第4楽章その1 セレナとマリア
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
=第4楽章=
世界の狂い
数日後、体調のすっかり戻ったアルメリアも一緒に、降りしきる雨の中、みんなで下校していた。特待科棟の玄関を出て庭園を抜け、庭園の入り口にある特待科生用の門を出ようとしたところで、全員の足が止まる。庭の隅の方にいた二人の少女に目が行ったからだ。真っ白い服を着た片翼の少女を抱いて、真っ黒い服を着た片翼の少女が泣いている。泣きながら、絞り出すような声で「セレナを助けてください」と何度も繰り返す。
「誰、あの子。知ってる人いる?」
アマリリスの問いかけにみんなが首をかしげる中、一人記憶をたどる。それは校長室で聞いたあの会話。
『セレナ、マリア、命令だ。クレアを連れ戻して来い。新たな契約をしたいからな。』
『承知しましただに、大魔王様。』
『承知しましたなの、大魔王様。』
はっきりと思い出されたあの瞬間。あの時の声、そして名前に驚く。泣きながら絞り出すような声で少女が呟く名前は”セレナ”。
気にも留めずに歩き出す仲間から外れて、カインは少女たちに近づくと、2メートルほど距離をおいてしゃがみ、出来るだけ優しい声で話しかける。
「キミ・・、マリアちゃん?」
カインの声に視線だけ寄越す。黒服の少女は頷く。
「そっちの子はセレナちゃんかな。」
「そうなの。ガニメデ様にやられたなの。もう縁を切るって決めたなの。だから、どうか助けてほしいなの。」
”ガニメデ”という単語に反応した9つの足がピタリと止まる。振り返ったカインと互いに顔を見合わせる。他に人はいない。しとしと雨が降るだけだ。
唯一傘を差していなかった我らが司令塔レツがすぐにスイッチを切り替える。
「アル、カイン、頼んだ。アスカは校長、カンナはミズ・ダリアを呼んで。ジャンとリリーで明かりを。その他で環境整える。」
「了解。」
司令塔が指示を出したら下校は二の次。特待科の本領発揮で即行動。庭園内の東屋に二人を移し、応急処置を始める。治療用水は水属性魔法で雨水をろ過して用意する。
抑制魔法、ジュビア・フィルトラシオン。(雨のろ過)
アルメリアとフクシアが、ぐったりとした白服の少女セレナを一生懸命に治療する。カインもレツとイアンの補助を受けながら、黒服の少女マリアを介抱する。
「もう一度聞くけど、キミがマリアちゃんってことは、そっちのコがセレナちゃんかな。」
カインの確認に、少女は首を縦に振って肯定する。
「ずっとガニメデ様のお側にいたの。でも、ガニメデ様のやり方が間違ってると思ったなの。その話をしてるのが見つかって怒られたなの。それでそれで・・。」
「ダメです。カインくん、こちらを手伝ってください。」
セレナの治療に当たっていたアルメリアに呼ばれて、カインがその場を離れる。
「怒られた後、何がどうなってここにいるのか、話せるかい。」
大魔王ガニメデを最大の敵としている魔法使いらの前に、今、大魔王の側近がいる。この大チャンスを逃すまいとレツが詰める。ちなみに、マリアの介抱はイアンが継いでいる。
「ガニメデ様に斬られたなの。あのお方の毒の爪で傷つけられたら、1日以内に毒を抜かないと死んじゃうなの。」
そこまで話すとまた泣き出してしまった。
そこにジュピター校長とミズ・ダリアがやってくる。
「あ、あなたたちは、セレナにマリアじゃない。」
「ついに大魔王が動き出した、ということか。ガニメデめ、何を考えている。」
「あの、ジュピター校長・・。」
腕を組んで考え込んでしまう校長に、恐る恐るレツが声を掛ける。
「フ。しっかり介抱してやれ。やつの話を後で聞きたいからな。死なすなよ。」
「はい。」
気合を入れ直すレツをすり抜け、二人がセレナの方に向かう。まわり過ぎた毒を少し抜き取り、その場で手を合わせる。
「カイン、アルメリア、出来るだけの毒を抜いてあげなさい。」
「すでに半日以上経っているのだろう。そっちの子が助かる可能性は残念ながら低いがな。」
「私たちにもやるべきことがあるので、これで行きますね。最期まで見守ってあげなさい。」
それだけ言うと二人は、カミルレの力で出来た水の膜のテントの囲いを、抜き取った毒の入ったカプセルを持って出て行った。
「セレナ、私、さみしいなの。」
「ごめんね、マリアちゃん、このコはもう、助けてあげられないの。」
「でも、出来るだけのことはするからさ。」
泣きながら一心に毒抜きをするアルメリアと、集中力をより高めるカインは、さらに魔法の力を高める。カンナとリリーがマリアの側についてあげ、男子4人は少し離れたところで立って見守っている。屋根から落ちた雨をテントの膜がはじく音がしばらく続く。
「リリーさん、もっと明かりを。」
「ごめん、了解。」
抑制魔法、スアベ・フエゴ。(柔らかい火)
炎の明るさに反応してか、セレナが片目だけ開けて、マリアを捉え、苦し紛れに声を掛ける。
「ごめんだに、マリア。私が、ガニメデ様なんかに、逆らった、から。」
「ううん。そんなことはないなの。私たちがしたことは、正しいことなの。」
「うん、そうだにね。」
喋っているうちに、毒に侵されていなかったところまでまわり始めてしまう。
「ダメです。毒がまわるの、早過ぎます。」
「あと1時間くらいで全身にまわっちまう。急がねーと。」
懸命な治療が続く。
ページの最後まで読んでいただきありがとうございます。少しでもおもしろいと思ったら、評価や感想を残して頂ければ嬉しいです。これからもマイペースに投稿していきますので、続きが気になった方はブックマークをしていただければと思います。




