第4楽章その2 校長の過去を知る
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
少し前まで敵だったはずの奴を僕たちは今助けている。月は十六夜、雲は墨色。なぜか胸の中を不安がよぎる。
「まだ、毒が・・まわってない・・ところって、わかります・・かに。」
蚊のような細く弱々しい声で問いかけてくる。
「左目の周辺と、あと羽が無事です。」
アルメリアが答える。
「それを、移す・・ことって、出来ない・・かに。」
深紅の瞳が訴える。桔梗色の瞳が瞬きで返す。それを見て、10の顔が互いを見合わせる。
「レツくんとフクシアさん、手伝ってください。」
「ジャンも明かりを。」
「お願いしますなの。」
「了解。」
抑制魔法、スアベ・フエゴ。(柔らかい火)
抑制魔法、ジュビア・フィルトラシオン。(雨のろ過)
攻撃魔法、プランタ・ティヘラス。(植物のハサミ)
移植から30分、毒がまわり切ってしまった彼女は、両翼を手に入れた彼女のその色違いの羽の中で、静かに息を引き取った。僕たちはジュピター校長の許可を経て、校内の特待科庭園の一角にそっと埋めた。
翌日、ジュピター校長に呼ばれてみんなで校長室に行く。隣の自室から校長が出てきたタイミングで、オッドアイになった少女も駆け込んできた。
「よく来たな、虹色のサナギたちよ。また、マリアもよくぞこちらの世界に返り咲いてくれたな。向こうは辛かっただろう。」
「だから帰ってきたなの。よろしく・・なの。大魔界のことなら任せてほしいなの。」
マリアはなんだか嬉しそうにしゃべる。
「そういえば、昨日も思ったのですが、ジュピター校長はこの子とお知り合いなんですか。」
リリーが確認するが、校長は鼻で笑う。知り合い?いや、そんなものではない、とでも言うように。
「そうだな。”育ての親”とでも言おうか。」
「”育ての親”ですか。」
聞くと、セレナとマリアは悪魔の堕とし子で、夜にはよく二人で空を飛んでいたという。もとはと言えば、ある悪魔が人間の女性につくらせた双子で、小さいころからいじめに遭っていたという。それをかばいながら育てたのが、ほかでもないジュピター校長だったのだ。ちなみに、その女性は双子を生んですぐに、その悪魔に無惨にも殺されたらしい。
双子が6つを過ぎたある日、大魔王ガニメデの放った刺客によってこの世界から攫われ、今に至るまでのおよそ10年の月日を大魔界で過ごしたという。
「マリアちゃんとジュピター校長に、そんな繋がりがあったなんて。」
カンナをはじめ、みんなが息をのむ。でも、当の本人のマリアは、そんな過去は気にしないとでも言うように一歩踏み込む。
「大魔王様はある計画をしているの。この中の誰かだって、犠牲になるかもしれないなの。」
その言葉に、子供の成長を喜ぶ親のように、優しく目を細めて校長が応える。
「ありがとう。詳しい話は二人でしよう。」
「は、はいなの。」
そして、後ろのカインたちに目を向け直すと、指示を出す。
「お前たち特待科生徒は、全員教室に戻って自習をしていろ。あとで話を聞きに行く。」
「了解。」
校長室から出て扉を閉めるために振り返ると、マリアが背中の色違いの羽を消すところだった。
「入学式の時に教頭から話があったとは思うが、そのことについて改めて私から話をさせてもらう。」
人間体になったマリアが町へ探検に出るのを見送ったという校長は、教室に入ってくるなり、そう話を切り出す。言われたとおりに自習をしていたカインたちは”入学式”という単語に手が止まったが、ペンを置くのも忘れて話に聞き入る。
次のセリフに驚いたからだ。
「私は死ねない。故い友人のせいでな。」
昨日と打って変わってよく晴れている、のは外の空だけ。
「お前たちならやってくれそうだから、現状を話しておく。」
そうして僕らは、不老不死になる前のジュピター校長の過去を知ることになる。
ジュピター校長はかれこれ800年近く生きているという。が、そうなる前はちょこっと特殊な魔法使いとして、このヘールボップ魔法学園に在籍した生徒だったという。しかも、特待科の前身の”特急科”というところの出身らしい。ちなみに、”特急科”を”特待科”に学科変更したのはジュピター校長だという。もちろん目的は僕らと同じだ。ちょこっと特殊な魔法使いというのは、ジュピター校長が土属性と光属性の2つの属性を持っているということだ。
いつも、親友のクレアという子とペアを組んで行動していたらしい。しかしある日、その親友が大魔王ガニメデの側近イオの末裔であることが分かった。家族が処刑されていく中で精神的に追い詰められてしまったその子は、ついにガニメデと手を組んでしまったという。ジュピター校長の不老不死の呪いは、その悪魔と化した、断罪者になってしまった親友によるものだという。
そこまで聞いて、カインには思い当たる人物が一人。
ーーあのコだ。あのコが、その悪魔と化した親友、Clareだ。
事あるごとに遭遇していた、外套を羽織った小豆色の目の少女。Cから始まる名前を持つ少女。人間ではないはずなのに、何の違和感もなく人間界にいるのでは、という違和感を覚えさせた少女。
カインの中で、段々糸がほどけていく。きっとそうだ。あのコだ。
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