第八話 魔力はまだダダ漏れでした。
放課後ルナティアは担任のハルニベルに呼び出された。
職員室は2階への階段を登ると廊下に出る。
その廊下を右に進んでいくと奥に扉があり、開けるとそこが職員室になっている。
「ルナティア。
来たか。
ちょっと良いか。」
職員室には沢山の机が並んでいる。
先生の数もかなりいるのだろう。
今職員室にはハルニベル先生と数人の先生が座って仕事をしているのが見える。
「はい。」
入学式初日に先生に呼び出されるなんて、何かしたかしらとルナティアは不安に思っていた。
「とても気になっていたのだが、お前の魔力は相当な物なのだろうな。
魔力が身体からダダ漏れだからな。
魔力制御はしているのか?」
「はい。
お父様に言われて5歳の頃からしていますが、そんなにダダ漏れなのですか?」
「そうか。
だが、まだ制御が甘いな。
私は魔力を視覚化できるスキル『龍眼』を使えるのでな。
それだけ魔力が身体から出ていると、今後ルナティア自身に良くないことも引き込む可能性がある。
具体的には相当の魔力持ちである事が一眼でわかるのは果敢な奴らから狙われやすくなる。
そこでだ、真の魔力制御を教える。
やってみろ。」
「はい。
ありがとうございます。」
学校に来て初日に早速先生から教えを頂くことになるとは思ってもいないからルナティアは嬉しかった。
表情から笑顔が溢れる。
「魔力制御は自分の魔力を把握すること等から始まる。
目を閉じて自分の魔力を感じろ。
感じたらその魔力をぎゅっと圧縮して好きな大きさに具現化する。
大きさでも形でも良い。
それが出来たら自分の中に入れ込んで終わりだ。
やってみろ。」
「はい。」
ルナティアは目を閉じると自分の魔力を感じ取るため意識を集中させる。
心の中の真っ暗な世界で客観的に自分を見ると膨大な魔力を感じ取った。
実際に立っているルナティア自身には何も変化はないが、身体が金色に薄らと光り始めているだけだ。
両手を目の前に少し出すと手を広げて心の中に見えている魔力を感じてぎゅっと圧縮。
光の大きな球体にした。
その光の球体を自分の中にゆっくりと入れ込んでいく。
「なるほど。
飲み込みも凄く早いのだな。
上出来だ。
もう魔力はダダ漏れでは無い。
だが、魔力制御は常に意識する必要がある。
そういう意味では鍛錬が必要だ。
特に魔力が強い者は、魔力制御がうまく出来ていないと周りにも影響を与えかねない。
可能であれば制御系のスキル習得も視野に入れた方がいい。」
「ふぅ〜、上手く出来て良かった。
先生が急に呼び出すからビビりましたよ。
何か悪事でもしたのかなぁって。」
上手くやれた事をホッとしたが、ダダ漏れだったと言われて少し恥ずかしい気持ちもあった。
その照れ隠しに悪態が出てしまう。
「ハハハ、身に覚えでもあるのか?」
笑いながらハルニベル先生は意地悪い顔でルナティアを見ている。
「え?
そ、そんな訳ありませんよ!
先生は意地悪です。
ちゃんと目的を教えてくれれば良かったのに。」
身に覚えがあるわけでは無いが、先生の表情が確実にルナティアを揶揄う素振りに恥ずかしいあまり、両足を後ろに回して不機嫌そうに顔を横に背けて見せた。
「そうか。
それはすまなかったな。
今度から気をつけよう。
魔力制御は精神を鍛錬すればスキルが発動する事もある。
そうなれば制御も楽になる筈だ。」
優しい顔つきになったハルニベル先生は机の棚にあるファイルから一枚の紙を抜き取るとルナティアに渡した。
その紙には制御系のスキルの説明や習得に必要な方法などが書かれていた。
ルナティアはその内容をじっくりと眺めると。
「先生って。
優しいんですね。
見た目がちょっと怖いから損してますよ。」
優しく微笑んでみせた。
「ハハハ。
見た目で損をするのは慣れている。
ルナティア。
今日は早く帰ってご両親にしっかりと今日の事を話すといい。」
「はい。
それでは先生。
失礼致します。」
頭を深く下げて一例をすると長い髪がフワッと揺らいだ。
そして、職員室を出ると教室に戻った。
「ルナ。
待ってたよ。
帰ろう。」
「ミラ。
お待たせ。」
教室には一人ミラルバが本を読んで待っていてくれた。
他の生徒達は全員帰って誰も居なくなっていた。
「先生なんだって?」
「ああ、私の魔力ダダ漏れだからって
魔力制御のやり方と制御魔法の一覧をくれた。」
「へぇ〜。
魔力ダダ漏れだったの?」
「うん。
お父様に教わっては居たけど、5歳からやり方変えてなかったから、対応し切れて無かったみたいね。」
机の鞄を手に取ると荷物を纏めてしまうと教室を出た。
「そう言えばルナの雰囲気変わったかも!
エロくなったかも。」
「え?
嘘!
エロく?」
廊下を歩きながらミラルバはルナティアの身体を舐めるように見ている。
「嘘よ!」
「もう!
ミラったら!」
「でも、ちょっと落ち着いた雰囲気にはなったかも。」
落ち着いた雰囲気とはどういう感じなのかルナティアには分からなかったが、身体的な変化でも起きたのかと自分の身体を客観的に眺めてみたが、怪しい動きになってしまっている。
帰り道ルナティアとミラルバは仲良く明日からの学校の話しやクラスメイトの男子の話やしながら帰路についた。
「お嬢様。
学校は如何でしたか?」
「ディアナ。
私ね。
一組の首席だって。
似合わないよね?」
学校の駐車場でディアナが待っていた。
ミラルバも運転手が待っていてお互い車に乗り込むと走り出した。
「どうしたんですか?
不安なのですか?」
「………。
それは不安よ。
だって、私はそんなに優秀じゃ無いし。」
ディアナはルナティアの不安もよく分かっている。
普段は天真爛漫で明るく振る舞っているが、両親や自分に期待している人たちの前では話せない事も思っている。
「お嬢様は優秀ですよ。
そうだ!
甘い物でも食べて帰りますか?」
「うん。
食べる!」
「最近流行りのスイーツ調べて起きましたよ。
私も気になってる店があって。
行きましょう。」
車は店の駐車場に停めて、早速店内に入った。
お客さんは平日なのでそれ程多く無いが、沢山の人の会話が響いている。
店員さんにテーブルまで案内されると、ディアナの気になっているスイーツを2人とも注文した。
待っている間、今日学校で会った事や先生に言われた事などディアナに話して聞かせた。
「実はお嬢様にお話ししたい事があるんですけど。」
「何?」
「実は………。」
「何よ……。」
「実は、私もお嬢様の魔力がダダ漏れだった事を気付いてましたよ。」
店員さんがテーブルにスイーツと飲み物を運んできた。
「え?
そうなの?」
「ええ。
私は『魔眼』のスキルがありますから。
お嬢様と初めてお会いした時に、えらく魔力がダダ漏れな人だと思いました。」
ディアナはスイーツを食べながら淡々と語る。
「そ、そうなんだ。
これでも魔力制御してたのよ。
それなら教えてくれれば良かったのに。」
ディアナが食べたいと言っていたスイーツはチーズケーキのようなスイーツでとても美味しい。
「まあ、魔力はダダ漏れでしたが、それは別に問題無いと思ったので放置してました。」
あっという間にスイーツは食べ尽くされた。
と思ったら、ディアナは次のスイーツを注文していた。
「もう、そんなにダダ漏れダダ漏れって言わないでよ。
誰かに聞かれたら、恥ずかしいじゃない。」
そう言いながらもスイーツを食べ終えるとディアナ同様に次のスイーツを注文した。
「確かにそこだけ聞くと、なんだろうってなりますね。」
注文して暫くすると次のスイーツがやってきた。
ルナティアは食べるのも早いが注文から持ってくるまでが、とても早いと感心するのだった。
「それにしてもディアナ。
よく食べるわね。」
「ええ。
甘い物に目が無くて。」
「ねぇ、少し励まそうとか思わないわけ?」
「どうぞ。
聞きますよ。
旦那様にも奥様にも言いづらいでしょ。
私はスイーツに夢中ですし。
どんな不平不満でも覚えている自信ありませんし。」
そこから2時間ルナティアの愚痴とも不安とも取れる話しをディアナに語り明かした。
ルナティアにとっては年上のディアナは頼りになる存在なのだ。
こうして登校初日は終わりを告げた。