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DRAGON+CROSS  作者: 黒姫美奈
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第1楽章その3 この世界について

誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。

 僕らのいる世界とは違う、悪魔の世界”大魔界(だいまかい)”。その世界を牛耳っているのが、大魔王ガニメデだ。もう何千年も王の(くらい)についている猛者だ。なかなかこちらの世界に乗り込んでくることはないが、一部の研究者たちは、ここ数百年は活発に動いているとみている。実際、つい何年か前に悪魔が大暴れしたときには、それらしき影を見たという者もいる。


 そのガニメデにとても近い存在の悪魔に、ジュピター校長は呪いをかけられた、と3年生から聞いた時は背筋が凍る思いだった。


 そんなやつを相手にしなければならないのか、と。


 ただ、今のところは3年特待科、通称"討伐隊(とうばつたい)"がガニメデ関連で出動したことはないらしいので、落ち着いたものだが。


 そもそも、3年特待科が討伐隊と呼ばれる理由は、外課題のミッションの難易度が学生向けにしては高いからだ。普通なら、魔法を使う警察組織"魔法警察(まほうけいさつ)"が出動すべき案件が、ヘールボップ魔法学園に廻ってきているのだ。学生でなんとかならなくても、長年の知識と実力を持ったジュピター校長がいるからだ。隣国モシコ・ダッソスが鎖国政策に入る前には、この国の首都よりも近いそちらの魔法案件も多少担っていたらしい。今がヴィーザル暦4,638年だから、約800年前の話だ。


 "ヴィーザル(れき)"とは、僕らが普段生活する中で使用している年月の数え方だ。"世界大戦乱(せかいだいせんらん)"が起こった時、平和のために各国が協力する体制として"世界大連合(せかいだいれんごう)"を発足させ、心をまとめるために新たにイチから数え始めたのだ。現在鎖国をしているモシコ・ダッソス以外はこのヴィーザル暦で統一されている。


 年月の数え方はもう一つあって、"始動暦(しどうれき)"という。Magic(マジック) Starting(スターティング)の略式として、M.S.(エムエス)と表記されているものだ。これは"魔法"の存在に気づいた人々が、魔法を能力として使い始めた頃をゼロとした数え方で、それでいうと今は始動暦5,262年、表記だとM.S.5,262年になる。


 ちなみに、ミセス・バーゼリアによる世界歴史学ではこの5,000年分を2年でやるらしい。2年特待科にいるカミルレの兄(いわ)く、スピード感が半端ないとのこと。今から覚悟しておかないと。


「大魔王ガニメデのことでわかっていることは、小悪魔族爪悪魔火属性だということと、始動暦508年ごろに3代目の大魔王になったということぐらいだ。」


 歴史に関わる細かいところはミセス・バーゼリアの授業でやると思われる。


「耐性がまだわかっていないから、もしも、万が一、戦うハメになったら、まずそこを解明した方がいいだろう。」


 チャイムが鳴る。ミスター・シドーは教科書をパタンと閉じた。

「今日はここまでだ。次回からは、過去にこの国で退治された悪魔をもとに、実際に分析練習をする。しっかり復習しておくように。」

 ありがとうございました。


「小悪魔族ってことは、あたしたちでも倒せるんじゃないの。」

 先生のいなくなった教室にアマリリスの声が響く。確かに、とつられてみんなが笑顔をみせる。

「今のままじゃムリですよ。」

 希望を裂いた声の主はアルメリアだった。


「何で?あたしたちと同じサイズなら、取り囲んで捕まえて木っ端微塵じゃない。それならあたしたちにもできそうだけど。」

「確かに囲んで追い込めれば、私たちにも出来そうなのにね。」

「でも、そんなやり方で何とかなるなら、先輩方がやっているハズです。」

「あ、そっか・・・。」

 アマリリスに乗じていたカンナも肩を落とす。空気が暗い。


「それに、私たちの狙いはガニメデではなく、ジュピター校長の呪い。ガニメデとはタイプが違うと思うんです。」

 空気が重い。

 頭の中がごちゃごちゃだ。


 昼飯にしよっと。

 誰かのつぶやきでみんなが食堂に向かう。


 特待科の建物と体育館を挟んだ向こう側にある普通科の建物。まあ、正確には普通科の3年生の教室と特別教室が入った建物。その2階にある学生食堂は、メニューが豊富な上、値段もお財布に優しい。さらに、特待科生なら学生証の提示で全メニュー半額という嬉しいサービスまである。忙しい特待科生のほかに、お弁当を忘れた普通科生にも重宝されているこの場所は、お昼時のいい情報交換の場になっている。普通科生が町などで聞いた噂話の大半は、その解決依頼が特待科に届いているからだ。書類に書かれていない細かいことを普通科生から仕入れてから午後の外課題に出発するのが、特待科生である僕らの日課になりつつある。


「ルーは何にした。」

「今日はエビフライ定食。」

「ボクもエビフライ。」

 ()()ことカミルレとジャンの選んだメニューが被った。この二人はよくかぶる。


「またぁ?ホントにすごいよね。かぶり過ぎて。」

 リリーの発言に、みんなで笑いながら食事をとる。が、5分とたたないうちに。

「ごちそうさまでした。」

「イアン早っ。」

 またもリリーのツッコミが。

「ナポリタンは好物だからな。」

 ちなみにレツのとんかつ定食は今できて取りに行っている。


「今日は人多いね。」

「午前だけの予定が、午後にも講義が入ったから、弁当がない人が多いんだと。」

 ルーの疑問に、月見そばを食べているアスカが教えてくれる。

「誰の講義が入ったんですか。」

「校長の武器学。」

「あー。」

 アルメリアの質問にアスカが顔も上げずに答えると、周りから冷めた相槌が。


 みんなが半分くらい食べた頃合いで、3年特待科の面々がやってきた。なんだかバタバタと注文の列に並ぶと、優先調理で注文し、競争するかのように食べ始めた。と思ったら、一人が立ち上がり、こちらに近づいてきた。


 マー(にぃ)どうしたの、と声を掛けるのはアマリリス。僕らのところにやってきたこの人こそが、3年特待科の首席でありアマリリスの実の兄であるマーベラス・ポートレスだ。また、特待科3年生10人で構成される討伐隊の隊長も、首席である彼が務めている。


 マーベラスは1年生10人を見渡すと、僕らだけに聞こえる声でこう言った。


「悪魔の出現が確認された。巨悪魔族との情報が入り、討伐隊に出動依頼が来た。そこで、初実習としてキミたち1年生にもついてきてほしいと思う。どうだ。」

 周りの普通科生たちはこちらに目もくれず、食事を続けている。


 僕らは顔を見合わせると、力強く頷いた。

ページの最後まで読んでいただきありがとうございます。少しでもおもしろいと思ったら、評価や感想を残して頂ければ嬉しいです。これからもマイペースに投稿していきますので、続きが気になった方はブックマークをしていただければと思います。

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