第4楽章その3 校長命令
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
確信が欲しいカインよりも先に、斜め後ろからレツの声が飛んでくる。
「校長、1つ伺ってもよろしいですか。」
「何だ。」
「校長は、本当に死を望んでいるのですか。どうしたら僕たちは、不老不死の校長を救うことが出来るのでしょうか。」
「そうだな。」
下を向いて少し考えた後、窓の外を眺めながら答える。
「私は・・、出来るなら早く死にたい。罪をかぶりながら生き長らえるのは、もうごめんだ。」
「罪って・・。」
カミルレが突っ込む。
「長い生の時間の中で、生を望みながら死んでいった人を何千人何万人と見てきた。そんな人たちをおいて私が生き続けるなんて、それはもう罪だろう。」
静かな怒りが沸き上がっているのか、若干早口に吐いた。
「だが、情けない話だ。私自身どうすればよいものか、わかったものではない。だから、当時の特急科を特待科として整備し直し、私がどうしたら死ねるのかを研究してきたというのに。未だに答えは出せていない。」
特待科の長い歴史に、みんなの目が一昨日を見ている。
「800年も生きるもんじゃない。命の時間が有限だからこそ、人は人生に喜びを見つけ、楽しみ、死んでいくのだからな。私にはもう、生きる希望も喜びも無い。今はただ、死が来るのを今か今かと待ちながら、日々罪を重ねているだけだ。」
「そんなこと、ないはずですよ、校長先生。」
重い空気を切り裂くような力強い声が響く。
「校長先生がただ生き長らえているのでしたら、学校の経営なんてやられていないですよね。生徒が学校での学びを通して成長して、巣立っていくのがうれしいから、楽しいから、学校をやられているのですよね。」
優しく変わった柔らかい声が、斜め後ろからふわりフワリと浮かんでくる。アルメリアだ。その声につられ、僕らは笑顔で明日を見据えた。空気が変わったことに気づいた校長も、顔の表情を和らげる。
「っ、校長先生のおかげであたしたちは出会えたんです。」
「そうです。オレたちのこと、信頼して話してくれたんですよね。」
アマリリスとアスカも言葉を足す。
「ボクたちまだまだ1年生ですけど、頑張りますよ。」
「心配しないでください、校長先生♪」
「イアン、今の、心配なる。」
ジャンが気合を入れ直すが、イアンが逆に気合を手放すと、すかさずフクシアが注意する。そのいつもの様子に笑いがこぼれて笑顔が咲く。
「そうだな。確かに。楽しい。それは間違いない。」
やっと笑った校長が、生徒を見渡す。
「校長先生が死ぬことを望んでいるのはよくわかりました。ですが、もう、生きるのがつまらないなんて言わないでください。」
「校長の望みは僕たちが必ず叶えてみせます。」
「だから、もう悲しいことはカミングアウトしないで、楽しかったことを教えてくださいよ。」
カミルレが、レツが、カンナが訴える。
「楽しかったこと・・か。」
窓辺に向かい、空を見上げる。色とりどりの鳥たちが自由気ままに空を舞う。
「久しぶりに・・、クレアに会ったこと、かな。」
懐かしそうに目を細める校長に、カインが確認を入れる。
「僕、クレアというそのコに会いました。」
空気が一瞬で張り詰める。
「ジェイってジュピター校長のことですよね。名乗りはされませんでしたが、Cから始まる名前だ、と言われました。Cって”クレア”の頭文字だったんですね。」
「やはり、チェックされていたのか。そういえば、今回は優良物件だと言っていたな。で、何か言われたのか。」
振り返っていつもの調子で話をする校長にカインが答える。
「ジェイによろしくって。」
みんなの目は真剣そのものだ。
「そうか、よろしく、か。ふ、生きるのも悪くはないな。」
カインと校長の視線が交わる。
「なら、校長命令だ。」
気合を入れ直した生徒一人一人と目を合わせてから、静かに重く言い放った。
「卒業までに、私を死に導きなさい。」
「了解。」
そんな会話をミズ・ダリアは例の女性と廊下で聞いていた。
「やっぱりおもしろいわね、あんたんとこの生徒。」
「猪突猛進、まとめるのが大変よ。」
ふふふと笑った後、会話のトーンが一気に暗くなる。
「最期・・になるのかもね、本当に。」
「ええ。子供たちの能力も春とは桁違いに上がってるし。」
女性はカバンから紙の束を取り出すと、ミズ・ダリアに全部渡す。
「これは。」
「大魔界の調査書よ。半分くらいは、悪魔の出現と大魔界での出来事の関連性についての私の見解。残り半分はマリアの証言。多分、そっちの方が信頼性が高いから、よく読むといいわ。」
「マリア、姉さんのところに行っていたのね。ありがとう、参考にするわ。」
姉さんと呼ばれたその女性は、それじゃあまた、と言い残すと踵を返して去っていく。
「今年は何かが起きる。というか、これで起きない方がおかしい。歴史的な1年を過ごすことになりそうね。」
そこに、話を終えた校長がひょっこり現れる。
「なんだ、聞いていたのか。」
「申し訳ありません。でも、珍しいなと思って。」
すぐに大量の手荷物に気づくと、姉からの情報です、と渡す。パラパラとめくっていくと、対策は1年に任せる、と突き返す。
「今度から、教授陣の研究チームに2年特待科を加える。空いた討伐補佐を1年特待科で埋めるつもりだ。準備を進めてくれ。」
「了解。」
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