side story カイン編その1 誕生日って特別だよね
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
=side story=
愛されて生まれてきて~カイン編~
「はァ、はァ、はァ・・・。」
その女性は逃げていた。荒い息を無視して、ひたすらに、遠くへと。
「見つかったか。・・・まだなのか!このままでは国王様に顔向けできん。全力を挙げて探せ!探せぃ!」
遠くから、自分を探す男たちの声が聞こえる。
「はァ、はァ、もっと遠くへ行かなきゃ。」
意識が朦朧とする中、女性は走り続ける。当てもなく、ただひたすらに、自由を求めてーー。
真っ暗な教室にぼんやりと灯ったアマリリスの炎が、レツの作った氷のケーキを艶めかせる。
「せーの!」
♪ハッピーバースデートゥーユー
ハッピーバースデートゥーユー
ハッピーバースデーディア ジャン
ハッピーバースデートゥーユー
「おめでとー!」
フーッ
「ありがとー。」
カンナの合図で恒例の歌を歌うと、本日の主役が炎を吹き消す。
「最初に誕生日が来たのはジャンか。」
教室の電気のスイッチをつけたアスカが言う。
「ボク4月生まれだから、そーゆーとこは得するんだよね。」
お気づきの通りに、これは入学して間もないころの話である。
「いーなー。私は11月だからずーっと先なのよね。」
「私は9月。」
カミルレとカンナの割と遅い組が嘆く。
「でもボクも予定日は5月だったらしいんだ。だから、2週間くらい早かったみたいで、生まれる直前とかは結構バタバタしたって言ってたよ。」
「まじか。」
「ま、どっちにしろ1番早いのに変わりはないな。」
「確かに、そうだね。」
氷のケーキを水道に持っていこうとするレツを除いて、男子4人で会話する。氷じゃ食べられないからね。
その日は外課題がなく、午後の実践も教授の都合でいつもよりも遅い時間から始めることになっていたため、時間の増えたお昼休憩を使ってジャンの誕生日パーティーを開催していた。とはいっても飾り付けはなく、それぞれにお菓子を持ち寄り、プレゼントお菓子ボックスを用意して渡すだけだが。あ、氷のケーキは、”ケーキが無いのは嫌だ”といった女子のわがままに、レツが応えて創り出したのだ。
「私、両親のケンカ中に陣痛が来て生まれたんだって。」
「さすが、カンナ。」
「ケンカを止めに入ったのかな。」
「確かに。」
「ウチの両親もそう思ったらしくて、それからはケンカしたことないんだって。」
「素敵な話だねー。」
「うちなんかさー・・。」
女子もそれぞれに親から聞かされた誕生秘話を語り始める。
そんな話を聞きながら、カインはふと思った。そんなこと、気にしたことはなかったのだが。みんなが嬉しそうに話すのを見て、うらやましいと感じたからかもしれない。
自分が生まれたころの話を聞いたことが無い、と。
その日の夜。
「ただいまー。」
「お帰りなさい。ご飯できてるわよ。」
「あぁ、了解。」
玄関の扉を開けると、母さんが笑顔で出迎える。
夕飯は、母さん特製ホワイトシチュー。
「父さんは。」
僕もこのシチューを気に入っているが、父さんの方が気に入っているだろうに、この場にいないのが不思議で聞いてみた。
「お届けに廻ってる。」
「そっか。」
そこで、スプーンですくおうとしていた母さんの手が止まる。
「急にどうしたの。」
父さんがその場にいないことを僕が気にするのはかなり珍しいので、気になったらしい。
「いや、僕が生まれた時の話って聞いたことないな、と思って。」
母さんはそっぽを向くと、半ば上の空で、そーねと呟いた。今まで話さなかったのには何か理由があるのだろう。そう簡単には教えてはくれないようだ。僕は諦めてシチューを口に運んだ。
息子の半分ほどの量を食べていた母さんの方が先に食べ終わり、お皿を早々に片付けると、机の上のカインの領域以外を綺麗に拭いた。普段ならカインが食べ終わるのを待ってから、お皿を洗って机を拭いているので、なんでだろうと思って様子をうかがっていると。
「そろそろ話しても大丈夫かしらね。」
そんなことを言いながら、どこかから真四角の箱を大事そうに持ってきた。箱の中から何やらケースを大事そうに取り出すと、ケースの中身をカインに見せる。
「母さん、それは?」
細かな装飾が目に付くペンダントは、明らかに一般人が手に出来る域を超えていた。そんな高価そうなペンダントの説明を、母さんはあろうことか4文字で済ませた。
「うーんとね、”王家の証”。」
「へ?」
しかも、ニコニコで、平然と。
「だ・か・ら、王家の人間だっていう証拠。」
意味が分からなかった。
と、そこに父さんが帰ってくる。
「ただいまー。おっ、それ、まだとってあったのか。」
「もちろんよ。一応ね。」
父さんは知っているようだが、僕には話が見えない。
「カイン、落ち着いて聞いてね。私はね、隣の国の第3王女なの。」
「は?」
唐突過ぎて頭が追い付かず、逆にリアクションが取れない。
「じゃあ、どーして王女がここにいるんですか。」
「ん-、それはね。逃げてきたから。」
「どうして。」
落ち着き切ったカインの疑問に、母さんはとんでもない答えを返した。
「だって、王宮での生活に飽きちゃったんだもん。」
カインは思わず頭を抱え、大きく溜め息をついた。
「この際、王女とか女王とかはもうおいといて言いますけど、そんな理由で逃げないでくださいよ。」
僕の呆れたセリフを聞いて顔を見合わせた両親は、思わず破顔した。
「だって、ねー。」
理由になっていない気がする。
二人とも笑っているが、笑っている場合じゃない気がするのは僕だけだろうか。
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