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破国の召喚神   作者: 松本 豊
25/28

〜赤色の騎士〜


ーーーヘルツォーク邸ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


入隊の決まったその日はそのままヘルツォークの家でささやかな歓迎会をする事になった。


事件の後処理もそこそこに、すぐに帰宅し宴会の準備に取り掛かったヘルツォークの自慢の料理と多くの種類の酒が食卓に並んでいた。


レオン「でも、本当に良いんですかね?今日襲ってきたあの敵達がまたいつ来るか分からない状況で、こんなにくつろいじゃって、、。」


ヘルツォーク「問題ないよ。あれから王国軍の兵を各所に徹底的に配置した。確かに不気味な相手ではあったが、個々の戦闘力は高くなかった。彼らだけで十分に町中のみんなを守れるさ。それに、この会はこれからの作戦を立てる大事な時間なんだぜ?」


すると誰かが家のドアをノックした。


「お!意外と早かったな。早速お客様のお出ましだ。」


そういってヘルツォークがドアを開けると、そこにはシンズラーと初めて見る2人が立っていた。


「いらっしゃい!さ!中へ入って!それとシンドラー将軍!今日はその後の対応ありがとうございました!おかげでパーティーの準備は万端です!」


実は細かい作業の苦手なヘルツォークはシンズラーに事後処理と報告業務、さらに別の将軍には兵の配置などの指示を任せていた。


「ふ、全く調子の良い奴め。うまい酒は用意してあるんだろうな?」


シンズラーは職務中とは違って柔らかい笑顔で返事をした。


??「その子が期待のルーキーですか?」


シンズラーの隣の男性がレオンに対して口を開いた。


ヘルツォーク「あぁ、紹介するよ!もう聞いていると思うが、新しく俺の直属の部下になったレオンだ。俺と同じ召喚士で、この若さで赤色の魔力を持っている。」


するとみるみるうちに男は怒りの表情に変わっていった。


??「そう!そこですよ!こいつのおかげで隊で赤色の力をもつ最年少の兵士だった僕の価値が下がってしまったー!」


次にその様子を聞いていた隣の女性が慌てて口を開く。


??「ちょっと!あんたそんな事気にしてたの?子供じゃないんだからそんな事我慢しなさいよ!」


ヘルツォーク「そうだぞカメル。今日はレオンの歓迎会なんだからみっともない事するな。」


続けてヘルツォークによる2人の紹介が始まった。


「いきなりやかましくて悪かったなレオン。この2人は同じ王国軍の兵士で、男の方はカメルで女の方はカーディー。2人ともこう見えて赤色の奇能石の所持者だ。」


カメル「こう見えてって、、。けっ!まぁ、せいぜい頑張れよ。」


カーディー「まーたそんな態度、、ごめんねレオン君。で、私はカーディー、こんな若いのにヘルツォークに認められて凄いね。よろしくね!」


カメル「けっ!!」


椅子に座り、踏ん反り返って悪態をつくカメルの様子を見てレオンは微笑んでいた。彼にどことなくコルトの面影を感じていたからだ。


カメル「な〜に笑ってんだよおぼっちゃま!」


再び場が荒れそうになったタイミングでヘルツォークはカメルを制し、場を仕切り直した。


ヘルツォーク「落ち着けってカメル。若さなんて関係ないだろ?お前の能力の高さは全員認めてるよ。じゃあまぁ、挨拶はこんな所で良いだろう。で、ダンとパルラはまだ城か?」


カーディー「もうお城を出た頃じゃないかしら?あと1時間もすれば来るんじゃない?」


ヘルツォーク「じゃあ、もう1人やかましい奴が増える前にとりあえず始めておくか。」


そういうと全員が席について食事が始まった。

しばらく雑談をした後にシンズラーが真剣な眼差しで口を開いた。


シンズラー「では、ここらで今後の作戦について大枠を決めておこうか。」


この発言を皮切りにシンズラーを中心とした作戦会議が始まった。

ヘルツォーク曰く、シンズラーは王国軍の中で軍師の役割を担っている古参の将軍で、奇能石のレベルこそ黄色だが全兵士に慕われ国王からの信頼も厚い人物だった。

つまり今からここで決めることがそのまま新たな未知の敵に対して国の取る政策となる。


シンズラー「とは言っても私としては今日ヘルツォークがいっていた通りの作戦で行こうと思う。城と城下町の守備はヘルツォークとレオンに任せて、大軍を起こしてミルドラ城を一気に攻め落とす。」


カメル「なんですかその作戦は?ヘルツォークさんは良いとしてこのレオンってのもそんなに戦力になるんですか?」


カーディー「ちょっとまた!あんたはもっと普通に喋れないの?」


カメル「うるせぇな!喋り方なんて俺の勝手だろ!」


ヘルツォークは笑ってカメルに問いかける。


「はっはっは!カメル、じゃあお前は今日突如街に現れた巨人を見たか!?」


カメルはその質問に用意された酒を乱暴に飲みながら答えた。


「あ、あぁ。ありゃまたとんでもない化け物でしたね。あんなのも呼べるようになっちゃってるんですねヘルツォークさん。」


「そこだよ。あれは俺じゃなくてレオンが呼び出した。」


カメルとカーディーはその事実を知らなかった為、大きく動揺した。


カメル「う、嘘だろ?みんなもあれはきっとヘルツォークさんが出したって、、!てか、じゃああんなもん出せる人間が今まで何してたんだよ?」


カーディー「レオン君、君は一体、、、?」


シンズラー「ふ、、。それが分かれば守備の不安はあるまい?それで、次なんだが、、」


すると家の扉を強くノックする音が部屋中に響いた。


ヘルツォーク「お、着いたか?」


ヘルツォークが玄関まで迎えに行くと、誰よりも早く異様にテンションの高い"男"が走って皆の前に現れ大声で話し始めた。


???「あらぁ!!もうすでに始まってるじゃなーい!!仕事を終わらせてからぶっ飛ばしてきたってのに間に合わなかったわねー!!」


全員このノリに慣れているのか冷たい目でその男を見ており、カメルに関しては天井を見つめて決して視線を男に移さなかった。しかしレオンは初めてみる化粧をした男の人に驚き目を奪われていた。


「あらら!!それであなたがレオンちゃんね!!随分可愛い顔じゃないの〜!!こんな子が赤色の奇能石を持ってて、さらにヘルツォークと同じ召喚士だなんて驚きね!!」


この終始ハイテンションな男の名は"ダン"。この男も立派な国王軍のほこる赤色の騎士だ。

すると次にヘルツォークとさらにもう1人新たな仲間が部屋に入ってきて、レオンと簡単に自己紹介を済ませた。


そのもう1人の仲間はパルラという名の女性だった。しかしパルラには見た目に大きな特徴があり、レオンは次にそこに目を奪われていた。


レオン「パルラさんの体は、、一体、、?」


パルラ「あぁ、気になるよな。私の四肢は左腕以外見た通り機械で出来ているんだ。国王軍の今持っている技術を集約した兵器だが、日常生活も戦いもこれのおかげで不自由ないんだ。」


シンズラー「パルラはある意味王国軍の未来を背負っている。このパルラの戦闘を通じて機械の改良がさらに進めば、いつの日か奇能石の色が緑色の一般兵への使用も考えている。それが成功すれば軍の戦力はさらに底上げされるからな。」


パルラ「つまり、私の生活の全ては軍の未来へのサンプルなのさ。」


席についたパルラは皮肉交じりの笑顔で酒を飲んだ。


ヘルツォークが招待した全てのメンバーが揃ったところで、シンズラーは先ほどの作戦を合流した2人に再び伝え、続きを話し始めた。


シンズラー「では我々はミルドラ城を再び大軍で攻める。この作戦にはヘルツォーク、レオンを除く全ての赤色の騎士達にも必ず参加してもらう。良いな?」


ダン「作戦は特に問題はないわ、、。だけど、ネロと結託していた者達はノウフが率いた軍との戦いで全滅したんでしょ?となると後はとり逃したネロだけ、、そんな大軍で行く必要はあるかしら?私達だけでも十分なんじゃない?」


シンズラー「そう思うのは当然じゃな。しかし、今回は相手はこれまでのような普通の敵ではない。お前も知っていようがリラの死体を奪い去った人物。おそらくネロだと推測できるが、広場の死体の様子を見るに奴は特殊かつ強力な力を有している。」


ダン「、、、あの場にいた全ての人間が滅多刺しにされてたわね。」


シンズラー「あぁ、だが一番問題なのはそれだけの骸を作り上げた時間だ。奴は我々王国軍を始め、誰にも気づかれることなく一瞬であの状況を生み出した。そして5年ほど前に殺し方こそ違いはあるが同様の事件がノクシムのアジトやボルクの館でも起きたことがあった。もしこれらも全てネロの仕業なら幼き頃から奴は異常な力を有していた事になる。それこそ"赤色の騎士"レベルのな。」


カメル「ちっ、、」


シンズラー「ここでの話は全て仮定の話で、全ては憶測に過ぎんが、、、今日飛来してきた謎の敵もネロの仕業の可能性がある。もし奴がそのような兵隊を次々に生み出せるのであれば、其奴らと戦っている間にネロを取り逃がす可能性もある。」


カーディー「そのような状況になった時、そいつらの相手を兵達にしてもらっている間に私達赤色の騎士がネロを確実に仕留めるって事ですか?」


シンズラーが深く頷く。


シンズラー「左様だ。そしてその新手に対してどのような能力が敵に有効か分からぬ故、大軍を引き連れてどんな局面にも対応出来るようにしておきたいのだ。」


パルラ「作戦は分かった。いつ決行する予定だ?」


シンズラー「2日後だ。」


一同は想定していたより早い予定に驚いたが、すぐに頭の中は2日後の決戦に向かって切り替わった。


カメル「まぁ、諸々の事情を踏まえると進軍は早ければ早い方が良いでしょうしね。なんなら明日でも良いですよ?」


シンズラー「頼もしいなカメル。しかし兵達の準備もある。明日しっかり準備をして、明後日の早朝に向かう。良いな?」


ダン「そうと決まれば、とりあえず今日はレオンちゃんの加入を祝いましょう!!こうやって親睦を深めるのも大事な事でしょう!?」


ヘルツォーク「あぁ、城の護衛に残ってくれた残りの赤色の騎士5人には申し訳ないが、俺たちは少し羽目を外させてもらおうか。王国軍へようこそレオン。これからどんどん働いてもらうから、覚悟しておけよ?」



そこから宴はしばらく続き、レオンと王国の精鋭達は親睦を深めた。


宴会の最後にシンズラーがレオンにあの質問をした。


「では、レオン。そろそろ答えてもらおうか?なぜお前は赤色の力を有する?お前は一体何者だ?」


この質問を"逃れる"答えを未だに持っていなかったレオンは冷や汗を書いていた。自分が未来から来た事をここで話せば、どんどん史実とは逸脱してしまう可能性が高い。事実、今回の作戦もレオンがいなければ本来は違う内容だったかも知れない。この時代の人々が各自どのように動きネロを封印したのか、その結末を見届け現代のネロ討伐のヒントを得る為には何としてもここは上手く切り抜ける必要があった。


しかし良い案が浮かばずしばらく黙っていると、その不可解な沈黙を破るようにある人物が口を開いた。。


ヘルツォーク「もういいレオン。俺から全部言うぞ?」


レオン「、、、え?」


ヘルツォークは大きく息を吐き出すと、全員を真っ直ぐ見つめて切り出した。


ヘルツォーク「レオンは、、俺の子どもだ。」


一同「、、、、」


一同「はぁ!!!!???????」


全員が驚きの声を上げざわつく中、レオンの表情は固まっていた。


レオン(ちょっと、ヘルツォークさん!一体何を、、)


ヘルツォーク「いや、黙っていて悪かったな。しかしレオンはずっと母親の方に預けていたからな。」


ダン「は、、母親って、、。レオンのお母さんって誰なのよ、、?」


ヘルツォーク「、え〜と、、あれだ、、、。魔女の城の者だ。」



一同「はぁ!!!!!?????」


その場を今日二度目の衝撃が襲っていた。


カメル「いやいや!!話が全然分かんねぇ!」


カーディー「そんな、、じゃあレオンは人間と魔女のハーフって事!?」


パルラ「い、、いや。だとしたらこの歳で赤色の魔術を扱っていても、、確かに不思議ではない、、。」


ヘルツォークは気丈な態度を保っていたが、レオンには嘘がバレないように強がっている様にしか見えなかった。


ヘルツォーク「あ、あぁ。俺も久しぶりに会って、しかも俺の能力を引き継いで召喚士になっていたとは知らなかったが、、この国の危機って時に再開出来た事は奇跡だと思って、、その〜、、国王軍に勧誘したんだ。」


シンズラー「なんと、、、今の話は真か!?レオン!?」


レオンはヘルツォークの突然の無茶振りに必死で話を合わせた。


レオン「は、はい。実は僕は幼い頃から魔女のお城で訓練を受けていました。それはもう厳しい訓練で、、、。そしてある日僕の奇能石は赤色に光出し、成長した僕のこの力をお父さんに見せる為にここにやって来たんです。」


先ほどの騒がしさから一転して、場は静寂に包まれた。


ダン「ひ、人に歴史ありね、、。」


カーディー「なんか言われて見れば似てるかも、、、目元とか、、、。」


シンズラー「な、なるほどな。だったら初めからそう言えば良いものを。」


ヘルツォーク「いえ、私はほら多くの敵と多少の味方から恨みを買ってますから。私の息子とバレるとどんな危険があるか分かりますまい?だから、レオンとは最後まで黙っていようと相談してまして、、」


レオンも顔中の汗に気づかれない様に笑顔で首を縦に何度も振った。


カメル「あんなデケェ巨人呼べるくらいだから、危険なんてないでしょうに、、、。」


ヘルツォーク「とにかく!これがレオンの真実だ!おっと!他言は禁止ですよ!ここだけの秘密でお願いします! さっ、もう遅いのでお開きとしましょう!明日は忙しくなりますしね!」



こうしてヘルツォーク邸で開かれた歓迎会兼作戦会議は終わった。


静かになった部屋でレオンとヘルツォークの2人になった時、レオンはすぐに先程の会話の礼を言った。


レオン「あの!ヘルツォークさん、、さっきは助けてくれてありがとう。僕は、、」


ヘルツォーク「お前はこの世界の人間じゃないんだろ?」


レオン「え、、!?」


ヘルツォーク「はは!!図星か!あの話題になるとお前は本当に困った顔をするもんな。でもまぁ、そんだけ言いたくなけりゃ、言わなくて良いさ。その代わりお前は俺の息子になっちまったな。」


いたずらっぽく笑うヘルツォークに対してレオンは心から感謝していた。そしてしばらく2人で宴の片付けをした。


ヘルツォーク「よし!こんなもんで良いぞ!手伝ってくれてありがとな!で、お前は帰る場所はあるのか?」


レオン「いえ、、実は、、なくて、、」


ヘルツォーク「だろうな!じゃあ息子よ、お前がどこから来てどこに帰って行くか知らねぇが、この世界にいる間はこの家に住め。お前はこの世界でも決して1人じゃないぞ?」


レオンはヘルツォークにヴェンの面影を見ていた。英雄ヘルツォークは誰よりも器が大きく、優しい人間だった。


レオン「ありがとうヘルツォークさん。」


ヘルツォーク「おいおい。息子が親父をさんづけするか?気軽に呼べよ。お父様って、、」


レオン「これからもよろしくお願いします!ヘルツォーク!」


ヘルツォーク「まぁ、何でも良いけどな、、。」



そして夜は明けていった。

翌日はシンズラー指揮の元、軍の大規模な編成が行われた。

そして宴から2日後の朝、赤色の騎士9名を含めた大軍が静かにミルドラ城へ向けて出立していった。



次回〜誤算〜

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