side story カンナ編その1 ルンプン・バンブー島風の家
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
=side story=
命のバトンを繋ぐまで~カンナ編~
これは、冬を目の前にクレアと僕らが出会ったところから、少し遡る。そう、まだカンカンに暑かったとある日の午後のこと。
「ただいまー。」
「お邪魔します。」
外課題の帰り道、その道中にカンナの実家があるということで、みんなで寄ることになった。敷地面積の広い庭付きのその家は、この国の雰囲気にはなんだか不釣り合いな気もしたが、竹林に囲まれるような形で佇む建物の様は、絵になるかっこよさがあった。
「あらカンちゃん久し振り。」
立派な建物に呆気にとられている仲間たちなどお構いなしに、カンナががらりと玄関の引き戸を開けると、中から母が顔を出す。
「そっちはお友達ね。今、お茶とお菓子用意するからどうぞ上がってー。」
「ありがとうございます。お邪魔します。」
1階平屋建ての伝統的な家、ということらしい。
「昔、カンナのおじいちゃんとおばあちゃんがポラ・ニシアのルンプン・バンブー島に旅行に行ったときに泊めてもらったお宅を、真似して造ってもらったんだって。」
この家の作りの特殊さの秘密を母が教える。
ポラ・ニシアは、エブリア・ペディアーダの北側に位置する島国だ。全部で88の島からなる列島国で、その中の一つが竹で覆われたルンプン・バンブー島である。
い草の香りがほんのり漂う八畳間を2つつなげた部屋に、またがるように置かれた大きな欅の1枚板をみんなで取り囲むようにして座る。
「丁度、ルンプン・バンブー島から取り寄せたお菓子が届いたところなのよ。この緑茶とよく合うのよ、ほら食べてみて。」
菓子鉢2つ分の和菓子が出てくる。しかもみんな種類がばらばらで、見たところ各種1つずつのようだった。
「ありがとうございます。いただきます。」
その量にみんなで呆気にとられながらも、とりあえずアマリリスがお礼を口にする。
「そうそう、カンちゃん、これお仏壇にお供えしてくれるかしら。」
そう言って渡された小皿には、菊の花の形の落雁が色違いで5つ乗っていた。
「はーい。」
渡された小皿を仏壇に供えると、チーンと1つ鳴らして手を合わせる。その動作を、みんな手を止めて見守っている。
ちなみに、亡くなった方を仏壇で偲ぶ文化はエブリア・ペディアーダにはない。写真は飾るけど。
「そちらの女性は。」
イアンが問いかける。仏壇には笑顔の老婆の写真が飾られていた。
「ああ、これは私のおばあちゃん。でも、会ったことはないんだ。」
「カンちゃんがまだ赤ちゃんの時に、亡くなっちゃったからね。」
母は、今度はどら焼きを配り始める。ご丁寧に一人1個ずつあるようだ。
「そうだったんですね。」
どら焼きに驚くフクシアの横で、カミルレが相槌を打つ。
老婆をさみしそうに見つめるカンナ。
「やっぱり、会いたいと思うか。」
アスカの問いかけに、少し考えてから、ちょっとだけね、と答える。
「一言でもいいから、声を聴きたかったなぁって。」
「そうねぇ、さすがに覚えてないわよねぇ。」
母が、今度は何種類もの漬物を出してきた。同時に、積み上げた小皿も用意されてきたので、さすがに女子が手を出して手伝う。
「あのさ、お母さん。」
「なあに、カンちゃん。」
その様子を仏壇の前から振り返って見ていたカンナが、申し訳なさそうに母の動きを止める。
「さすがに出しすぎだと思うよ。」
けれど、母は周りを見渡し、まぁ気にしないでと一蹴。出して満足したのか、空になったお盆を手に台所へ消えていった。これにはさすがにクスクスと笑い声が上がった。
そんな和やかな空気を切り裂くような大声が、外から聞こえてくる。
「おおい、誰か来とるんか。まあどっちでもいい。竹の準備できたぞぉ。」
誰の声?え、どっちでもいいの?竹?みんなで頭にハテナをいくつも浮かべながら、カンナも含めてキョトンとしていると、そんなのお構いなしに母が返事をする。
「はぁい、今行きます。さぁみんな庭へどうぞ。流しそうめんの時間ですよ。」
もうダメだ。みんなカラカサス家の雰囲気に流されている。
「どうする。」
「流石に、急だしね。」
と緊急会議勃発。なかなか動けないでいると、またも外から大声が。
「来ないんなら全部べちゃるぞぉ。」
”べちゃる”とは”捨てる”ことだと、以前カンナが言っていたのを思い出す。
「ごめんみんな、食べていって。おじいちゃん、あー見えて達人だから怒ると恐いのよ。私の魔法もおじいちゃんにしごかれたんだ。」
そう言って視線を下にそらしたカンナが虚空を見つめる。その表情から、よっぽど怖かったんだろうということがわかり、その場は一瞬冷気に包まれた。
「だからお願い。」
現実を取り戻し顔を上げて手を合わせるカンナの様子に、みんなで顔を見合わせる。
特殊魔法、ソル・ボス。(光の声)
何やらアルメリアが行動に出た。その技の効果をカインが向かいから見守る。と、二人同時に何かをキャッチする。
「ミズ・ダリアの許可が取れました。」
「ホントに~。」
冗談半分でカミルレが聞くが。
「はい。ジュピター校長のソル・ボスで、楽しんで来い、とお返事がきましたので。」
「校長承認済みかよ。」
アスカのツッコミが炸裂した。
「しかも、今日の外課題の報告は明日でいい、とも言ってきた。」
「報告、今日、じゃない?」
カインの補足にフクシアが戸惑ったところで、司令塔のレツが笑いながらゴーを出す。
「じゃあまあ、いただこうか。」
ということで、10人プラス母と祖父の12人で、流しそうめん大会をやることになった。
なんだかおかしなメンバーだが、この後さらに人が増えることなど、この時は誰も想像だにしていなかった。
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