第4楽章その4 言ってしまった
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
窓の外は雲一つない。
対して、教室内には雨雲が漂う。
「言ってしまった。」
「言われてしまった。」
「まぁいいじゃないですか。言うべきことを言ったのですから。」
うなだれるカミルレとアマリリスを横目にアルメリアは花をくるくるさせている。それを見て、泥にはまりかける男子が作戦会議を始める。
「オレたちがまず話し合わなきゃいけないのは何だ。」
「話し合いの前にカイン、お前が知っていることを教えてくれ。」
アスカの切り出しに、レツが話を整理しようとする。
「・・わかった。」
女子にセレナの墓参りと必要な資料探しを頼み、男子だけで話を進める。
初めて討伐同行した後の報告会の日の夜に、クレアとすれ違ったこと。そのあと、雨の日にはセレナとマリアらしき少女たちを見たこと。諸事情で大魔界での会話を盗み聞き、セレナとマリアの名前を知ったこと。レツの家に行く前に再びクレアに遭い、少々会話をしたこと。
「つまり、例の校長の親友だっていう悪魔クレアに1番目をつけられていたのがカインだったと。」
「おそらくな。」
1番言ってはいけないことは言っていない。校長が友を斬ったと言っていた魔剣のことだ。きっと”友”というのはクレアだろうなと感じ、なんだかしゃべってはいけない気がしたからだ。
「確か校長の話によると、そのクレアも元は人間の魔法使いだったんだろ。」
「何属性だったんだろうね。」
「悪魔ってことは耐性もあるよね、きっと。」
「カイン、何か知ってるか。」
自分のロッカーをあさり始めたアスカを置いて、4人が分析を始める。
「いや、何も聞いてない。でも、光属性と土属性のW持ちの校長とペアを組んでたんだから、火か水か風のどれかだと思う。」
「その当時は、な。」
ロッカーの上に何冊かの本を広げていたアスカが口をはさむ。
「ん、どういうことだ。」
「悪魔は確か、属性と耐性を自分で決められてはず。特に、魔法使いから悪魔に成りあがった人、俗にいう”断罪者”は、悪魔として契約するときに自分で選択できたと思うが。」
何かの資料で見たことがあるのか、うろ覚えで話しているらしく、凄い勢いでページをめくっている。
「ジュピター校長と対等になるために、変更している可能性があるってことか。」
「ああ。と、あった、ここだ。」
いくつも広げた本のうちの一つを、レツたちの所へ持っていく。こういう場では、記憶だけで話すのではなく、資料を確認しながら話し合いを進めるのが暗黙のルールだからだ。
「えーっと、『属性をはじめ、悪魔の分類は、私たち人間が勝手にカテゴライズさせているだけです。それを逆手にとって、断罪者が悪魔の姿や属性などを選択する際に、自分に攻撃を仕掛けてくるであろう魔法使いが戦いづらいものを意図的に選択する場合があるようです。』か。」
イアンが該当文を読み上げる。
「てことは、光属性の土耐性か、その逆で土属性の光耐性を選んでいるってことか。」
「よくわかったわね。」
ガラッと開いた扉の向こうには。
「ミズ・ダリア、とみんな。」
「いらっしゃっていたんですね。」
「ええ、まぁ。これをみんなに渡しておきたくて。」
抱えていた紙の束を机の上にドンと置く。一緒に帰ってきた女子らも、それぞれに抱えていた資料を机に置く。
「ミズ・ダリア、これらは一体。」
女子がそれぞれに持ってきた倍はある紙の束で机を占拠されたレツが、ミズ・ダリアを見上げる。
「大魔界に関する資料よ。信頼性は私が保証するわ。」
気になってレツの机に集まってくる生徒にそれだけ言うと、ミズ・ダリアは踵を返し、ちゃんと準備しておくことね、と忠告して教室を去っていった。
「とにかく読んでみようよ。」
カンナが言ったところにミスター・シドーがやってきてしまうが、資料が気になり過ぎた先生が授業を放棄したため、教科書のカリキュラムそっちのけで大魔界の資料探訪が行われた。
そんな中でのある夜の出来事。滅多に出歩かないガニメデが、自らこちらの世界を訪れていた。とある少女に会うために。
その少女は真っ暗闇の中、小さな街灯の下で一人で待っていた。マントとフードで顔は隠されていた。
「セレナとマリアを処分してしまったからな。早く代わりを用意しないとな。」
そんな独り言は一瞬吹いた風の音にかき消された。
「キミかな。私を呼んだのは。」
空から厚い雲が見下ろしている。少女はフードからちょこっと目を出すと、自分もマントを深くかぶったガニメデのニタリ笑いを確認する。
「私、家、貧乏、困ってる。悪魔、困らない。」
「なるほど。お金の賢い稼ぎ方を知りたいと。」
「正解。」
少女は正体を晒したくないようで、ネックウォーマーのようなもので口元から鼻までを隠しているらしく、なんとなく声がくぐもっている。
「じゃあ、いい稼ぎ方を教えてあげよう。キミにだけ教えるから、ほかの誰にも話してはいけないよ。いいね。」
「承知。」
その後、話が済むと、二人はお互いに風のようにその場から離れた。そこに残っているものはなく、小さな街灯はもとから誰もいませんでしたと言わんばかりに地面を照らし続ける。
その様子を月だけが心配そうに見ていた。
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