第5楽章その5 返されたネックレス
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
その頃、荒れたガニメデを止めようと奮闘する戦闘組はというと、かなり疲弊していた。これは技をたくさん展開したことによる身体的疲労というより、振り回されて困り果てている、といった方がいいだろうが。ただ一人を除いて。
「私にあれを返せ。せっかく処分できたと思っていたのに。ここに来て人間なんかの味方をするとは。」
言っていることの意味するところは分かりかねるが。先ほどよりも荒れて、力任せに攻撃を繰り返していることは確かだった。マリアたちを襲ったという毒の爪まで使いだしている。その毒については土属性魔法で消せるだろうとのことで、イアンとフリージアが対応していた。
攻撃魔法、ヴェラーノ・ペゾーニャ。(真夏のひづめ)
その間もマーベラスが動き回る。レツやカミルレの防衛魔法により、その行動範囲は狭まってきてはいるのだが。
「マーベラス、右!」
バニラが叫ぶ。
抑制魔法、ケーマル・グアンテ。(焦げたグローブ)
ギリギリでかわしつつ、魔法を展開し技を消す。
「マーくん大丈夫?相当疲れてきているみたいだけど。」
息を切らし始めたマーベラスを見て、ベルガモットが心配し始める。何しろ、ガニメデの放つ技の相殺を一手に担っているのだ。ハチャメチャな動きについて行って技を消す。簡単なようで体力能力ともにかなり消耗する大変なことなのだ。しかも、取り逃しをコスモスに任せる以外は全部自分がやると言い張るのだから、見ているこちらが心配になるのだ。
「僕のことは気にするな。戦闘に集中しろ、ベルガモット。」
「・・了解。」
逆に叱られてとりあえず返事をするが、ガニメデよりもマーベラスを見続けるベルガモットを見て、イアンが最後尾にいたカインに声を掛ける。
「おいカイン、光の回復魔法で何とかなんねーのか。」
「ならないわけじゃないけど。」
様子を見ていて動こうとしないカインにイアンがいら立つ。
「大魔王相手の戦いに、手加減なんざ必要ねえだろ。出し惜しみすんな。」
「うーん、まあ、そうだな。」
アルメリアからの連絡をもらっているのを言っていいものか考えていたカインだったが、言わない方が油断させられると判断した後で、イアンよりも前に出て魔法を展開する。
抑制魔法、ムシカ・アロマテラピア。(音楽アロマセラピー)
カインの手のひらから皆のもとにそれぞれ音符が飛んでいき、体のすぐそばで弾けて傷を光に変える。さらに後から行った音符が体にスーッと入っていき、体力や能力の回復を促す。
「サンキュー、カイン。みんな、しまっていくぞ。」
「了解。」
体が少し軽くなったマーベラス隊長が気合を入れ直すと、それを聞いたみんなもホッとしながら気合を入れ直し、返事をする。
風に乗って聞こえてきたその力強い返事を耳にしたカンナが、慌てて叫ぶ。
「みーなさーん!やっと見つけましたよ、ネックレス!」
その声に全員が振り向く。そこには、空からやってきたカンナとアルメリアがいた。
「カンナ!アルメリア!ほんとにあったのか。」
「はい。ここに。」
いち早くレツが確認すると、アルメリアがカンナの右手を指し示した。
その会話を聞きつけたガニメデが凄い勢いでカンナ目指してやってきた。
「カンナ!アル!」
その勢いにびっくりして声を上げるカミルレとは対称に、二人は特に驚いた様子もなくガニメデをまっすぐに見据えた。そして適度な距離まで近づかせると、アスカに言われたとおりに思いっきりネックレスを投げつける。
「うおりゃあーーっ!」
「えーーーーっ!」
まさかの行動をまさかのセリフとともにまさかの声量で行うカンナに、その場に居合わせた仲間たちが驚いて、声を上げる。中には驚きを通り越して、若干引いている人もいたようだが。
「もらったあ!」
ガニメデは投げられたそれをガシッとつかみ取ると、真っ黒な球体”風穴”を出現させる。通称を”悪魔の通り道”と呼ばれるそれは、大魔界とこちらの世界を繋ぐゲートのようなもので、すべての悪魔はこの風穴を通ってこちらの世界に現れるのだ。帰る時もそれは一緒で、その球体に吸い込まれるような形で、ガニメデは大魔界へと消えていった。
一瞬の静寂の後、力の抜けたカンナは、きゃあぁぁと悲鳴を上げながら地面に落ちていった。
抑制魔法、スアベ・エステラ。(柔らかいマット)
消えていったガニメデにみんな気をとられる中、地面に直撃しかけていたカンナを、ヒロトが危機一髪クッションを作る。
「終わった・・のか。」
臨戦態勢を解除させたハイドが呟く。その間に、落ちていったカンナのもとへ、1年生たちが駆け寄っていく。
「・・みたいですわね・・。」
コスモスが周りを見渡しながら言う。そのタイミングで力の抜けたマーベラスは、咄嗟に反応したガイの風魔法に身を預けていた。
特殊魔法、ブリッサ・アルフォンブラ。(そよ風の絨毯)
3年生の討伐隊の面々が、顔を見合わせながらミッションの達成を確認する。そして、マーベラス隊長が指を鳴らして叫んだ。
「よし、ミッションコンプリート。全員撤退。学校に戻るぞ。」
「了解。」
隊長の一声で、生徒たちは町を離れる。先ほどまでの喧騒はどこへやら。一気に静けさを取り戻したヴェヌスの町を、学校に戻っていく魔法使いたちを。ミズ・ダリアはもう一人の女性と一緒に隣町から見守っていた。もちろんこのことは生徒をはじめ誰も知らない。知っているのは、二人の間をたまたま通り抜けた一陣の風くらいだろう。
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