第6楽章その3 森の中のラボ
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
廊下を歩いて奥に進みながらアスカは続ける。
「それで思ったんです。きっと、見つけ出したネックレスの中のデータをコピーしてバックアップしてあるから、返しても大丈夫なんじゃないか、と。」
「だからあの二人にああいう指示を出したのか。」
「ああ。」
無言のコミュニケーションの後のアスカのカンナへの指示。
『アルメリアと二人でガニメデのもとへ行って、大声で『見つけた!』って叫んできてくれ。あいつが気付いたら、思いっきり投げてやれ。』
「すごい推察力ね。さすが特待科。」
静かに話を聞いていたマーティーさんがアスカを褒める。
「その分析能力があるなら大丈夫そうね。さぁ着いたわ。」
廊下の一番奥。数段の階段を下りた先。二重扉が開かれると、薄暗い部屋の中から、コンピュータの明るいスクリーンセーバーの光が漏れてきた。ここは?と聞くと、部屋の明かりがつけられ、所狭しと並んだたくさんのコンピュータが姿を現した。
「コンピュータルーム。私以外の人が入るのは、これが初めてよ。言っとくけど、マリアどころか、ダリアだって入れたことないんだから。」
「すごい・・。」
メインモニターの奥の可動棚には、ファンのついたケースがいくつも並び、下に向かって伸びたケーブルで、モニターとつながれている。また、手前の左右の壁には扉付きの棚が置かれ、分厚いファイルやノートがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。
「さあ、中へ入って。データを見せてあげる。ダリアから、ジュピター校長とその親友の悪魔の話も聞いてるしね。」
二人を部屋に入れ、メインコンピュータ前のチェアに深く座ると、3つもある画面のあっちからこっちからカーソルを動かし、ファイルを開いていく。さらに、机の下に備え付けのスライドテーブルを引き出すと、開きっぱなしの書き込み途中のノートが現れる。そこに視線を落とすと、ガニメデとか毒とか気になるワードが書かれていて、まさに今研究されているんだなあと実感した。
「今年が正念場だからね。他の子たちに伝えられるように、ちゃんと頭に叩き込みなさいよ。」
「はい。」
「ありがとうございます。」
その後、1時間ほど3人の捜査官は情報の共有や分析をした。
「今日はお世話になりました。」
ログハウスから出て挨拶をする。マーティーさんがラボと呼んでいるケーブルだらけの建物も、外から見ると小洒落たログハウスなんだよなぁと思いながら外観を眺める。よく見ると、玄関側は四角形で、奥のコンピュータルーム部分が六角形になっていた。
「この真上だけ防衛魔法解除しておいたから、帰りは飛んで帰れるわよ。」
「ありがとうございます。」
ラボのデータを守るために、やはり防衛魔法が山全体にかけられていたらしい。
「気を付けて帰ってね。」
「今日はありがとうございました。」
強化魔法、マリポサ・プルマ。(蝶の羽)
上から見たログハウスは鍵のような形で、なんだか不思議だった。
「真っ暗になる前に帰ろう。強化魔法を追加でかける。流れから振り落とされるなよ。」
「それ、火属性に言う?」
超火力による急加速魔法。強化魔法、チョロ・ディスパロ。火属性の魔法使いなら誰もが一度はやったことのある魔法であり、魔法一家で育ったアマリリスにとっては割となじみ深いモノの一つでもある。
「そうだったな。」
とはいえ、風属性魔法との相性はどちらかと言えば悪い技なので、ここでの展開は好ましくない。まあ、それを見越してアスカが風属性魔法を追加でかけると言っているのだが。
強化魔法、エリックス・トレンバラ。(螺旋の新幹線)
風で軌道を作り、その中をすごいスピードで進んでいく。あとはもう、その道に沿って真っすぐに帰るだけだ。
二人が帰路についた頃、ガニメデと応戦していた組がようやく学校に戻ってきた。空はぼんやりと仄暗く、すでにいい時間だったため、報告会は明日ということになった。教室に、残していたカバンを取りに行く。
「さすがにヴェヌスは遠いな。光属性の強化魔法使ってこの時間なんだもんなぁ。」
「川の向こうだしね、ヴェヌスは。」
イアンとジャンが文句を言う。当たり前だ、本当に遠いもの。ヘールボップ魔法学園からだと、山の向こうのルリオーディ・フィーロ州を横断し、ディアペルノ・ロイと呼ばれる幅数十メートルの川を越えた先になる。州で言うと、ファーロス・リムニ州に当たるのだ。まあ、川沿いの町なだけ助かるが。
「あれ、アスカとリリーは?」
机の横のカバンを手に取りながら、カミルレが疑問を口にする。
「別行動。」
「アスカがリリー連れてどっか行っちゃったの。」
フクシアが端的に答えると、教室の後ろのロッカーから参考書などを取り出しながら、カンナが補足する。
「アスカが?じゃあ、その話してるとき、髪いじってたか、アスカ。」
カインが何か裏のある質問を投げかけると。
「はい。毛先を指でくるくると。」
顎に指をあてて、虚空を見つめながらアルメリアが答える。
「じゃあ大丈夫だ。問題ない。」
レツのアスカに対する信頼の厚さに、女子らが首を傾げる。
「あいつが髪をいじるのは、自信があるのを隠したい時だからね。」
カーテンを閉めながらイアンが説明する。なるほどね、と納得したところでみんなで家路に着いた。
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