side story カイン編その6 ここが帰る場所
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
珍しく窓の開いた王の間でカインとレツはボレリアス14世ご一家とともに、二度目の鐘の音を確認した。
「貴重なお話、ありがとうございました。それではそろそろ時間ですので、皆さま玄関ロビーまでお願いします。」
「ああ、そうだな。行くとしよう。」
コトナー王が立ち上がり歩き出す。執事によって開かれた扉から部屋の外へ出る一歩手前で立ち止まり、振り返る。そして不安そうに口を開く。
「カインくん。」
「はい。」
「ライラは、我々を受け入れてくれるだろうか。」
弱々しいその言葉を打ち消すように、笑顔で、出来るだけ力強く答える。
「大丈夫ですよ。だって、ここが母さんの帰ってくる場所ですから。」
「そうだな。ありがとう。」
コトナー王の笑顔を確認すると、女性陣も部屋を出て玄関へ向かった。
「聞こえた。馬車、音、来る。」
「見えた。約1km先の信号の上。こっちに向かって真っすぐ来てる。」
耳のいいフクシアと、目のいいアスカが確認する。
「よし、開門。」
イアンの合図で門番の方が動く。大きくて頑丈な鉄の門がゆっくりと開いてゆく。
「全員ダイニングへ戻れ。来るぞ。」
「了解。」
アスカの号令で、様子を見に来ていた人たちが散る。
同時刻の裏門では。
「父さん、ムチャさせてごめん。」
「馬車より早く来いって、しかも姿を隠せって、注文が多いぞ、カイン。まあ、光魔法全力で使ったから、間に合ったけど。」
まだ少し息の荒い父さんに、カインは背を向ける。
「レツ、案内頼む。」
「控え室だったよな。了解。」
こちらへどうぞと案内しようとするレツに一礼すると父さんは振り向き、カインに問いかける。
「これで、良かったんだよな。」
「それは・・、これからわかるでしょ。」
「そうだな。」
カインの言葉を噛み締めながら、父さんはレツの案内で王宮の中へと入っていく。
そのタイミングで馬のいななきがはっきり聞こえてくる。
「母さん、喜んでくれるかな。」
皆には平気なふりをしていても、一番緊張しているのは間違いなくカインだろう。不安そうに言葉を吐き出し、ネガティブな感情も一緒に出しておく。
「いや、きっと大丈夫だ。」
心の中をポジティブに切り替えてから、王宮の表玄関の方へまわる。
馬車が門の中へ入ってきたタイミングで玄関の大扉が開かれ、国王王妃両陛下と二人のお姉さんが王宮の中から姿を現す。
馬車が止まり、その扉が開いても、中の女性は一向に出てこない。心配そうに一同が見守る中、意を決した女性は馬車からゆっくりと降りてくる。
「お帰り、ライラ。」
「お父様、お母様、お姉様。」
馬車からやっと出たオリーヴ改めライラ第3王女は少しの間戸惑っているようだったが、カインの笑顔と、彼の持っていたペンダントを見てすぐに理解したようだった。
「お帰りなさい、ライラ。ずっと待っていたのよ。」
「・・ただいま。」
呟いて自分に言い聞かせる。そしてその場にひざまずくと、ふっと笑顔を作り、心を致して、はっきりとした声で言い放った。
「ライラ・コンストレイト、ただいま戻りました。長い間姿をくらませてしまい、申し訳ありませんでした。」
「無事の帰還、大いに嬉しいぞ。」
拍手の渦がその場を覆い尽くす。
「カインのお母さん、本当に王女様だったんだね。」
「準備中はあんまり実感なかったけどね。」
ダイニングの窓辺から外の様子を伺っていたカミルレとカンナが、現実を見つめる。
「でも、迎え入れられて嬉しそう。」
「うん。やっぱり、王女。やっぱり、家族。」
フクシアも外を伺う。
「けど、あたしらの出番はココからだよ。」
「カインの親父さんも到着したことだし、みんな気を入れ直していくぞ。」
「了解。」
ロウソクに火を灯し終えたアマリリスと、カインの父親を控え室となっている部屋に案内し終えたレツも外を伺い、気合を入れ直す。
いよいよ、パーティーが始まる。
それはまるで風船に空気を入れていくように、生徒たちの心配をよそに会話は膨らんでいく。思い出の品を飾っていたのも良かったのだろう。話題に尽きることはなく、会話が途切れることもない。20年も離れていたとは思えないほど和やかな会は、滞りなく進んでいく。
さらに、国王陛下の思い付きで、当時からいる王宮騎士の方を部屋の中へ迎え入れ、思い出話をさせたり、料理長によるオープンキッチンを実施してみたりと、王家の皆様も予想以上に楽しんでおられるようだった。まあ、その間の警備補佐や、オープンキッチンの準備や補助でカイン以外がバタバタと動かされたけど。
それと、僕ら生徒による魔法のショータイムまで用意された。ちょっと何かやってみてくれなんて言われて、返事もまだなのに盛大な拍手が送られてきたもんだから、やらざるを得ず。困った司令塔レツがカミルレの肩をポンと叩いたら、ノーアイディアでも動き出すしかない。
防衛魔法、エスペホ・コルティナ。(鏡のカーテン)
カインが防護壁を築いて安全が確保されたのを確認したカミルレが、声高らかにショーを始める。
「さあ、マジカルショーを始めましょう!まずは、カードマジック!をやろうと思ったのに、あらあらカードが散らばった!」
攻撃魔法、カルタ・ボテリャ。(トランプ瓶)
カミルレの意図をギリギリ読み取ったアスカが魔法を展開。瓶の蓋が勢いよく開いて中のカードが散らばる様子を魔法で表すと、笑いが起きる。こういう感じのショーらしい。
というか、やってほしいなら事前に言っておいてくれ、なんて思いながら、カミルレ主導のショーは絶えない笑い声とともに進んでいく。
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