side story カイン編その4 絵本『戦いを止めた音色』
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
時はほんの少し遡り、カインたちが王宮に向かっている途中のこと。
「なぁ。」
「ん、ナニ?」
「初めて会話したときのこと、覚えてるか。」
カインにより外出禁止令が出されているヴォストーク家で、ふと、カインの父さんが昔のことを掘り出す。
「そりゃあもちろん。言葉も通じるし、同じ魔法使いだし、何よりも魔法を善いことに使おうとしてるのがステキだなぁって思ったのよね。」
「”オリーヴ”っていうその名前も、その時に俺がつけたんだよな。」
「そういえばそうだったわね・・。」
『今の名前を捨てたいから、あなたが新しい名前を付けて。』
名前を捨てない限り、王族としての鎖からは逃れられない。そう思って思い切ってお願いしたときのことを思い起こす。
「あの時は逃げるのに必死で、そんなこと気にもかけなかったけれど。私の名前の由来って、結局何だったの?あの時は『意味はそのうち分かるから』って言われたと思うけど。何一つわかってないわよ。」
「はっはっは。わかってないのにオリーヴを育てていたのか、君は。」
庭にはオリーヴの木が何本も植えられており、立派なオリーヴが実っている。このオリーヴも欲しい人には売っているらしい。相当気に入っているようで、毎日手塩にかけてお世話しているのだ。
「植物のオリーヴの花言葉は”平和”と”知恵”。賢くて、誰よりも平和を望んでいた君にぴったりだなと思ったんだ。」
「へぇ、嬉しい。でも、そんなこと、よく知ってたわね。」
「仲間の一人の土属性の魔法使いが、そういうことに興味があってね。調べものによく付き合わされていたんだ。」
「なるほど。」
肩をすくめるのを見て、オリーヴさんが苦笑する。
「そういえば、その前の名前って何だったんだ。『捨てたい名前だ』としか聞いてなかったような。」
「あれ?本名まだ言ってなかったっけ。」
「それこそ出会ってすぐのころに2,3度説明を受けたけど、『捨てたい名前』の話を何度もさせるのはどうかと思って、忘れることにしたんだよ。」
「そんなに何度も『捨てたい』って言わないでよ。こっちは捨てたくても捨てられなくて、今でもちゃんと覚えてるんだから。」
オリーヴさんが視線を斜め下にずらす。
「じゃあ、改めて聞いてもいいかな。君の本当の名前を。」
「・・ライラ。ライラ・コンストレイト。」
イヤイヤという感じで名乗る。すると、タイミングを謀ったかのように、家のベルが鳴る。
「あっ、私が出るわね。」
話題をずらせるのをこれ幸いと、オリーヴさんが動く。はーい、と返事をしながらガチャリと玄関の扉を開けた瞬間。
きゃあっっ!
不思議な馬車に吸い込まれたかと思うと、御者のいないその馬車は、予定通りと言わんばかりに颯爽と出発していった。
「あっ、ちょっと。ナニするのよ。どこへ連れて行く気なのよ。」
突然の空の旅に驚き、乗降用の扉を叩く。
防衛魔法、アベルト・ポルタ。(扉が開く)
ダメだ、何も起きない。
「だめ、開かない。どうしましょう。」
困り顔のオリーヴさんを乗せたまま、御者のいない馬車は峠を越えてゆく。
「これでいいんだよな、カイン。」
強化魔法、ソル・トレンラピド。(光の特急列車)
一言呟いて自分に言い聞かせてから、父さんも家を出た。
「母の幼少期にいったい何があったのか、教えていただけますか。」
メイン会場である広い大食堂で女子がセッティングという名の飾り付けをする中、カインとレツが王の間で改めてボレリアス14世に謁見する。
「そうだな。話しておいてもいいのかもしれんな。鎖国している我々の内情など、君たちには知る由もなかったろうからな。ちょうどいい。シグナス、アークワラ、あの絵本を読み聞かせてやれ。」
「そうですわね。」
「今、持ってまいります。」
しばらくしてアークワラが持ってきた絵本の表紙には、竪琴を持った女の子が描かれていたのだが、カインにはその容姿になんだか見覚えがあった。
「その子は、もしかして・・。」
絵本のタイトルは『戦いを止めた音色』。
今から何十年か前。みんなが生まれる少~し前。一人の女の子がこの国に生まれました。その女の子は生まれつき魔法が使えました。それも、輝く光の魔法で、とてもきれいな魔法でした。
その子は竪琴も上手で、毎日のように演奏をしていました。その音色はこの国の隅々まで届き、いつもみんなとても楽しみにしていました。
ある日、3人の男の人が来て、その子を連れ去ろうとしました。その子が抵抗していると、別の男の人がやはり3人来て、こちらもその子を連れ去ろうとしました。
そのうち、男たちは争いを始めてしまいました。一方は武器を、一方は魔法を使って戦いました。その戦いは何か月も続きました。たった一人の女の子を巡る戦いは、予想を超えて長引いてしまい、その間に人々はだんだん疲れていきました。
そんなある夜、それは今までになく静かな夜のことでした。どこからか竪琴の音が聞こえてきたのです。しばらく聞いていなかった優しい音色に、人々は耳を澄ませました。
どこから聞こえてくるのだろうか。人々は周りをよく見渡しました。すると、高い時計塔の上。あの女の子が座って竪琴を弾いていたのです。
するとどうでしょう。音色を聞いた者たちが争いをやめ、武器を下ろし始めたのです。そう、女の子の竪琴の音色が戦いを止めたのです。
人々はその音色を聞きながら泣きました。自分たちはなんて愚かな争いをしていたのだろうか、と。
これによって醜い争いは終わりました。けれど、女の子は争いの責任を感じて、国を出て行ってしまいました。
それ以来、竪琴を奏する女の子の存在は、幻になってしまったのでしたーー。
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