第5楽章その3 内線の鳴り響く教室で
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
アルメリアによる衝撃の告白は続く。
救急車で横になってみると、頭の中が何かおかしいことに気が付いて、魔法を展開させて自分で探してみました。
強化魔法、ブスカンド。(探す)
すると、脳内の一部が損傷していることがわかりました。きっと最初の衝突の衝撃が原因だろうと思いました。私はすぐに治癒の魔法を展開して、損傷が広がらないようにしました。
特殊魔法、セダ・インテルメディオ。(絹の間奏曲)
特殊魔法、ベラ・ボスケ。(ろうそくの森)
その後、病院に到着して担当医の方の懸命の手術のおかげで、私は無事に一命をとり止めました。けれど、脳内の傷は治りそうにありませんでした。そこで私は心臓の手術の後、その損傷部分の破壊が進行しないように、さらに魔法を展開しました。
防衛魔法、コルティナ・エンヴォルベール、スィンコ。(カーテンで包む、五重)
その時展開した魔法の効果が最近切れたらしく、少し前からの私の異変は破壊が進み始めてしまった影響によるものでした。閉鎖性頭部外傷。手術の際に、医師が病気としての名前を教えてくれました。今回は魔法ではなく科学的に手術してもらいました。
とりあえず手術は成功しましたが、医師の方は後遺症が残るかもしれない、とおっしゃっていました。先日の能力検査中の右半身麻痺は、その後遺症の1つでした。医師の方は麻痺のほかに、発作的な痙攣や意識喪失などの症状が出ることも考えられる、と教えてくださいました。
「これから何度か迷惑をかけることがあると思うんです。私は、そんなこと、ホントは嫌なんですけど。それでも、皆さんと一緒に頑張りたいから・・。」
大粒の涙がぽとらぽとらと制服のスカートに落ちていく。あーあ泣いちゃった、と顔をほころばせる女子の横で、泣かせるつもりはなかったのに、と男子が指で頬をかいている。すると、レツが前に出て、泣き続けるアルメリアの頭を胸に抱きかかえる。
「悪い。泣くほどつらい過去をムリヤリ話させた、みたいになって。」
「いや、これは、そういうことではなくて。」
レツの胸で必死に否定する。
「こんな話を聞かされて、面倒だって嫌いになられたら嫌だな、と思ってしまって・・。」
その言葉を聞いてみんなで顔を見合わせる。
「嫌いになる?」
「別に。」
アマリリスの質問にフクシアが答える。
「誰も、お前のことをキライになんかならねぇよ。むしろ、そんなお前の傷ついた心を俺が癒したいくらいだ。」
「あの、今それをやられるとややこしくなるからやめて。あと、ちょっと腹立つ。」
イアンがいつもの口説き文句を吐き始めてしまったのを、カミルレが止める。
そんな様子を伺っていたアルメリアが、ふっと笑った。それを見逃さなかったレツが穏やかな声で力強く言った。
「大丈夫だ、安心しろ。僕たちがいる。僕たちだってお前と一緒にいたい。お前ひとりのミスなんかすぐにカバーしてやる。だから・・、困ったらすぐ言えよ。どんな些細なことでもフォローするから。わかったな。」
「・・はい。」
少女の目から、次から次へと涙はあふれ出てくる。けれど、返す声は明るい。その明るい声を聞いてみんなが安心した時、不意に教室の内線が鳴り響いた。
オレが出る、とアスカが受話器を取る。教室に設置されている内線が鳴ることなんてほとんどなく、珍しそうにその様子を眺めていると、どーしよーみんなー!という悲鳴に近い声が聞こえてきた。
「そんな大声出さなくても聞こえるんで、とりあえず落ち着いて話してもらっていいですか。」
耳から迷惑そうに受話器を遠ざけていたアスカが、呆れ気味にミズ・ダリアをなだめる。
「・・はい、・・はい。あーマリアちゃん?あ、はい、・・はい、・・はい。え!?ガニメデが!?ヴェヌスに!?わかりました。すぐに行きます。」
気になるワードの登場に、その場の空気が一瞬にしてピリリとしまる。
「ミズ・ダリア、なんだって。」
ガチャリと受話器をおいてしまったアスカに向かって、カミルレが声を掛ける。
「えっと、マリアちゃんていただろ。あのコがセレナちゃんの形見としてクロスのネックレスを身に着けてたらしいんだが、それを取り返しに、今ガニメデがこちらの世界に来たって。」
「は?今?」
「え、ちょっと待って。なんでセレナちゃんのネックレスをガニメデが取り返しに来るわけ?」
「てか、そんなもの着けてたか?」
アスカの説明に、教室内が騒然とする。
「で、そのネックレスの中に大魔界についてのデータを入れてたもんだから、ガニメデが怒ったらしい。」
「マジか。」
「あいつらやるなぁ。」
「機密情報、漏洩、ガニメデ、多分、焦る。」
セレナとマリアの快挙に、教室内が沸く。
「で、今の状況は。」
一足先に冷静さを取り戻したジャンが、机の上に地図を広げる。
「逃げ回るマリアちゃんから一度は奪ったものの、どこかで落としたらしい。」
「え、そんなにバカでしたっけ、ガニメデって。」
すっかり涙の引っ込んだアルメリアが、いつもの調子で毒を吐く。
「で、慌てて探しているらしいんだが、そのガニメデよりも早く見つけ出せってさ。」
「うわー、ムチャぶり。」
ミズ・ダリアの突きつけるミッションは、やはり一筋縄ではいかなそうだ。
「さっき、ヴェヌスって言ってなかったっけ。」
「あぁ。今その辺らしい。」
ヴェヌスはこのニフタ・ミナスから東側に300kmほど行った、川向こうの町である。夏合宿で最後に行った町だ。
「あの町も因縁だねぇ。」
ジャンが呟く。
ヴェヌスは、このエブリア・ペディアーダにおける三大事件のうちの一つが起きた町である。その事件と似た事件がちまちまと起き続けており、”何かが無くなる町”と揶揄される事も多い。
「とにかくヴェヌスへ向かおう。アル、カイン、強化魔法かけてくれ。向こうに着いたら僕とカミルレでガニメデと応戦、それぞれイアンとカインが援護。ネックレスはそれ以外の人で探してくれ。」
「邪魔するだけでいいんでしょ。任せて。」
司令塔がバシッと指示を出す。
「よしっ、行くぞ。」
「了解。」
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