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破国の召喚神   作者: 松本 豊
24/28

〜ヘルツォーク〜


レオンがクロノスからの新たな修行地として飛ばされたのは300年前の世界だった。


300年前のバルストレス大陸、つまり王国軍とネロの軍の衝突が引き起こった時代。そこでヘルツォークという人物と出会いこの時代の終末を見届けることがこの時代でレオンの達成すべきミッションである。


ーーー300年前のバルストレス大陸ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ヘルツォーク「一瞬で終わらせるぞ!」


そういうとガルーダの雷が敵を貫いた。その後も大技で敵をなぎ倒していくその戦いぶりはまさに壮観だった。そしてレオンもヘルツォークの背を狙う敵をボーガと共に殲滅した。


そして戦いはまさに一瞬で片付いてしまった。

そしてそのタイミングで国王軍の大量の援軍が現場に着いていた。


ヘルツォーク「念の為ガルーダに来てもらったが、そこまでの敵ではなかったな。」


そういうと杖をガルーダとボーガに向けてかざした。すると2匹の体が透明になっていき、そのままいなくなった。


王国兵「ヘルツォーク様!シンズラー将軍に此度の敵の情報報告をお願いします!」


走り駆け寄ってきた王国兵の質問にヘルツォークは仏頂面で答える。


ヘルツォーク「全く、、、お疲れ様の一言もないのか!俺はこれから大事な用があるから、君がシンズラーに伝えてくれ!あの程度なら緑色の騎士達で十分倒せるとな。」


王国兵「しかし、、本当にご自身から報告しないのですか!?」


ヘルツォーク「うるさーい!次何か言ったら王国軍やめる!!1時間もしたらすぐに向かう故、それまでリラの死体を持ち帰った者を調べて待てと伝えてくれ!」


王国兵「!?」


王国兵は大量の汗をかいて再び軍に走って戻っていった。


ヘルツォーク「では、少年。この先に俺の屋敷がある。そこで話をしないか?」


レオンはヘルツォークに従い歩いていった。


ーーーヘルツォーク邸ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ヘルツォークは屋敷と豪語していたが、そこには質素な一軒家が建っていた。


中に入るとヘルツォークは飲み物を出してくれた。


「で、単刀直入に聞くが、君は何者だ?」


「僕の名前はレオンです。ただその、、お家にまで招いていただいて申し訳ないですが、、僕の素性は実は明かせない事が多くて、、すみません。」


「、、、だろうな」


レオンはヘルツォークの意外な反応に驚いた。その顔を見てヘルツォークは笑いながら話を続けた。


「そりゃそうだろ?さっきのボーガの反応を見るにその歳でお前は恐らく奇能石の所持者でしかも俺と同等、赤色レベルの強者だろ。しかしこの国では国王軍の兵士以外は奇能石の仕様は絶対に禁じられている。なのにお前はどうやってか奇能石を手に入れて、それだけではなくその仕組みに気づき鍛え上げていた。はっきりいってそんな存在は王国に知られれば命はない。」


レオンは思い出していた。この時代はまだ一般人の奇能石の使用が強化されていない。つまり自分は犯罪者なのだ。王国軍の人間にその事に気づかれた自分の状況は思った以上に厳しい事も悟っていた。


「ヘルツォークさんの言う通り、僕は奇能石を所持しています。でもこれは決して王国に対する叛逆の意思ではありません。僕は国王兵になれませんでしたが、国の有事にはこの力で貢献するつもりでした!」


とっさに思いついた嘘だったが、それをヘルツォークは眉間に皺を寄せながら目を瞑り黙って聞いていた。

このまま終わってしまうかと思ったその時、長い沈黙をヘルツォークが破った。


「じゃあ、この際に王国軍に入ってしまえば何も問題ないな!」


「はい。、、、はい?」


予想外すぎる返答にレオンは戸惑った。


「いや、ちょっと待って下さい!そんな簡単に入れるものなんですか!?国王軍って!」


「俺がお前を推薦する。お前の事を全て知っている訳ではないが、俺は生き物に好かれる人間に悪い奴はいないと思っているし、何より赤色の奇能石の力を有する者を遊ばせておく事などできまい?これはレオン、君の監視も兼ねている。」


はっきりいってこの提案自体はレオンにとって理想的な展開であった。しかし国王軍の腹の中は分からない。そのままレオンを軍に引き渡す為の罠の危険性もあったが、後に英雄とまで呼ばれ後世に語り継がれるヘルツォークを信用する事にした。


「分かりました。もし可能なのであればこちらこそお願いしたいです。」


ヘルツォークは笑顔で頷いた。


「では、急がせて悪いが将軍を待たせてしまっている。もう一度広場まで一緒に付いてきてくれるか?」


2人はシンズラー将軍の元に急ぎ足で向かった。


ーーー城下町 広場ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


2人が広場に到着すると、一際目立った鎧を着た兵士が部下に指示を出していた。


???「恐らくリラを奪ったのはネロじゃ!ノウフ将軍は死ぬ直前にネロはやはり不在だったと言っておったが、どこからかまたこの世界に戻ってきたに違いない!そして先ほどのヘルツォークが退治した正体不明の敵、、、あれの正体も暴き出せ!!」


明らかに苛ついているシンズラーに対して、ヘルツォークは陽気に挨拶をした。


ヘルツォーク「シンズラー将軍!」


シンズラー「ヘルツォークか!!貴様今まで何をしていた!!」


ヘルツォーク「はは!何よりも優先すべき事がありまして!」


レオン「?」


シンズラー「では、さっさと報告しろ!先ほどの敵は何なんだ!?」


ヘルツォーク「あれは間違いなく人ではなく"何者かの能力によって作られ操られた人形"のような者ですね。その証拠に倒した後はその死体が霧のように消えていった。」


シンズラー「むぅ、、。厄介じゃな。お前の仮説が正しければ、操っている術者を止めぬ限りはまたあやつらが湧いて出てくる可能性がある、、か。遠目から見てもその数は多かったように見えたが、一人一人の力は緑色のレベルで間違いないか?」


ヘルツォーク「全ての者に当てはまるかは分かりませんが、少なくとも先ほど退治した者たちはその程度でした。」


シンズラー「なるほどな。敵の大体の力量が分かっただけでも一先ずは御の字とするか。しかし、ノウフの急死さえなければ奴の能力で敵を追う事も出来たものを、、惜しい人材を無くしたわい。」


ヘルツォーク「えぇ、ノウフさんの軍への貢献度は高かったですからね。しかし、そのノウフさんが毒をくらって帰ってきたミルドラ城ですが、やはりそこにネロがいる可能性が高い。先ほど話に出た術者も十中八九ネロの仲間でしょう。いえ、それがネロ本人の可能性すらある。」


シンズラー「ならばやはり、、今一度ミルドラ城に出向くしかないか、、。しかし、前回とは状況が違う。いつ先ほどの敵が街を襲うか分からぬ以上は、大軍を向かわせる事は出来ぬ、、。そして今回は得体の知れぬネロとの戦闘になる可能性も高い、、戦力を出し惜しめば多大な被害を被るかも知れぬ、、。」


するとヘルツォークは笑顔でシンズラーに提言した。


ヘルツォーク「そこは大丈夫!!再び大軍でミルドラに押し寄せて、一気に決着をつけましょう!」


シンズラー「な!!話を聞いておったかヘルツォーク!?敵がいつどれほどの戦力でここを襲うか分からぬ以上、守備兵も多く残しておく必要がある!それをお前は、、」


顔を赤くして大声で詰め寄るシンドラーを遮るようにヘルツォークは頭に描く作戦を伝えた。


ヘルツォーク「はっはっは!!町と城の守備は私とこのレオンが受け持ちますよ!」


シンズラー「なっ!!」

レオン「なっ!!」


レオンもその提案を聞いて絶句していた。

しかしヘルツォークは先ほどとは打って変わって真剣な顔で説明した。


ヘルツォーク「この少年レオンは今日付けで私の直属の部下にします。つまり彼も立派な"王国の騎士"です。」


シンズラーはその提案を聞きながらレオンを睨みつけた。


「先ほどから気にはなっていたが、どこの馬の骨かも分からん若僧を王国騎士にするだと!?国王にも相談せずに何を勝手な、、!」


「しかし、彼は赤色の奇能石を有しています。これがどういう事かご理解出来ますね?」


その言葉を聞いたレオンは服の袖をめくって赤色に輝く奇能石を見せた。


「馬鹿な、、。こんな小僧が、、国王軍にも10人しかいない赤色の力を有するというのか、、?」


「はい。騎士達ですら赤色になるまでに厳しい訓練で命を落とすことさえある。そもそも素質があっても赤色にまでならぬ者もいる。そんな力を彼はこれほどの若さで会得している。さらに王国に対して敵対心もない。この事態にこんな戦力を招き入れない理由などありますまい?」


「お前の言いたい事は分かった。しかし、、その者はどのような力なのか、どのように国に貢献してくれるのか、、。名はレオンと言ったな。ここでお前の能力を見せてくれないか?」


ヘルツォークもシンドラーに同調する。


「レオン!そういえばまだ俺もお前の力自体は見ていなかったな!入隊試験だと思って、ここでお前の力を見せてくれ!」


レオンは突然の展開に戸惑ったが、ここで全力で自分の力を証明する事にした。それは未だ試せていない前回の修行の成果を確認する為でもあった。


「分かりました。でも、ヘルツォークさん一つだけ貸して欲しいものがあるんです。」


「?  なんだ?」


レオンはヘルツォークが腰に指している物を指差した。


「その"霊樹オーガンの杖"を貸してください。」


ヘルツォークはその言葉に驚愕ししばらく立ち尽くしていたが、すぐにレオンに杖を渡した。


「なぜ杖の名前を、、お前は一体何者なんだ?」


レオンはヘルツォークに向けて笑顔を向けた。

そしてどんどん高まるレオンの魔力を感じたヘルツォークとシンズラーは大粒の汗を流していた。


レオンは杖を天に掲げる。


「今ここに姿を現せ、、古の巨人ゴードン、、、!!」


空に巨大な時空の穴ができ、そこから最初は巨人の手が現れた。


ヘルツォーク「そんな、、馬鹿な、、。」


その巨人が全身を表した時、町中の人間が声をあげた。

そこにはどこからでもその存在を確認できる程の、巨大な生き物が立っていたのだ。


ゴードン(、、ん?戦いじゃないだか?)


レオンはゴードンに呼び出した事情を説明した後に杖を向けて元の世界に戻した。


レオン「僕の能力は、実はヘルツォークさんと同じ"召喚"です。でもボーガもガルーダも僕は知らない事から恐らくヘルツォークさんと呼べる者は異なる様です。こんな感じですが、、どうですか?」


ヘルツォークもシンズラーも言葉が出なかった。

国王軍の中でもヘルツォークのみが有する強力な召喚の能力を同等かそれ以上の力で使いこなす少年。この2人が揃えば王国軍が大幅に強化される事は明白だった。


ヘルツォーク「ははは、、。驚いて言葉が出ないってのはこの事だな。だからボーガはお前にあれ程懐いたのか、、。」


そのままシンズラーの方を見て笑顔で問いかけた。


「では、入隊という事で良いですかね?シンズラー将軍?」


「あ、あぁ。私が国王に掛けあおう、、。しかし、なぜこのような力を持つのか、、お前の素性は追々教えてもらうぞ。」


こうして晴れてこの時代の王国軍に入隊が決まったレオンだった。


これから史実には存在しない"もう1人の召喚士"がこの時代最大の戦争を駆け抜ける。


次回〜赤色の騎士〜


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