第6話
二人の舌鋒が火を噴きます(非常に怖い)
「「何言ってる(の)!」」
ハモって返された。いや、怒鳴られた。
「いつからそんな水臭いこと考えてたんだ。行くんならみんな一緒だ」
「それとも、私たちが信用できないの?」
「そうじゃない!そうじゃなくて、もし一緒だとわかったら、どうなるかわからないから」
不思議そうな納得いかない顔の二人に申し訳なくて唇をかむ。だが、ここではっきり言わなくてはならない。
「アタシね。国では貴族の人間だったんだ。婚約破棄をされそうになって・・・ううん、何度もされて。それで、もういいやって逃げ出したんだ。何もかも放り出して逃げたの。だから、今度見つかったらきっと、どこかに閉じこめられて、逃げないように監視されると、思う。そんなことに、二人を巻き込みたく、ない、から・・・」
「監視されるって、そんなに高位の貴族だったのか」
「婚約破棄を何度もされた?どういう事、リア?」
聞かれたことに一瞬頭が真っ白になる。さすがはミルフィル、賢さは健在だ。
「あ、そ、その、今からすっごくおかしなこと言うけど最後まで聞いてくれる?」
「大丈夫だ」
「いいわ」
「ア、アタシ、実は婚約破棄を4回されて、4回ともそのあとで、死んでるの。だから5回目で宣言される前に逃げ出したんだ」
「・・・4回。婚約破棄?」
「しかもそのあとで死んでる・・・?」
「信じてもらえないとは思う。でも、アタシはしっかり覚えてる」
そこまで言って顔を上げる。ふたりとも理解が追い付かないようだ。当たり前だと思う。とんでもないことを言っているのはアタシの方なのだから。
「旧文明の遺跡で女神さまに教えてもらった。アタシが婚約破棄をされる前に動いたから、あの国のどこかがおかしくなったんだって。それを正すにはアタシがもう一度行かなきゃいけないらしい」
「女神さまが、そういったのか?」
「うん。あまりに歪んだために、女神さまの力も届かなくて。アタシが戻れば多分きっかけができると・・・」
「「許せない(わ)っ!!」」
またしてもハモって叫ばれた。
「どうしてそんなところに戻らなきゃならないんだ!しかも本人が!」
「また死ね、って言ってるようなもんじゃない、どういうことよ!!」
「あ?は?え?」
想定外の言葉をかけられて思考が停止した。ええと、受け入れられた・・・?
真っ赤な髪を振り立ててシエラは今にも火を噴きそうだ。逆にミルフィルは血の気が引いて顔が青白い。そして二人とも手入れした武器に手をかけている。もし目の前に女神がいたら、問答無用に殴り掛かっていたかもしれない。そんな気迫があふれていた。
獰猛な肉食獣が見せるような殺気を乗せてシエラが笑う。
「そうか、ならばなおのこと一緒に行こうな、リア」
「その婚約破棄の現場を一目見たいわね」
含み笑いをしつつも、ミルフィルの瞳は笑っていない。要するに、二人のやる気に火がついてしまったのだ。
「あ、あの、シエラ、と、ミルフィル?本当に行くの?」
「ああ?何言ってるんだ、リア。当たり前だろう」
「ええ、当然。ひとりで楽しむなんてずるいわよ」
お馬鹿なやつがいるなら即行で退治する。そんな副音声が間違いなく流れた。
予定にはないですが、タミールが二人に会ったら・・・地獄を見る、んでしょうね・・・(ゴク)