「No Russian」について
・序
「No Russian」は、おそらくCall of Dutyシリーズの歴史上最も物議を醸した場面である。
Call of Duty: Modern warfare 2(2009)のシナリオキャンペーン序盤における一ステージで、そのステージ名であるとともに、冒頭の台詞でもある。
・ストーリーの概要
アメリカ軍レンジャー部隊に所属するジョセフ・アレンは、様々な軍隊からメンバーの集まる特別チーム「タスクフォース141」に選抜される。そして与えられた任務は、ロシアの過激派組織「超国家主義派」にメンバーとなって潜入することだった。
偽名を使い超国家主義派の一員となったアレンは、リーダーのマカロフとともに、ある作戦に参加する。それは、ロシアの空港で無差別に銃撃するというテロであった。
マカロフの指揮の下、アレンはテロの実行部隊の一員となって民間人が殺害されていく中を進み、やがて通報を受けたロシア警察が空港に到着し銃撃戦となる。
逃走した超国家主義派のメンバーたちは、用意してあった救急車に偽装した車両に乗り込むが、そこでマカロフはアレンを射殺して置き去りにしていった。そしてマカロフたちの脱出後、アレンの遺体が発見される。アレンの正体を見破っていたマカロフは、こうして「ロシアで起こった民間人に対するテロ実行犯に、アメリカ軍の一員がいた」という状況を作り出し、アメリカを憎悪する世論をロシアに巻き起こすことに成功するのだった。
・補足
冒頭でマカロフが「Remember, No Russian.(覚えておけ、ロシア語は無しだ)」とメンバーに向けて告げている。ストーリーの結末の通り、テロの実行犯がロシア人ではないと見せかけるためであろう。ただし、第三者が聞いていたり録音されていたりということがないと思われる場面では、若干のロシア語が発されている。
・反響
「プレイヤー自身が民間人に対する無差別テロの実行犯となる」という場面設定、実際に目の前でそのテロが行われて阻止することもできない、といった点から、Call of Dutyで見られる、いわゆる「ショッキングな展開」の代表的な存在。この描写の前では、ラストで「プレイヤー自身が射殺される」ということのインパクトすら薄れてしまう。
なお実際に民間人を攻撃できるかは国によって異なり、アメリカ版(オリジナル)では可能。日本版では銃撃を当てた瞬間にゲームオーバーとなる。また、そもそもこのエピソード自体をスキップすることが可能である。これについてはキャンペーンリマスター版でも同じ(アメリカ版(英語版?)でも銃撃するとゲームオーバーとなるように変更されたようだが、未確認)。
・蛇足
日本版では、ステージ名は「幕間」となっている。スキップできるために番外的な名前にしたとも思えるが、台詞の翻訳の問題(後述)を考えると、単に適当な訳語が見つけられなかっただけなのかもしれない。
マカロフの台詞は「殺せ、ロシア人だ」となっており、本作における翻訳の問題の代表格である。「言われた通りに殺すとゲームオーバーになる」というのはまだしも、この時点で結末がわずかながら予告されているという演出が死んでいる。
キャンペーンリマスター版ではステージ名は英語表記のまま、マカロフの台詞は「忘れるな、ロシア語は禁止だ」となっている。