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DRAGON+CROSS  作者: 黒姫美奈
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第3楽章その5 アルメリアと事故

誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。

 8月も終わりが見えてきたころ、それは2学期が始まってすぐ。


 アルメリアが倒れた。


 教室で授業を受けているときに突然バタリと床に倒れこんだのだ。すぐに保健室に運び込まれ光属性による治癒魔法で応急処置を受けた後、町の魔学(まがく)病院に搬送された。ちなみに、魔学病院というのは、魔法使いが体調異変時に行く病院のことで、科学では治らないような特殊な症状を、魔法を使った高度な治療によって治すのだ。魔法使いではなくても、原因が魔法や悪魔によるものなら大体こちらに向かう。一応言っておくと、普通はただの病院に行き、薬による科学治療を受ける。


 保健室から戻ってきたミズ・ダリアは、事故の後遺症の症状が出たようだ、と言った。


「アルメリアが巻き込まれた事故の話、聞いたことある人いる?」

 翌日、1限目と2限目の授業間の短い休憩時間。一人分ぽっかり穴の空いた教室でカミルレが問いかける。

「バスの事故だったって聞いたよ。アルがまだ7つの時だったらしいよ。」

「カンナ、なんか聞いたの。」

「うん、でもこれぐらいだよ。7歳の時にバスの事故に巻き込まれたってことと、あ、あと助かったのは自分一人だけだったってことだけ。」


「そうか、あの時の女の子か。」

 ここで口をはさんだのはレツだった。

「あの時?何か心当たりがあるのか。」

「ああ。昔バスの事故があって、運転手も乗客もみんな亡くなるっていう悲惨な結末を迎えたんだ。」

「よく知ってるな。オレはニュースでちらっと見た程度だったから、ぼんやりしか覚えてないけど。」

「バスの事故・・か。まさか、お姉さんを亡くした事故って。」

 アスカが関心を向けると、カインが何かを思い出す。

「そうさ。その事故だよ。僕が下の姉さんに別れを告げた時、奇跡的に救出された少女が一人、魔学病院へ運ばれていった。今思えば、あの子がアルメリアだったんだろうな。」


 レツの話では、バスの運転手のアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故で、壁に衝突した勢いでエンジンが破損、火災の(のち)大爆発という凄惨(せいさん)な事故だったようだ。乗客らの体は現場から(かろ)うじて救助されたものの、生還したのは一人の少女だけで、ほかはその場で死亡が確認されたという。その中にはレツの下の姉も含まれていた。


 彼の目にはその時の光景がまざまざと焼き付いているという。体の焦げた乗客。消火活動にあたる水属性の魔法使い。救護しようとする光属性の魔法使い。慌ただしい魔法警察官たちの輪の外で泣き崩れる乗客の家族。

 レツも消火活動に混ざりながら姉のもとへ向かったようだが、一言言葉を交わすと、もう逃げなければならないほど炎の勢いが強かったという。


 その事故に関する統計資料があるというので、3限目と4限目の授業の間にミズ・ダリアに持ってきてもらい、みんなで読み込む。それによると、運転手と乗客合わせて21人が死亡、二人が重傷で植物状態になった上、被害者はいないものの延焼により2軒の住宅も全焼していたようだ。

「そんな事故に巻き込まれて、よく生還したよね、アルは。」

「どうして助かったのか、わかっているんですか。」

 感心するカミルレの横で、カンナがミズ・ダリアに質問を投げかける。

「それが、はっきりはわかっていないのよ。」

 ミズ・ダリアは腕を組んで考え込む。


「その時の担当医による記録に書いてあったのは、病院に到着した時には既に外傷は消えていて、心臓に関わる手術だけを施した、と。」

「ああ、ここですね。『当院到着時の初診の時点で外傷は見受けられず。ただし、心不全に関する症状が確認されたため、緊急手術。火災現場からの患者で外傷なしは前代未聞である。』」

「本当だ。しかも、前代未聞の例とか。やばいな。」

 カインが読み上げた資料の内容に、イアンが驚く。そこに。


 ガラッ


 突然扉の開く音がして、みんなの視線が一斉に扉に向く。その向こうにいたのは、車いすに乗ったアルメリアだった。何か声を掛けたかったのに、悲惨な事故について知った直後に動ける者はおらず、みんな口をパクパクさせる。その間にもアルメリアはその車いすを見知らぬ女性に押してもらい席に着く。

「おはようございます。皆さん、お騒がせしました。私はもう大丈夫です。」

 こういう時の”大丈夫”はあまり信用しない方がいいのはわかっていたが。僕らは顔を見合わせると緊張を解き、仕方なく次の授業の準備を始めた。


 ミズ・ダリアは女性とアイコンタクトをとると、二人して廊下に出て行ってしまった。そこに、入れ違いでミセス・バーゼリアが入ってくる。

「カンナ、黒板消し。」

 文字がまだびっしり書かれた黒板に気づいたフクシアに注意された日直が、前に出るついでに、大丈夫?と一言声を掛けると、アルメリアは、ご心配をおかけしました、と笑顔で返す。

 本人がそれ以上言わないので、この話はそこまでということで、レツが資料を自分のロッカーにしまってしまった。


 授業は、1日は、何事もなかったかのように淡々と過ぎてゆく。

ページの最後まで読んでいただきありがとうございます。少しでもおもしろいと思ったら、評価や感想を残して頂ければ嬉しいです。これからもマイペースに投稿していきますので、続きが気になった方はブックマークをしていただければと思います。

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