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破国の召喚神   作者: 松本 豊
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〜秘密〜

緑豊かな自然に囲まれた中、レオンは大粒の汗を流して大の字で地面に転がっていた。


「勝てない、、、。こんな人間には絶対に勝てない。」


頬を伝う大量の汗を拭い、さらにレオンは何度も思う。


(なんでこんな事になっているのか。)


昨日の悪夢の出来事に始まり、その後立て続けに大陸の抱える真実を知り、ヴェン達の隊への加入した少年レオン。人生を大きく変える出来事が立て続けに起こった中で、次は一人の人間の非現実的な強さを目の当たりにしている


これまで知らなかった世界の扉が次々に開かれ、レオンの思考はさらにこの現実に追いつかなくなっていた。



ーーー遡る事1時間前ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お前が親の魔力を知る方法がある。」


レオンはその話に興味を持った。そしてヴェンはそのまま話を続ける。


「奇能石の魔力には秘密があるんだ。初めは希能石がその力を授けてくれると思われていたが、実は希能石とはただのきっかけに過ぎない。あれは人がそれぞれ本来持っている力を目覚めさせる石だ。」


レオンは初めて聞いた奇能石の真実に驚いた。


先ほどからヴェンの口からは今まで聞いた事もなかった言葉が次々と出てくる。自分なりに頭を整理しながらレオンはさらにその言葉に耳を傾けた。


「まぁ、そこに関しては興味のある人間が調べるような事だし、普通は大雑把に知ってれば何の問題もないからな。ただ、今回ばかりは別だ。」


「どういう事?」


「どんな能力を持つかは"遺伝"で決まるんだ。基本的には父親か母親のどちらかの魔力を引き継ぐ。最後に聞くがレオン、本当に父親と母親のどちらの能力も全く知らないか?」


レオンは過去の記憶を遡った。


「直接その事について聞いた訳ではないけど、、。昔、お母さんの力は見た事があるかも知れない。隣の家の犬が倒れてきた木に挟まれてしまった時に、その木をその場で見つけたたった一本の"枝"で持ち上げたんだ。」


ヴェンは顎に手を当ててレオンの話を真剣に聞いていた。


「それはれっきとした自分の身体能力を向上させる増幅タイプの魔力だな。それに物にまでその力を伝えられるとは立派な魔力だ。ただ、王が恐るレベルでもない、、つまり狙われたのは父親の方だったんだな。」


「お父さんが、、一体どんな」


「それを今から試してみるか!やり方は簡単さ。お前にこの希能石をやるから、これを身に付けたお前を俺がテストする。それで母親の増幅魔力が発動したらお前は母親の遺伝子を受け継いでる。それ以外は父親の未知の魔力って事だ!」


「い、今から!?」


ヴェンは無邪気な笑みを浮かべて話す。


「俺たちの仲間になってくれるんだろ?俺が知りたいんだ。お前は何が出来るのかって。もしかしたら俺たちの夢を大きく前進させてくれるようなビックリするような力かも知れないだろ!?」


笑みの中にとてつもなく強い意思を感じた。レオンはそれ以上は何も言わずに彼に従い、外に出た。


太陽が眩しく、風が心地よく拭いていた。

振り返ると自分が今まで寝ていた家もとても大きく立派なものだったと分かった。


さらに目の前に広がる一面に広がる草花の中で一箇所だけある不釣り合いな茶色の地面の円は、ここに住む仲間達の稽古場出そうだ。


ここでレオンはずっと思っていた疑問を投げかける。


「そういえば、ヴェンは何で僕の名前を知ってたの?」


「あぁ、それは昨日、お前の家の中に名前入りのケーキがあったから。昨日誕生日だったんだな。ロウソクは14本。てことは14才か?」


「そうだけど。」


「そっか!俺25才!お前の大先輩だな!」


笑顔でそういうとヴェンは適当な木の枝と希能石の入ったチョーカーを渡した。


「詳しい自己紹介はまた飯の時にでもしよう。じゃあそのチョーカーを身に付けて、で、武器はこれだ。これでまずはあの岩を叩き割ってみる。お前が母親の魔力を持っていてばこのただの木の枝もれっきとした凶器になる。そのチョーカーを身に付けている時点で勝手に魔力は使えるはずだから、ちょっと叩いてみろよ。」


「分かった!」


レオンは渾身の力で岩を叩いた。


ペチンっ!


乾いた音と共に枝は無残に折れてしまった。


ヴェンは笑顔を浮かべながら言った。


「ふふ、これで確定だな。お前の能力は"父親側"だ。」


「でも、それは分かったけど、これからどうやって魔力を調べるの?」


これまで暗い気持ちばかりだったレオンはほんの少しだけ心が踊った。

(お父さんの魔力って何だったんだろう)


しかし、疑問の答えを全て知っているように思えたヴェンが初めて困った顔をして話し始めた。


「ん〜、増幅だったりの分かりやすい魔力ならまだしも、次に調べるのは未知の魔力だからな〜」


レオンも一緒に良い方法を捻り出そうとしたが、全く見当もつかなかった。


「、、とりあえず組手でもするか!なにかしら分かるかもな。」


レオンはこの提案に対して焦っていた。ずっと勉強は好きだったが人を殴った事も無ければ、喧嘩は見たことしかなかったのだ。

その全てを見透かしたかのようにヴェンは言う。


「ははは!お前が戦いが得意じゃない事なんて一目見れば分かるよ。でも、何とな〜くは分かるだろ?適当でも良いから一回やってみよう!些細な事でも能力の一端が分かれば良いんだ!」



ーーー1時間後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「勝てない、、、この男には絶対勝てない。」


戦う事に対して完全に心の折れるまで努力したレオンだったが、最後まで自身の魔力を知ることは出来ないでいた。


「レオン、、お前、戦いのセンスは驚くほど無いな。」


ヴェンは随分無邪気に人の一番傷つく事を言う、、、

そう思いながらレオンも言葉を返す


「ヴェンの魔力が強すぎるんだよ!何で人があんな速く動く事が出来るんだよ!」


「(俺のは別に魔力じゃないんだけど、、ま、いっか。)鍛えればあんくらいなるんだよ」


レオンは仰向けに大の字で地面に寝転がった。


「でもさ、組手じゃ魔力が出る気配なんて全く無かったよ。次はもっと違う方法で試して見た方が良いんじゃないかな。」


「まぁ、確かに強力な治療系や情報操作系の能力の可能性だってあるしな。でも一個一個試してたら時間がいくらあっても足りないぜ。な〜んか良い方法あるかな〜。」


その時、レオンは不意に何かの気配を感じた。


「ん?え?ヴェン、今なんか言った?」


「いや、何も」


「そっか」


しかし、それは思い過ごしではなかった。


「(、、あいたたた!急に倒れてきおって!潰される所じゃった!)」


レオンは驚き周りを見渡すが、ここには間違いなく自分とヴェンしかいない。


「、、一体誰?」


その時一匹の"アリ"が自分の顔の上にいる事に気づいた。


「もしかして、君が?」


思い過ごしであって欲しいと思いながらも恐る恐る話しかけた。


(君?ってワシしかおらんじゃろう、、、)


辺りを静寂が包んだ後、レオンとアリは大声で叫んだ。


「アリが喋ったぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

(人間がしゃべったーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!)


ヴェンもかなり驚いた様子で駆けつけて来た。


アリも相変わらず顔にしがみ付いている


(ちょっと!あまり大声出すな!お前の息で遠ーーくまで飛ばされそうに、、!)


レオンはアリの言葉を最後まで聞かずにすかさず質問をする。


「えっ!何であなた喋れるんですか!?」


(それはこっちのセリフじゃ!何でお前はワシと話せる!?)


レオンとアリはお互いにお互いの存在を確かめ合った。


その目を丸くしてヴェンはその様子を見つめている。


「レオン、お前、、」


「何と喋ってんの?」


次回:仲間




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