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雑記  作者: 入江晶
7/15

「イリアス」第16歌におけるパトロクロスの行動について(2/4)

3.「イリアス」におけるパトロクロスの行動への言及

 以下に、パトロクロスがアキレウスの武具を身につけて出撃したこと、およびその周辺の状況、事情に関連する言及を挙げる(網羅しているわけではなく、一定程度重要と思われる部分のみ)。なお、引用箇所には参照のため「歌の番号-その歌内での通し番号」の記号を付す。


・11-1:11歌762-803 ネストルの言葉(パトロクロスにアキレウスに出陣を説得するよう言った後、もしくはパトロクロスがアキレウスの武具をまとって出撃するならば、という考えを述べて)

「トロイエ勢はそなたをアキレウスと見誤って戦いをやめ、~」


・16-1:16歌20-45 パトロクロスの言葉

「あなた(筆者注:アキレウスを指す)の物の具をこの肩につけることを許していただきたい、トロイエ勢がわたしをあなたと見誤って、戦うことをやめぬとも限らぬし、疲れ切ったアカイア(筆者注:ギリシアとほぼ同義)の勇猛の子らも一息つけるかも知れぬ、~」


・16-2:16歌101-111 アキレウスの言葉

「さあ、そなた(筆者注:パトロクロス。16-4も同様)はわたしの世に聞こえた武具を肩につけ、戦い好きのミュルミドネス軍(筆者注:アキレウス配下の軍勢)を率いて戦場に向かってくれ」


・16-3:16歌101-111 アキレウスの言葉(16-2に一文続けて、その次)

「トロイエ方は大胆不敵にも全市を挙げて出撃しているが、それも輝くわたしの兜の額を間近に見ておらぬからだ」


・16-4:16歌101-111 アキレウスの言葉(16-3の少し後)

「つまりわたしはそなたに、全ダナオイ勢(筆者注:アカイアと同じく、ギリシア勢とほぼ同義)が見て実に天晴れな手柄よと称えるような名誉を挙げて欲しいのだ、さすれば彼等もあの美しい娘(筆者注:アガメムノンがアキレウスから奪った捕虜の女を指すと思われる)をわたしに返し、さらに見事な品々もくれるであろうからな」


・16-5:16歌101-111 アキレウスの言葉(16-4の少し後、敵を撃退したら深追いせずに戻れとパトロクロスに忠告して)

「さもなくば私の名誉を傷つけることになる」


・16-6:16歌193-209 語り手の言葉

「アキレウスは全軍を然るべく五隊に分け、それぞれの隊長の下に態勢を整えさせると、厳しい訓示を与えていうには、~」(続けて、アキレウスのミュルミドネス軍への訓示)


・16-7:16歌210-248 アキレウスの言葉(パトロクロスの活躍を神に祈願して)

「さすればヘクトルめにも、われらが従士(パトロクロス)が、単身にても戦う術を心得ているか、それともわたくしが自ら戦場に臨む時にのみ、彼の腕が無敵の強さで荒れ狂うのか、それが判りましょう」


・16-8:16歌275-283 語り手の言葉

「トロイエ勢はメノイティオスの豪勇の子(筆者注:パトロクロスのこと)が従卒と共に、身につけた武器をきらめかせて現れた姿を見ると、船陣の傍らで駿足のペレウスの子(筆者注:アキレウス)が、怒りを捨て和解を選んだものと思いなして、~」


・16-9:16歌419-425 サルペドン(トロイエ方の武将)の言葉

「あの男(筆者注:パトロクロスを指す)にはわたしが立ち向かってゆく、あそこで勝ち誇り、トロイエ勢に多大な損害を加えたのは何者かそれを知りたい、~」


・16-10:16歌527-547 グラウコス(トロイエ方の武将)の言葉

「その彼(筆者注:サルペドン)をアレス(筆者注:戦いの神)は非情にも、パトロクロスの槍先に斃れさせてしまわれた」


・16-11:16歌548-561 パトロクロスの言葉

(アイアス(ギリシア方の武将)に話しかける。内容そのものは本稿においては重要でないため記述しないが、自分がパトロクロスであることを特に偽らずに話しているように思える。少なくとも、アキレウスの振りなどはしていない)


・16-12:16歌710-725 人間に化けた神アポロンの、ヘクトルに向けた言葉

「さあ強い蹄の馬をパトロクロスに向けよ、~」


・16-13:16歌818-842 ヘクトルの言葉

「パトロクロスよ、おぬしはきっと、われらの城を陥すつもりでいたのであろう、~」


・16-14:16歌843-854 パトロクロス最期の言葉

「既におぬし(筆者注:ヘクトル)の横には、死と抗いがたい運命が立っている、(中略)アキレウスの手にかかって果てる運命がな」


・17-1:17歌1-17 エウポルボス(トロイエ方の武将、16歌終盤でパトロクロスに重傷を負わせた人物)の言葉

「わたしより先にパトロクロスに槍をつけたのは、(中略)誰一人おらぬのだ」


・17-2:17歌140-168 グラウコス(トロイエ方の武将)の言葉

「なにせ討たれた従士(筆者注:パトロクロス)の仕えていた男は、(中略)抜群の勇士であり、~」


・17-3:17歌183-187 ヘクトルの言葉

「わたしが豪勇パトロクロスを倒して剥ぎ取った、勇士アキレウスの見事な武具を身につけるまでの間にな」

※本稿の趣旨から外れるが、ヘクトルはパトロクロスにとどめを刺しただけであり、エウポルボスと神アポロンにすでに重傷を負わされていたことは補足しておく。


・18-1:18歌196-10 神イリスの言葉(アキレウスに対して)

「トロイエ勢にそなたの姿を見せてやるがよい。さすればトロイエ勢は恐れをなして戦いをやめ、~」


・18-2:18歌243-283 語り手の言葉

「永らく苦難の戦いを離れていたアキレウスが姿を現したために、誰もが(筆者注:トロイア軍のこと)恐怖にとりつかれていたのであった」

※ここではアキレウス本人がトロイア軍の前に姿を見せている。

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