side story カミルレ編その1 依頼の帰り道
誤字脱字には気を付けていますが、表現が拙い部分は、そういうものだと思って読んでいただければと思います。
=side story=
流れ星の叶わぬ夢~カミルレ編~
時は少し戻って夏休みの数日前。
外課題で選んだ悪魔討伐の依頼の帰り道、そんなに遠くなかったこともあり珍しく徒歩で帰る。
「なんだか楽勝だったね、今回の依頼は。」
自由依頼で選んだのは、村に悪魔が現れたので人にとり憑いてしまう前に退治して欲しいというもの。
「そうだね。それにしてもルーちゃんのあのなりきり、凄かったね。」
「確かに。今回の功労者はカミルレだな。」
カンナの言葉にアスカが反応すると、アマリリスが真似をし出した。
「『私はパパを大好きでいたいの。だからお願い、こっちへ戻ってきてよ。』いやあ、痺れたなあ。」
「しかも、そのセリフで本当に悪魔を手放させるなんて、素人には出来ないですよ。」
アルメリアも興奮している。
「”断罪人”を作らずに依頼を完遂するのは難しいだろうって言われてたもんね。」
「そういえばそんなこと言ってたな、ミズ・ダリア。」
あまりにもスムーズに行き過ぎて、司令塔ですら忘れていたことを、イアンが思い出す。
ちなみに、魔法使いが悪魔になると”断罪者”、魔法を持たない人が悪魔になると”断罪人”と呼ばれて、言い分けがなされている。
街はずれの広い畑地帯の間のまっすぐ伸びた農道をみんなで固まって歩く。土属性の魔法がかかった土が、光属性の魔法による街灯に照らされてキラキラしている。夜になる手前の薄暗い時間に、ぼんやりと自販機だけが光る道。
未舗道のまっすぐな道を歩きながら、みんなが口々にカミルレを称える中、当の本人が近くのベンチに座り込んでしまった。
「カミルレ、どうしたの。ボクたち変なこと言っちゃったかな。」
「空?月?出たけど。疲れ?休む?」
ジャンとフクシアが心配する。清々しい表情で空を見ていたカミルレが、ごめんごめんと二人に謝る。
「そういうのじゃなくて。このうれしさ、懐かしいなと思って。」
「懐かしい、ですか。良ければ聞かせてくれませんか。」
「確かに。聞いてみたいかも。」
アルメリアとカンナが両側に座ってしまったので、帰るのは後回しにして、カミルレの思い出話を聞くことにする。
「私ね、小さいときに、少しだけ劇団に入っていた時期があったの。」
カミルレはゆっくりと順を追って語り出した。
魔法使いには、1歳半くらいですでに力を使えてた人と、もともと持ってはいたけどうまく使えなくて後で覚醒させた人がいるでしょ。私には同じく魔法使いの兄がいるんだけど、兄は後者で、私は前者だったの。
私が生まれたころ、マクリス・キソスで”魔法使い”というと圧倒的に後者が多くて、魔法の覚醒は早くて10歳と言われていたの。私の生まれた町ティローでもそれは同じで、子供学校の高学年で覚醒した子が、卒業後に魔法学校に行くのが通例だった。
そんな中で、私は2歳ころにはすでに力を使っていたらしい。私は覚えてないけど。よく、シャワーの水量を勝手に増やしたり、雨の降る範囲を勝手に変えたりしてたみたい。家族の前でだけだけどね。
5歳で子供学校に入学した後も、学校で魔法は使っちゃダメって親に厳しく言われてて、とっても気を付けてたのは覚えてる。入学した当初は何でなのかわからなかったけど、学年が上がったころには気づいたよ。だって、私みたいに魔法を使える子が周りにいなかったから。
とっても気を付けてはいたんだけど、事件は起きた。子供学校3年生の時だった。
その日、私と仲の良かった子がいじめられてたの。女の子一人に対して、男の子5人で寄ってたかってさ。私は思わず止めに入ったの。
「やめてあげてよ。いやがっているじゃない。」
「なんだよ。こいつがわるいんだよ。ちょっと掃除サボってただけなのに、注意しやがってさ。」
「サボってたそっちがわるいんじゃない。そんなことでいじめないでよ。」
「そいつなんかの味方してんじゃねーよ。」
「いいじゃん、ちょっとくらい。」
「自分たちがわるいくせに。」
「なんだとー。」
男子の一人が拳を振るおうとする。だからだと思う。気が付いたら目の前に水の壁ができてた。
あ、使っちゃった。
我に返った時には遅かった。
見ていた男子は逃げるわ、助けたはずの友達がびっくりして泣き出すわ、先生が来るわで大騒ぎ。しかも私が使った魔法でその子は手をケガしてたことがわかって。
いじめていた男子たちは先生に怒られて3日間の宿題増加が決まった。でも問題はそっちじゃない。私も、魔法を使ったことで先生に怒られたの。しかも、7日間の自宅謹慎まで決まった。
なんで私が。悪いのはあいつらなのに。
だってそうでしょう。善意で使った魔法なのにさ。ちょっとケガさせたくらいで、いじめてた男子よりも処分が重いなんてね。今でも意味がわからないよ。
それで私はすっかり自信を無くした。たくさんいた友達も、みんな私から離れていった。先生だって私にとっては敵に見えた。私が勝手に魔法を発動させないように見張られてたから。学校に味方なんていなくなった。
私は、一人ぼっちになった。
「同じ魔法の呪文でも、その扱い方によって、攻撃魔法にも防衛魔法にもなりうるからな。」
「理解のない先生にあたるとつらいですよね。」
「魔法、難しい。」
レツが口をはさむと、アルメリアやフクシアもうなずく。実際、本来は攻撃魔法の呪文でも防衛魔法として唱えて展開するパターンも少なくない。
「で、そんなお前が、魔法学校のしかも特待科に入るほどにまでなるとは。一体どんな出来事が。」
イアンが先を急かす。
「その年の12月、あれは初雪の日だった。」
横の自販機が夜の節約モードで消灯してしまう中、みんなでカミルレの話の続きを聞く。
雪の降る寒い日を想像しながらーー。
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