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第1話

冒険者ギルドの朝は早い。


一番で出ていく護衛任務はたいてい前日から受けるものだが、それ以外にも薬草採取や街道の魔獣討伐、街中の清掃等、常時依頼があるし、何より朝一で張り出される依頼の取り合いに打ち勝つには時間が優先されるのだ。


職員が手分けして張っていく依頼票を見つめ、どれを狙うか考え、グループで相談しつつ決められた場所で待機する。そのルールを破ればギルドより先に冒険者たちから鉄拳制裁を食らう。そうして犇めきあい押し合いながら待つこと十数分。ボード前から職員が退いて横に立つ。



「ではっ!今日の依頼の受付開始しますっ!!」


カーンッ



見えないゴングが鳴らされた途端。


「ウオオォォォッ!!」


「これだぁぁっ!!」


「ま、負けるかあぁっっ!!」


「退け退け退けええぇぇっ」



・・・いつものバトルが開始した。



「男って懲りないねぇ、まったく」


「毎日これだからね。止めてきた方がいいのかな」


「やめなさいよ、あれが好きでやってるのもいるから」


「そうなんだ、へえ」


「変わらないと思いますけどね、結果的には」



ここシェルキル皇国の依頼票はちょっと変わっていて、一つの依頼が複数枚に分けられている。それを受けていくのだが、独りもしくは一つのグループでその枚数を独占することは許されない。広く浅く、そして大勢で。これが皇国のやり方だった。以前には一枚だったのだが、効率のいい依頼票をめぐって流血騒ぎや裏取引が横行したため、ギルド幹部が方針を変えたと聞いた。確かにこれなら争う必要もない、はずだが・・・?



「あの争奪戦のノリがいいんだって。よく分からんわ、男って」


「そうですねぇ」



横にいる赤髪の美女戦士が首をひねる。並びの白魔導士がため息交じりに合意した。


アタシもまた頷いて同意を示す。ここヤクサムのギルドで毎朝みられる光景だった。



そんなアタシたちに声がかかる。



「シエラ、ミルフィル、おっはよう~っ!リアも元気~?」


「おう、おはよう。カリン」


「おはようです」


「カリンは今日早番なんだ、おはよう」



ギルド受付の兎獣人カリンが受付席からぶんぶんと手を振る。両手と一緒に長い耳が左右に揺れるのが何とも愛らしい。



「シエラさんたちにピッタリな案件があるんですよぅ、お願いできませんか?」


「へえ、ギルドの受付嬢から勧められるとは、ちょっとおっかない部分もあるよな」


「あははは、否定しきれないところありますねぇ」



痛いところを突かれてちょっぴりほほを引きつらせながらも、目の前に来た3人に依頼票を見せる。



「魔法石の回収…って、ああ、遺跡巡りね」


「ええ、前回からもう2か月チョイ経ってますので、そろそろたまってるかなぁって。で、いかがですかぁ?」


「そうねぇ、時期的にはあってるかな。でも、これ、私たちがやっちゃっていいの?」


「ええもう。実はですねぇ、今うちのギルドの新人君たち、研修の真っ最中なんですよ」


「ああ、あの、研修に名を借りたアレかぁ。道理で争奪戦にギルマスがいないはずだ」


「あはは、ご明察~っ」



カリンとシエラたちの会話は流れるように進むが、アタシにはちんぷんかんぷんだ。



「研修、って?」


「ああ、リアは知らなかったっけ。ここのギルドはね、ギルマス自らが新人連中を特訓するんだ」


「とっくん?って受けたことないけど」


「リアは別よ。コルスゲン王国で冒険者として認められてるからね。『新人』っていうのはね、ここで登録して、半年くらいたった天狗たちのことを言うのよ」


「うちの国の方針はこれだろ?戦闘能力に毛が生えたボウヤ達でもこなせちゃうんだな。で、次第に自信満々になってくる時に…研修でキッチリ(シメ)るワケ」


「あ、ああ、なるほど」


「すンごいわよぅ、ギルマスの特訓は。怪我一つさせずに心をバッキバキに折ってくるんだから。普段のストレス解消にしてるんじゃないかなって疑っているんだけど・・・どう思う、カリンさん?」


「さ、さ、さあぁ~、ど~ですかねぇ?」



そんなに目線を彷徨わせたら答え合わせになっちゃうんじゃないか、と思うのだけれども。


声を出す勇気なんて、無い。



「ま、それはそれとして、受けてもらえます?」


「そうだな。ミルフィル、どう?」


「ん~、いいんじゃない?リアは?」


「アタシも賛成、かな」


「ではではっ!」


「オーケイ、受けましょ」


「お願いしまっす!」





リアの冒険者生活を描いてます。今のところはまだ平和、かな。

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