表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破国の召喚神   作者: 松本 豊
22/28

〜ネロ④〜


ーーー 6年後 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ネロの右腕が鮮やかな"赤色"に光り輝き、クロノスはネロを引き戻した。


クロノス「なんと、、まさか黄色を飛び越えて赤色の状態になるとは、、(しかし、前例がない訳でもない、、やはり飛び抜けた才能とセンスがある。)」


ネロは静かに目を開けて、ゆっくりと体を起こす。


「戻ってきた? あの経験が全て幻想とは、不思議な感覚だな。」


うすく笑みを浮かべながら戻ってきた感想を口にした。


クロノス「お主はワシの想像を超えた成長を遂げて帰って来たようじゃ。大した人間じゃな。」


ネロ「あぁ、随分長くあちらの世界にいてしまったが、奇能石の成長の仕組みに関してもよく分かった気がする。そして、、俺の能力の事も、、。」


そしてネロは辺りを見回した。


リラ「ん?リラはまだ戻ってないのか?」


クロノスは事情を説明した。

話を聞き終えると、ネロは怒りの表情を浮かべてクロノスに問いかけた。


「リラは修行をせずに城に戻ったのか!?城にはオーク族もいる!仲間になったばかりの奴らに俺に対する反乱因子がいれば、リラは何をされるか分からないんだぞ!」


ネロの脳裏に過去の忌まわしい記憶が蘇る。


あまりの形相にクロノスも気圧された。


「考え過ぎではないのか、、、?それにリラは自分の意思で帰っていったのだぞ。」


ネロは強くこの場に留まるよう伝えなかった過去の自分の行動を後悔した。


「とにかく、もう修行は終わりだ!早く俺も戻してくれ!!」


クロノスは急ぎ外界へネロを戻した。


「リラ、、!!」


ーー ミルドラ城 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ネロ「城に戻って来たのか、、。こちらでは約3日が経っていると言っていたか。」


ネロは地下を抜け出し、広間へ走った。

(、、? なんだ、、? やけに静かだ。)


広間についたネロは予想外の光景を前に目を大きく見開いた。


「、、なんだ、、これは、、?」

オーク族も含めたネロの軍が広間で倒れていた。

そして、それら全てが息をしていない事は遠くから見ても分かった。


??「ネロ、、か?」


ネロは振り返った。


「ハクセイ、、!?」


そこには瀕死の重傷を負ったハクセイが立っていた。


ハクセイ「良かった、、。お前にここで何があったのか、、伝えるまで死ねはしなかった、、」


どう見てもハクセイの体は限界をとうに超えていた。そしてそのまま倒れ込んでしまった。

ネロはハクセイにかけより抱き上げた。


ネロ「手当が先だハクセイ!今は何も喋るな。」


助けを呼ぼうと辺りを見たが、場内に生きているものがいるとは思えなかった。


ハクセイ「ふふ、手当を出来るものなど生きていない、、、」


ハクセイはネロの手を強く握った。


「ネロ、すまない、、リラが、、リラが連れて行かれてしまった。」


ネロの悪い予感は形を大きく変えて当たってしまった。


「一体、、誰に?」


「国王軍だ、、お前が出ていった次の日、国王軍が大軍で攻めてきた」


当時の様子を、ハクセイは詳細に語った。


ーーー 2日前 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


オーク達と協力し、城の修繕に取り掛かっていたネロの軍。

お互いに徐々にではあるが、理解を深めていっていた。


その様子を見回りながら見ていたハクセイとオークは笑顔で話していた。


ハクセイ「ふ、お前達が一部だけでも人間の言葉を喋れて安心した。見ろ、あいつらの顔を。俺たちが本当の仲間になるのにそんなに時間はいらないかもな。」


オーク「、、未だにお前達を嫌悪している者がいるのも事実だが、、俺もそう思うよ。」


この時ハクセイは全ての出来事の始まりの日を思い出していた。

ある日突如アジトに現れ、その後電光石火の速さで屈強な軍を作り上げたネロにハクセイは戸惑いながらもその才能を認めていた。

(全く、お前のおかげで俺たちは生きる目的を持ってしまった。いつでも死んで良いと思っていた俺たちが、今では誰もがお前と共に最後まで歩みたいと思っているぞ。)



しばらく見回った後、ハクセイとオークは後方の正面門の辺りで騒ぎが起きている事に気が付いた。


ハクセイ「正門が騒がしいな。」


オーク「見に行くか、、。」


2人が着くとそこには国王軍の兵団がいた。

まさに正門で作業をしていた部下達を殺害している瞬間だった。


オーク「国王軍!? なぜこのタイミングで!?」


ハクセイ「それになんだこの軍の数は!?まさかほぼ全軍を投入してきたのか!?」


目の前に広がる国王軍の迫力に、2人は後ずさりした。


そこで敵の兵が2人に話しかける。他とは明らかに異なる身なりからすると、将軍レベルの人物であると推測ができた。


「私は国王軍のノウフ。お前達、ここにネロとリラがいるな。こちらに引き渡せ。」


ハクセイは瞬時に国王軍が攻めてきた理由を理解した。


「お前達、このタイミングを待っていたな?」


ノウフは答える。


「その通りだ。奇能石を盗み、逃亡した大罪人のネロとリラが東の山に消えたのを確認していた。最後まで追っても良かったが、奴らがそこで仲間を増やし、その後拠点としてこのミルドラ城を目指すと読んだ。そこからある程度力をつけた貴様らとオーク、海龍族どもが潰し合い消耗すれば、あとは容易く城も奪える。」


ハクセイ「なるほどな。全てお見通しだった訳か。」


ハクセイの頬に汗がつたった。


兵「しかし我々とて鬼ではない。ネロとリラの身柄を引き渡せば、これ以上の被害を与えるつもりはない。」


ハクセイとオークはこれが虚言であるとすぐに気づいた。今この状況下でどんな理由であれ自分たちを逃す選択などありえないからだ。


ハクセイ「絶体絶命か、、だが、残念だったな。ここにネロも"リラ"もいない。」

とっさに口から出た嘘だった。リラはこの時城内にいたが、国王軍相手に引き渡せばどんな仕打ちが待っているか容易に想像できた。


しかし、ノウフは笑みを浮かべた。

「そうだな。ネロは確かにここにはいないようだ。だが、リラはいるな?」


ハクセイの顔からはさらに汗が流れ落ちる。

(な、なぜ分かった!?こいつは一体!?)


ノウフ「その顔はイエスだな。なぜ私が当てられたかタネを明かそう。私の能力は"追跡"。私は魔法で相手にマーキングが出来るのだよ。以前奴らが逃亡を謀った時、私の魔法を奴らに仕掛けた。そこからあの兄妹の行動はそもそも我々には筒抜けだったのだ。そして今回は2人の魔力が突如消えて焦ったが、どういうわけかリラだけが戻ってきた。そこを狙わせてもらったよ。」


ハクセイ「く、、(そんな特殊な能力の奴までいるのか、、まずいな。どうにかリラを逃がさねば、、)


その頃には騒ぎを聞きつけた城の部下達が全て集まってきていた。

しかし同時に国王軍の途方もない軍力を見たは部下達は戦意を失いつつあった。

そんな中でもハクセイのみがこの場を切り抜ける方法を考えていた。


ハクセイ(追跡の能力のこいつを瞬時に殺し、リラを逃すしかない、、しかし、部下とその作戦を練る時間もない、、どうすれば良い、、!)


そこで1人のオークがある行動に出た。

城内からリラを連れてきたのである。首元にはナイフが当てられていた。


引き渡すことによって自分は助かろうと思っていたのだ。数人のオークもその行動に賛同した。


ハクセイ「バカな!?やめろお前達!」


ノウフは高らかに笑った。

「ここで仲間割れとはな!お前達のような小悪党にはふさわしい末路ではないか」


オークからリラを受け取った後、部下に城まで連れて行くように支持した。


その後ノウフはリラを引き渡したオークを自分の元へ集めた。


「お前達、よくやってくれたな。では、お前達の処遇だが、、」


会話の途中で兵の後ろにいた部下達が一斉に動きだし、一瞬でオークの首を跳ねた。


「やはり助ける訳はないよなぁ、、!皆殺しにしろ!!!」


ハクセイも号令をかける。

「く、、何としてもリラを奪い返すぞ!!戦え!!」


しかし、即座に反撃を試みたのはネロの軍勢のみであった。

オーク達は目の前で無残に殺された仲間を見て、ここで完全に戦意を失っていた。


その後の戦いはまさに一方的であった。反抗する者、しない者の境もなく仲間は殺され続けた。


ーーー終戦後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


日も落ちた頃、戦いの終わった戦場で瀕死のハクセイの体を持ち上げノウフは問いかける。

「お前だけは生かしておいてやった。では、ネロの居場所を教えてもらおうか。私の能力でも感知できないという事は、この城のどこかに別の空間へ飛ばす、そんな場所があるのではないかね?」


その質問を聞いて瀕死のハクセイは笑った。


「なんだ?一体何がおかしい?」


「やっと、、俺に近づいたな、、」


ハクセイがノウフの両腕を掴むと、握った場所から見る見るうちに手が紫色に変色していった。


「まさか!こやつの能力か!?」


「あぁ、俺の能力は"毒"だ。お前の体は俺の毒に蝕まれた。どうするクソジジイ、すぐに治療しないとお前は死ぬぞ?」


兵は一転して苦痛の表情を浮かべた。


「く、死に損ないが、小癪な、、戦いの最中能力を使っていなかったのは、ワシに油断させる為か、、、」


ハクセイは再び笑った。

「お前のその顔を見れて良い気分だぜ、、さっさと城に戻れよ。治ると良いな、、」


兵「おのれ、、!!(く、こやつにトドメを刺そうにも両腕が動かぬ、、それより今は一刻も早く撤退せねば、、。致し方ない)」


全兵は全軍撤退の号令をかけ城へ戻った。

その姿をハクセイは最後まで見守っていた。


ハクセイ「バカが、、この時点で治療をしなければ俺の毒は絶対に治らない、、。お前が死ぬ事は確定だ。(最後にあいつを消せて良かった。)」


そして1人生き残ったハクセイは辺りを見回して涙を流していた。

「くそ、、くそ、、、!俺にもっと力があれば、、すまない、、ネロ、、みんな、、リラ、、」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ネロはハクセイから起こった事態を聞き、大粒の涙を流していた。


「ハクセイ、、お前のせいなんかじゃない。この事態を引き起こしたのは俺だろ?悪いのは全部俺だ、、お前は必死でリラを助けようとしてくれたんだよな?」


ハクセイはもう喋ることも出来なくなっていた。


「俺さぁ、ドルゲンのアジトに乗り込んだ時、初めは使い勝手の良い部下が出来れば良いって事しか考えてなかったけど、、お前は、、俺の、初めての親友になった、、」


必死に語りかけるが、ハクセイの手が冷たくなっている事にネロはすでに気づいていた。


「だからさ、、リラを連れ戻して帰って来るから、一緒にまた夢を見ような?」


ゆっくりとハクセイの体を横にするネロの目が闇に覆われていった。


「国王軍ーーーーーーー!!!!!!!!!!」


怒りの咆哮と共にネロは城へと向かった。


次回〜ネロ⑤〜


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ