第2話
いよいよ物語が動き、ます・・・?
あの婚約破棄の現場から抜け出したオレリア・ファルケニート侯爵令嬢・・・今は冒険者リアとして隣りのシェルキル皇国で活動していた。コルスゲン王国時代にしっかり鍛えたおかげで、最初こそ絡まれはしたものの、実力で排除していくうちに誰もが一目置くようになっていた。
相変わらずソロではあったが、今は臨時のパーティを組んでいた。
赤髪で長身のシエラは剣士。自身の背丈と同じ両刃の大剣を片手で振り回す。かと思うと、腰に仕込んだ鞭でもってほかの者のフォローもやってのける、器用な一面も持っていた。
銀髪紫眼のミルフィルは魔法特化だ。白いローブで全身をすっぽり覆っているのは正統派という事だけではなく、シエラいわく『恥ずかしがり屋なんだ』そう。魔法の威力はすさまじく、攻撃・防御共に精密な使い手だ。宿とかでくつろいでいるところはごく普通の女の子なのだが。
二人とも凄腕の冒険者であり、アタシとはとても同格とは言えなかった。それでも、女一人の行動を心配されて一緒にいてくれる。その優しさがうれしかった。
侯爵令嬢だったころの友人と比べても、冒険者の方がよほど心が許せる相手だった。とはいえ、自分の成り立ちを打ち明けるのは、まだまだ時間がかかりそうではあるが。
カリンから依頼先の地図と交換する空の魔法石を受け取り、3人はヤクサムの街の東門に向かう。その途中でアタシは今回の仕事内容についてレクチャーを受けていた。
「要するに、旧文明の遺跡って魔力の効率的な変換が常時行われるんだよねぇ。で、その余剰分が転がしてある空の魔法石に随時蓄えられてるの」
「だから大体2~3か月ごとに魔法石を交換に行くんだよ。定期的にね」
「そうそう。おまけに遺跡の周りも中もそれほど強い魔獣が出ないから、新人君たちのいい小遣い稼ぎなんだけど」
「今は『研修中』だからアタシたちに回ってきた」
「そうさ、正解だ!」
アタシの肩を叩きながらシエラが笑う。東門が目の前に迫ってきていた。
「新人君たちには悪いけど、これ結構お得なのよねぇ」
ミルフィルの声も弾んでいる。
「とりあえず今から行く遺跡でやり方を覚えてね」
アタシにとっては地理を覚えるいい機会でもあった。
いくつか回って手順を覚えると、これからのことを相談する。
「さてと。あと残りは3つか・・・そうだ、一人ひとつ受け持たないか?」
「ソロで動くのね?ん~、リア、どう?」
「今と同じ要領でしょ。ここくらいならアタシでも行けるよ」
「よぉし、よく言った。じゃ、今はココだから、リアはこの西にある10番遺跡を頼む。ミルフィルは3番でいいかな?」
「そだね。シエラは8番?」
「そうなるな。これならそう時間がかからずに全部済ませられる。終わったら宿へ直行、でいいな?」
「リョーカイ~」
「わかった」
「じゃ、またあとで」
二人に手を振り、アタシは方角を確かめた。速足で移動すればそう時間もかからずに移動できそうだ。今日動いた地域の特性を頭の中で思い返しながら、受け持った場所へ足を向ける。
コンパスと地図を確認しつつ2時間移動して、古ぼけた遺跡の中に侵入する。
遺跡自体はどこも同じようだと教えてもらった。確かに直線で奥の祭壇に通じる。住み着いている魔獣も、それ程強くない。魔力が溜まらない構造のせいか居つかないのだという。その代わりに魔法石へ溜まっていく。
(昔の人たちもそれを活用していたんだろうって、ミルフィルは言ってたっけ)
まるで充電装置のようだと思い、それって何だと首をかしげる。
(多分、あの湧いてきた『記憶』の中のもの、だろうな)
夢に見るほど沁みついてしまった過去を切り離すことができた『知識』だけれど、複雑な思いはなくせない。どこから来たのか、何故アタシなのか、納得していないからかもしれない。
(いつか、理由がわかったら・・・)
リアとしてのアタシにつながる、かも。そう思う。
そんなことを考えつつも、祭壇の前についた。
おいてあった魔法石は青色にきらめいている。満杯の証拠だ。
『無限収納』袋から空の魔法石と交換し、任務完了。膝の汚れを払い落とし、見落としがないかと周囲を見回す。
と、祭壇の影になった壁に何かの模様が見えた。今までの遺跡にはなかったはず。暗がりに半分溶けているため、偶然見つからなかったようだ。
「ライト」
指先にろうそくほどの明かりをともし、覗き込む。そこにあったのは。
「あくやく、れい、じょう!?こ、この、文字は!それに矢印?」
矢の先端が下…祭壇の裏を指し示す。狭い隙間に明かりを差し入れてその痕跡を追う。
「ここにも・・・オ、ト、メ、ゲー、ム、乙女ゲームだって!?」
文章量の関係で切りました。すごく気になる終わりなのはご容赦のほどをm(_ _)m