side story カンナ編その3 流しそうめん大会
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
イベリスさんが行ってしまってすぐ。
「どうかしたの?ベリーおばさんの声がしたけど。」
廊下の奥から姿を見せたカンナが、説明を求めて母を見ようとして、その後ろに控えたカミルレと、靴箱の上の水槽に釘付けの男の子の姿を捉えた。
「あ、カンちゃんだ。」
水槽からカンナに目線をずらした男の子が、カンナを見てパッと笑顔を見せる。
「あれ、ダンくんだ。あ、モナルダちゃんもいる。」
いとこ二人に気づいたカンナの向こうから、追加のそうめんのざるを持ったアマリリスと、お茶の入った人数分のコップをお盆に載せたアルメリアがやってくる。それを確認した母が、あとは任せたと言わんばかりにサンダルを脱いで家の中へと入っていく。
「じゃあ私は家の中でモナちゃんと遊んでるから、みんなで先に楽しんでくれるかしら。」
「はーい。」
ということで、カンナのいとこにあたる男の子ダンくんを連れて庭へ戻る。畑の分析と修繕が終わったばかりの4人とともに、流しそうめんの準備隊と合流する。
「あ、おじいちゃん。」
「おー、ダンも来たか。よし、始めるぞぃ。」
「はい!」
おじいさんの掛け声で流しそうめん大会がいよいよ始まった。
祖父と孫が竹をはさんで笑い合う。そんな穏やかな時間を作り出すための悲しい事実に、この時はアルメリアだけが気付いていたのだった。
まだ赤ちゃんのモナルダちゃんのお世話を、女子3人が交代し、今度は母がそうめんを食べに庭へ出る。レツが氷を追加したのを確認した後、アルメリアとともに片づけをしにキッチンへ籠もった。
「おじいさまは何かご病気をお持ちなのですか。」
追加のそうめんを茹でるカンナに、お皿を洗いながらアルメリアが質問する。
「えっ、いや、そんな話聞いたことないけど・・。なんで。」
カンナはかなり動揺しているようで、持っていたトングを落として拾っていた。
「胸の辺りに、医療用のコアが見えたので。」
魔法使いが何かしらの病の克服のために魔学病院で治療を受ける際、病気の進行抑制や悪化阻止のために、医療用の”コア”を埋め込む治療法を採る場合がある。これは、本来は各属性の魔法使い5人がかりで展開する抑制魔法を、光属性の魔法使い一人で出来るようにした医療魔法だ。だが、この埋没手術は特別な装置が用いられる特殊手術のため、どこの魔学病院でも出来るわけではない。
そのコアがあったということは、何か重大な病の進行を魔法で食い止めているということになるが。
「そーめんください。」
カンナの考察タイムは、ダンくんを連れたアスカが追加のそうめんを取りに来たことにより、時間切れとなった。
「おにいちゃんがあくまね。にげろー。」
「逃げろー。」
「俺から逃げられると思うなよ。」
男子は、食べ終わったダンくんに付き合い、鬼ごっこならぬ悪魔狩りごっこを始める。最初の悪魔役はイアンになったようだ。
「おにいちゃん、はやくあくまにまほうかけてやっつけて。」
守られ役のダンくんが、近くにいたジャンを魔法使い役に指名する。
「え、ボク?いいよー、やっちゃうよー。」
「待て待て!火はまずい、火はまずい。」
おだてられて構えるジャンを、レツが慌てて制止する。
「こっちのお兄ちゃんの方がカッコいい技使えるんだぞ。」
「え、あ、あぁ。任せろ。」
アスカの機転でカインにお鉢が回る。
特殊魔法、ソル・ボス。(光の声)
攻撃魔法を放つから、地面の下へ逃げてくれ。
心で合図し、イアンが頷くと。
攻撃魔法、ソル・マルティーヨ。(光の鉄槌)
もちろん、ものすご~く手加減している。
防衛魔法、ルナール・アグヘロ。(もぐら穴)
「うわー。」
うめき声を上げながら地面に潜り、ダンくんの視界から消える。
「おにいちゃんすごーい。」
ダンくん大興奮。
「じゃあ、こんどはおにいちゃんがあくまね。」
「僕?いいよ。」
第2指名はレツのようだ。
「おにいちゃん、カンちゃんとおんなじかぜのひと?」
ダンくんがアスカを見て言う。
「ああ、そうだよ。」
「じゃあ、おにいちゃんがあくまやっつけて。カンちゃんみたいに、ぶおーって。」
「オッケー。任せろ。」
ダンくんが風のジェスチャーをするのでアスカがレツを見ると、首を縦に振って頷いていた。
攻撃魔法、トルナドー・マニプラー。(竜巻を操る)
見栄えのために高さはそこそこあるのだが、風力がほとんどない幅の狭い安全性の高い形に収めて放っている。
防衛魔法、レクト・フエンテ。(まっすぐ噴水)
技を自分のすぐ目の前でやり、その直前に竜巻を消すことにより、竜巻でやられる演出を安全に出来る仕掛けだ。ちなみに、即興で打ち合わせしているように見えているだろうが、実は5月ごろには案が出ていたコンビネーションである。
「すごいすごーい。おみず、ふてきたー。」
上った水が落ちてきそうな地点でダンくんが喜んで待っていたが、濡れないギリギリのところで落ちるように、途中でレツが方向修正をしていた。
「じゃあ、つぎおにいちゃんがあくまのひと。」
ジャンが指名される。さっきの制止は何だったのか。子供って恐ろしい。水の膜で体を隠して少し移動してから、レツが声を掛ける。
「熱い炎の悪魔には、冷たい水の魔法が効くんだ。」
「そーなの?やってみて。」
「よく見とけよー。」
手のひらの上に火の玉を作るジャン。それに迎え撃つために構えるレツ。
食後の遊びはまだまだ続く。
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