第1楽章その4 1年生初の討伐同行
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
昼食後、僕らは現場に急行した。授業返上、討伐優先。とか言いつつ、討伐同行は初である。
強化魔法、マリポサ・プルマ。(蝶の羽)
空から一直線に約15分飛んだ先の町ガリダ・ストロッフィーのはずれに深紅の悪魔がいた。
周辺住民はすでに避難していたようで、がらんとした町には人っ子一人いない。
そんな街の静けさを破る荒くれ者の巨大な悪魔は、二人の光属性の魔法警察官によってその動きを封じられていた。周囲の建物は大きく破壊されており、隣町との境界ギリギリで攻撃が止まっていた。
暴れさせろというように苦しむ悪魔の額と両手の甲には、それぞれ1本ずつ角が生えていた。
「巨悪魔族角悪魔ですね。」
黄土色のマントを羽織ったフリージア・ヴィントフックが断言する。討伐隊特有のカラフルなマントが目を引く。
「ガイ、例の技よろしく。」
「了解。」
隊長の指示を受け、青竹色のマントを羽織ったガイ・ブジュンブライが、せっかくのマントをマーベラスに渡してから呪文を唱える。技を使うときには邪魔らしい。
攻撃魔法、アルコ・イリス・トルナドー。(虹の竜巻)
五色の竜巻が悪魔を五角形に囲う。すると、3つの竜巻は割れ、赤色と茶色の竜巻が残った。
「火と土か。火を扱う様子は見受けられないが。」
「ということは、だ。土属性火耐性と分析すれば良いということになる。ということで、守りは頼みますよ、隊長。」
落ち着いている印象のある3年生の中で、唯一の賑やか要因のガイ。1年生を前ににやにやと隊長をいじると、マーベラスはわかりやすく溜め息をつく。
「ったく。まぁとにかくだ。水と風で攻撃、主に秘技でダメージを。光は援護、土は相殺だ。」
「火も相殺ね、了解。」
「倒して光化させる。1年もいいな。」
了解。
悪魔退治の仕方は主に2つ。
1つは今回の悪魔のように根の部分も悪である悪魔の退治の際に選ぶ”光化”。倒して光に変えることを言う。光になった悪魔は人間界に留まることも大魔界へ還ることも出来なくなり、空間の狭間を漂うことになる。
もう1つは根の部分に善いものを持っていると確認できた際に選ぶ”成仏”。大魔界ではなく天界に魂を送るものだ。人に憑いた悪魔を退治するときによく選ぶ。
攻撃魔法、サル・エリダ。(傷に塩を塗る)
攻撃魔法、トルナドー・フレチャー。(竜巻の矢)
攻撃魔法、プランタ・ティヘラス。(植物のハサミ)
攻撃魔法、フリオ・テネドール。(冷たいフォーク)
畳みかけるように技を繰り出す。1年生イアン、アスカ、カンナ、カミルレによる連続攻撃。
それに反抗するように、悪魔はギシャーッと声を上げて右前足を振りかざす。
防衛魔法、エスペホ・コルティナ、クアトロ。(鏡のカーテン、四重)
向日葵色のマントの3年光属性リアトリス・ヤーレンが、光の壁でギリギリ受け止める。
攻撃魔法、フエンテ・アテンシオン。(噴水にご注意を)
突き上げた水流が悪魔のバランスを崩す。瓶覗色のマントを翻し、3年水属性ベルガモット・ヤムスクロムが放った一撃だ。
これには悪魔も、ギシャシャーッと声を上げて倒れる。
と、ここで二人の魔法警察官が戦線離脱。
「大丈夫ですか。あとは僕たちにお任せください。リア、ケアを頼む。」
「了解。」
お疲れの魔法警察官二人を物陰に連れて行くと回復魔法をかけてあげる。
回復魔法、ルナ・インシエンソ。(月のお香)
「早期防衛ありがとうございました。あとは私たち討伐隊が処理します。」
「助かります。ならば、自分たちは避難させた市民の様子をうかがいに向かいます。」
「お願いします。」
魔法警察官が退いたことにより動けるようになった悪魔は、頭を振って角を振り回し始める。
うわああぁぁ。
巨大な角に何人か吹っ飛ばされた。
「厄介なやつだな、この”赤のパラサント”は。なかなかやられてくれねー。」
3年生煉瓦色のマント、寡黙な土属性の狙撃手ヒロト・ドドマスが呟く。
攻撃魔法、リオ・ディレクトル。(川の指揮者)
1年の青い優等生レツが、重い一撃を華麗に決める。それを見て、ベルガモットがうっとりする。
「さすが”水の精霊”の使いレツ・ネーピッド。白馬のなんとやらのようね。年下だけど憧れるな。」
「その噂、私も聞きましたけど、本当なんですか。」
「僭越ながら。」
フリージアの確認にレツは肯定する。
この世界には、形を持たない声のみの偉大な存在として”精霊様”がおられる。各属性にお一人ずつ、5体の精霊様がこの世界におり、その方々の御加護を得ようとする”精霊信仰”が浸透している。御加護を得るための”霊宅参り”は魔法を使う者にとっては大事な慣習の一つだが、霊宅に行けば精霊様がいるわけではなく、実際は別にある住処にひっそりと佇んでいるらしい。
そして、精霊様のそばでお世話をするのが、”精霊の使い”と呼ばれる5人の魔法使いだ。その一人がレツなのだというから驚きだ。
「1年もやるなぁ。俺たちももっと気合いを入れていくぞ。」
了解。
瑠璃色のマントを翻し、3年水属性ハイド・ダカルがぐっと意気込むと、ほかの人たちも腰を落とし攻撃態勢に入った。
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