第0楽章+第1楽章その1 魔法学校での出会い
学生のころから温めていた作品に加筆修正しながら書いています。誤字脱字には気を付けていますが、表現が少し幼い部分はそういうものだと思って温かい目で見て頂ければ嬉しいです。
=第0楽章=
魔法を使う
魔法の基本は精神統一だ、とミズ・ダリアが言っていた。
特殊魔法、クエルボ・シタシオン。(カラス召喚)
カラスが大量に出てきた。クワガタを出そうとしたのに。教科書を見ると一文字だけ違った。
「シエルボ・・・だったのか。」
目の前でカラスが鳴いている。窓の外はオレンジ色の空。カラスが鳴いたら、帰ろかな。
「はぁ・・・。こんなんでなんとかなるのかな。」
開けっ広げた窓からカラスが鳴きながら出ていった。
教室には僕一人。
そんな春の放課後。
=第1楽章=
出会う
入学式が終わり、教室にぞろぞろと戻ってくる。ここは特待科教室。全員で十名。
机にそれぞれ着席すると、教頭先生が入ってきて、何の前触れもなく言い放った。
「皆さん、校長先生を助けてあげてください。」
みんな目がテンになる中、話は続く。
「ああ申し遅れました。僕は教頭のエディンバラです。よろしく。そして皆さん、このヘールボップ魔法学園への入学おめでとうございます。」
その言葉が先だろ、と心でツッコむ。
眼鏡の奥の目が冷たくみえる。
「突然ですが皆さんに話しておかなければならないことがあります。毎年のことですが、この特待科の生徒だけにお願いしていることです。これから話す内容は、普通科生には内緒にしてください。」
僕らは身震いした。
入学式の校長挨拶でのあの不敵の笑みを見せられていたら、何か裏があると考えるのは容易ではあったのだが。
教頭先生は何の躊躇もなく、ただ怖怖と語り出す。
「我がヘールボップ魔法学園の学校長、ジュピター・ロメオ氏。彼女にはある呪いがかけられています。」
冴えない眼鏡が怪しく光る。
「その呪いとは、不死身になり、成長が止まってしまう、いわゆる不老不死です。その呪いが解ければジュピター校長は死に至りますが、それと同時に、呪いをかけた悪魔を倒すことができます。」
僕は入試を思い出した。みんなきっと気付いたと思う。
特待科の入試小論文の設問。忘れられないあの一文。
”もしあなたが不老不死の身になったら、何をして過ごしますか。”
式の前に少し話題になり、女子はオシャレし続ける、男子は芸能人になってテレビに出る、などの声が上がった。もしかすると、自身の慰めのためにそんなことを書かせていたのかもしれないと、今なら想像がつく。まあ、わからないが。
「今はジュピター校長の身に特に危険はありませんが、もし何か起こってしまったら、皆さん特待科生だけが頼りです。まあ、そうならないようにはしますが、そうなってしまったときのために鍛えておいてください。」
みんな静かだ。頭の中がぐちゃぐちゃになっている。わけがわからない。
そのうち教頭先生は以上です、とそそくさと退出してしまい、担任のミズ・ダリアが入ってきた。彼女は、要は強くなれってことよ、と無責任に言い放つと、挨拶をしましょう、と何事もなかったかのように時間を振り出しに戻した。
ちなみに、特待科1年生担任ミズ・ダリアは、土属性教師の中ではトップの実力を持っているかなり優秀な人らしい。ほかにも、この学園の教師陣は皆、ジュピター校長に認められ、教師の称号を与えられた卒業生なのだという。
あれから1ヶ月。クラスメイトと仲良くなるには僕らには長過ぎる時間が過ぎた。
私もあんな先生になりた~い、とぼやくのは、左隣の席のカミルレ・ベオグラーディオ。通称ルー。彼女は水属性の魔法使いで、技のスピードに定評がある。
私もなりたいけど・・・なれるかな、と不安そうに後ろを向くのはカンナ・カラカサス。彼女の属性である風は広範囲に仕掛けることができるが威力が弱く、目標に正確に技を当てるのは難しいと言われる中、ここひと月の彼女の命中率は安定の100%。これには先生方も驚いているそうだ。
そんでキミは何になりたいの、と後ろから声がかかる。彼はアスカ・マナグア。同じく風属性で、妹が二人いる長男らしい。どうりでこの中で1番背が高いわけだ。あ、別に関係ないか。
まだわかんねーけど人の役に立つことをしたいかな、と曖昧に返すのは僕、カイン・ヴォストーク。光属性だ。しかも、両親ともに光属性の魔法使いという純光属性だ。
それはみんな同じでしょ、と笑うのは、右隣のアマリリス・ポートレス。通称リリー。彼女も火属性の実力者だが、彼の兄も火属性の実力者で3年特待科の首席なのだという。
そこに、彼女の後ろの席のアルメリア・ウィーナが入ってくる。でもいいじゃないですか、私もなりたいです、人の役に立つ魔法使い。にこにこ言う彼女は小さいときに交通事故に遭い、一度記憶を失ったが、強い光属性を持っていたことで奇跡的に記憶を取り戻し、事故の傷もほとんどわからないほどにきれいに治したのだという。
ボクはねー、魔法を使って悪い奴を成敗してやるんだ、と話に割り込んできたのは、僕の前に座るジャン・バンダル。火属性の彼は、普通科にいる双子の姉二人に隠し事が多い。無論、校長のこともだ。
カミルレ、黒板消し、ミスター・シドー、きちゃう。後ろにいたフクシア・ビクトリーヌに注意され、カミルレがガタガタと席を立つ。彼女は土属性で、僕ら10人の中で一番魔法陣呪文を知っている。
悪魔学か、複雑で覚えづらいんだよな、とぼやくのはレツ・ネーピッド。水属性であり、何を隠そう入試1位のエリートだ。しかも、魔法使いとして特別な役割を担っているらしい。僕らも説明を受けたわけではないから真偽も詳細もわからないが。
お前が言うなよ、と笑っているのは、その前の席のイアン・ファドーツァン。土属性で、魔法陣の巨大展開や多数同時展開が得意だ。普段はふんわり系のへらへらしたチャラそうな人物だが、ON・OFFがはっきりしているだけで、スイッチが入ると目が鋭くなり人が変わったように動きのキレがよくなる。
「さぁ席に着け。授業を始めるぞ。」
先生が教室に入ってきて声をかける。
今日がまた始まる。
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