある竹の1本さえも避けている。これこそがカンナの真骨頂であり、おじいさんとの特訓の賜物である。
上昇気流には乗らずに、柔らかなそよ風に乗ってのらりくらりと揺れる竹の葉を眺めながら、おじいさんはぽつり呟く。
「・・強くなりよって。」
魔法使いたちの勝利に教室中が沸く中で、おじいさんは一人溜め息をつく。
「もう、やめるか。」
「え、なにを?」
切ない声に反応して心配してくれるダンくんに向かい、ニッと笑って見せる。
「いや、なんでもない。」
その日は結局、様子を見に来た魔法警察への事情聴取と、帰って報告書を作れという校長通達により、カンナは家族と再会することなく別れることになった。
「はー、やっと終わった。ミスター・ラードンの実践講義はやっぱキツイわ。」
あの悪魔戦から数日後の放課後、講義を終えて出ていったミスター・ラードンのいないホールで、カインが大きな溜め息を吐く。
「この後のフォロー訪問行きたくない。」
ジャンがベンチに突っ伏す。
「あー、カンナの母校の?フォロー訪問、誰が行くんだっけ。」
「私、アル、ジャン。」
アスカの確認にフクシアが答える。
「あれ、カンナは行かなくていいの?」
「私はおじいちゃんのお見舞いがあるから。」
「ん?お見舞い?」
女子が反応する。
「うん。なんか、大変な手術をするって言ってた。」
アルメリアを見ながらカンナが答える。
「コア除去手術・・ですか。」
アルメリアのつぶやきにカンナが頷くと、レツとアスカが驚く。その様子を見てカンナが話す。
「なんか、大変な病気を患ってて、それをコアで食い止めてたみたいだったんだけど、コアを取り除くことにしたんだって。」
「そっか。」
コアを取り除くということは、また病気の進行が始まるということだ。
「と、とにかく、私は行くね。また明日。」
「うん、また明日。」
自分に言い聞かせるような明るい口調に、アマリリスも無理矢理合わせる。妙に静まり返るその場に、レツの指示が静かに響く。
「3人とも、フォロー訪問頼む。」
「了解。」
講義の疲れを隠さない3人が、緩い返事とともに出て行った後で、カンナを追いかける、と言い残してアスカも行ってしまう。
「そういえばカイン。」
「ん?」
ふと思い出したようにアマリリスがカインに声を掛ける。
「あの日、ダンくんに何の技教えたの?」
「あ、あぁ、あの時教えたのはな・・。」
心地よい風が窓から入ってくる穏やかな病室に、誰かがノックする音が響く。
「失礼します。おじいちゃん、大丈夫?」
心配で顔を歪めたカンナが入ってくると、おじいさんはベッドから体を起こす。
「ああ。平気じゃよ。さすがに直後は酷い痛みに襲われたが、今はもう落ち着いとるよ。」
「手術は成功したんだね。よかった。」
左腕には点滴が刺さっており、頭にも包帯を何重にも巻いていたが、状態は悪くないようだ。
ホッと息を吐く。そこに、少し遅れてイベリスさんが二人の子供と一緒に入ってくる。
「おじいちゃんだいじょぶ?いたくない?」
ダンくんが、ベッドサイドのカンナのお母さんには目もくれず、おじいさんに駆け寄る。
「おう。わしゃこんなもんじゃくたばりゃせんよ。安心せい。」
頭を撫でる手の動きは心なしかゆったりだ。そんな病室の扉の外に、カンナを追いかけてきたアスカが辿り着く。
「でも、本当に良かったの?」
カンナのお母さんがおじいさんに問いかける。その声に反応し、扉に伸ばした手を慌てて引っ込める。仕方なく、入るのをやめて扉の横のベンチに腰掛ける。
「ああ。時代は変わる。古い考えのままではいけん。未来のことは未来の者に託すことにしただけのこと。そう悲観的になるな。」
「はい。」
カンナのお母さんの、心許ない返事だけが、静かな病室に漂う。
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