side story カイン編その2 母さんの話
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
「まぁそれもあるんだけどね。」
冗談のような理由の後で、まじめに言い直す。
「1番はやっぱり、私が魔法使いだったから・・かな。」
「魔法使いだったから?」
「うん。別に魔法使いは国内にたくさんいたんだけれどね。王家の人間が魔法使いだったのは数百年ぶりでね。みんなに嫌われちゃったのよね。」
ペンダントのカメオを懐かしそうに見つめる。
「それで逃げてきた、と。」
「そう。」
さみしそうな声を聴くと、本当は逃げたくなかったのかもしれないと思ってしまう。
「で、その時にこっちの国の道案内をしてくれたのが、お父さんたちだったのよ。」
「たち?」
「俺の友人が手伝ってくれたんだ。国境付近で母さんを見つけて、話を聞いて、手を貸すことにしたんだ。」
暖炉の上の写真を見る。男性がいっぱい写っている1枚の写真。
「そういえば話したことなかったな。あの写真に写っているのは、俺が学生時代によくつるんでいた奴らだ。パルクールのようなことを、魔法を活かしてやってたな。」
パルクールとは、走る・跳ぶ・登るといった移動動作を用いて、心身の鍛錬を行う運動方法である。都市や自然環境の中を自分の身体能力だけで、より滑らかにより素早く通り抜けるために、より効果的に体を動かすことが求められるエクストリームスポーツでもあるが。
父さんがそんな運動をしていたなんて、今では想像がつかない。一言で言うと、父さんは肥満体質なのだ。
「そういえば運動できるって言ってたな。あれ、ホントだったのか。」
「うん。みんなシャシャシャッてどっか行ったと思ったらヒューンって戻ってきて、チャキッと打ち合わせしたら、さぁ行こうかって。手際良かったなぁ。」
「ちなみに言うと、みんなヘールボップ出身の魔法使いだったぞ。全員普通科だったけど。」
「へぇ。今はもう会わないの?」
「うーん、会うやつもいるけど、ほとんど会ってないな。まぁみんな忙しい身だからな。仕方ないさ。」
「そうなのか。」
母さんをふと見ると、さみしそうな目をしていた。
「母さんは、その王家の方々とは会ってないのか。」
「うん。逃げてきてから一度も帰ってないわね。・・会いたい気持ちもあるんだけど、ちょっと怖くて。」
頬を指で搔きながらそんなことを言う。
「でも、今が幸せだから別にいいの。カインも傍にいるしねー。」
「そっか。・・ごちそうさまでした。」
「うん。今日も早く寝なさいよ。」
「はい。おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
簡単にシャワーを浴びてから、ベットに入る。はあ、と大きく溜め息をついてから、視線をカレンダーに向ける。カレンダーの2週間後の日付には予定が入っていて、わかりやすくお花のシールまで貼ってある。
”母の日&母さんの誕生日”
「誕生日かぁ・・。」
今日の教室での出来事や、夕食時の両親との会話を思い出しながら、カインは眠りについた。
次の日、学校にて。
「昨日、ウチに帰って親に聞いた話なんだけど。僕の母さん、嫁入りしてから一度も実家に帰ってないらしい。」
「えーーーっ!?」
授業間の短い休息時間に呟いたカインの爆弾発言に、男子のみならず女子まで反応する。
「帰りたくても帰れないのかな。」
「忙しくて帰れないとか。」
「カイン、話す、もっと、詳しく。」
結構ぐいぐい来る。びっくりして黙り込もうともしたが、圧に負けてカインが折れた。
「いや、その、・・だから、姉妹げんかをして家出したままらしいんだ。」
うん、間違ってはいない。
「それはダメだよ。ちゃんと仲直りしておかないと。」
「そうだよ。家族なら、仲良くしなきゃ。」
女子がヤケに食いついてくる。
「どうしたの、今日。女子アツいね。」
ちょうど疑問に思っていたことをイアンが笑い飛ばす。
「一応話は聞いたが、こういうのって女子の方が得意そうだよな。」
アスカがそんなことを言う。
「で、カイン、どうしてほしいんだ。話題を振ったってことは、何かしてほしいことがあるんだろ。」
レツも食いついてきた。ちなみに女子も興味津々で、続きを待っている。
「母の日が今度あるだろ。実はその日、母さんの誕生日なんだ。」
「よし、仲直り作戦決行ね。」
「オッケー。放課後あたりに作戦会議しようよ。」
という事態に発展してしまった。
母さんの出自のことは・・、うん、今は黙っておこう。
決行は母の日当日。アイディアは女子が出してくれることになった。それをもとに計画を練るのはカインだ。準備が必要なものがあれば、ほかの男子の手を借りる話になっている。
「実家で待ち伏せ、レストランを貸し切り、ハートのバルーンをたくさん飾る。さて、これらをどうまとめようか。」
帰宅後、自室で頭を悩ませる。
「ま、ここまで育ててくれた感謝もある。絶対に成功させるんだ。」
腕まくりをしてノートと地図を広げる。
「よし、いっちょやってやっか。」
そして当日。
両親には、家から出るな、と釘を刺して自分は出かける。ちなみに父さんは仕掛け人の一人だ。
集合場所は学校の裏山の頂上。学校とは反対側をみんなで見下ろす。ずっと先には国境のバリケードも見えている。
「なあ、カイン。」
「んあ?」
バリケードを見続けていたカインにレツが問いかける。司令塔がやると言ったので、全員参加だ。
「今日は200km以上飛ぶって言ってたよな。ってことはアレ超えるのか。」
「ああ。」
「あの向こうって、鎖国国家のモシコ・ダッソスじゃなかったか。」
「大丈夫だ。特別な許可が下りてる。」
「いや、なんでそんな許可が取れたのかってことを聞いてるんだが・・。」
謎を残したまま、10人は山を飛び立った。
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