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破国の召喚神   作者: 松本 豊
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〜出会い〜

レオンは見覚えのない部屋のベット上で目覚めた。


家の中で気を失ったはずだったが、知らない場所で目を覚ました事で

彼は未だ混乱の中にいた。


そして体を起こすとすぐに、次は聞き覚えのない声が耳に入ってきた。


「おっ、やっと起きたな! お前をここまで連れてくるのも大変だったんだぞ!」


声の方向には片目が隠れる程前髪の伸びた赤色の髪が特徴的な青年が立っていた。性別は声で分かったが、一瞬女性とも間違えてしまうほど顔と体型の整った人だった。


「お兄さんは誰?ここは?」


レオンの質問に青年は優しい笑顔は残したまま答えた。


「まぁ、そうなるよな。まずは俺の名前はヴェン!それで、ここはお前の家から南西に大きく移動した場所にある"俺たち"にとっての基地って感じかな。お前と似た境遇の人間が集まっている場所だ。」


「俺たち?それに似た境遇って、、」


まだ頭がぼんやりしていたが、続けて質問を投げかける。


「つまりは、、こんな事言いたくないが、お前の両親は昨日殺された。そして俺や仲間もそんなお前と近い経験を経た者なんだ。」


今も確かに目に焼き付いている両親の変わり果てた姿、マスク姿の謎の男、、あれは夢ではなかった。心のどこかで現実ではないと信じていたかったが、それが逃れようのない現実となった事で涙が止まらなくなった。


「悪かった。お前の両親までは救えなかった。だがこれは現実なんだ。今は、、泣きたいなら泣けばいい。」


ヴェンは先ほどの笑顔とは打って変わってこちらの気持ちを全て理解してくれているかのような、悲しい顔をしていた。


しばらく泣いた後、少し冷静になったレオンは再びヴェンに最大の疑問を問いかける。


「なんでお父さんとお母さんは殺されなくてはならなかったの?それに、あの時あの場にいたのは、、王国の兵だった。」


ヴェンは少し驚いたような表情で答えた。


「驚いたな。その事にすでに気づいていたのはお前が初めてだ。」


なぜすぐに気づけたかには理由がある。

レオンは日々悪に立ち向かう国王直下の兵団に強く憧れ、将来はその一員としてその証を手にする事が夢だったのだ。

父親もその夢を後押しするために小さいレオンを王国のパレードに何度も連れて行っていた。この経験から、目に入った王国の証を見落とす事などありえなかった。


ヴェンは続ける。

「その通り。お前の親を殺したのは国王直下の兵の一人だ。なぜそんな事をする必要があったか、答えは単純だ。国王はお前の両親を恐れたんだ。」


「王様が?、、どういう事、、」


「300年前、国王が国民に希能石の使用を許可した後にある事が起きた。」


「ある事?」


「あぁ、お前も希能石のもたらす能力が人によって違う事は知っているだろ?有名なのは火とかの魔法を出したり、飛べたりくらいなんだが。ただ、ごく稀に強大で特異な力に目覚めたものがいたんだ。」


「先生に聞いた事がある。神話に近い話だけど、天候を操れる人までいたって」


「そう。強大過ぎる力を持つ人間は思想一つで国を滅ぼしかねない。だから歴代の国王は考えた。悪の勢力の管理はできないが、国民の中で生まれた歪な力は早い段階から王の側近として雇用し管理しようと。そうして出来た国の掟に最初は皆が従っていたが、ある時ある噂が流れ始めたんだ。」


「噂?」


「おそらくどこかのタイミングから今まで、国王は連れて行った人間を殺害し処分していた。」


ヴェンから放たれた言葉にレオンは一瞬言葉を失った。


「そんな事、、なんでそんな噂が、、?」


「確かに当初は国王の側近になる者もいたらしい。しかし近年は城に連れて行かれた人間のその後の姿を見たものがいなかったんだ。さらに現国王は用心深い事で有名でもある事から、歴代の流れを引き継いでいる可能性が高い、、自分の近くにそんな特別な人物を置いていたとしても、いつか裏切られる事を恐れたんだろうと思うとこの行動は一応辻褄は合っていた。」


「でも、だとしてもなんでお父さんもお母さんも家で殺されてたの!?王国に連れて行く事もされなかった。」


ヴェンは何かを考えるように、少し間をおいてレオンの質問に答えた。


「、、、憶測に過ぎないが、それはお前の両親が城への"連行"を断ったからだろう。城に招かれたら家族ごと全員殺される。どうしてお前の父親がそれを知っていたのかは分からないけど、きっとお前をどんな危険からも守りたかったんだろう。」


「そんな、、なんで、、それだけで、、」


またしてもレオンの目からは大粒の涙が流れ落ちた。


「そして俺たちの調査で分かった事だが、今俺の言った噂はおそらく全て真実だ。過去に俺たちの仲間の力で城に呼ばれたある一家の魔力の流れを追ったんだ。しばらく監視をしたが、やはり城の中で反応が途絶えた。」


いくら特別な能力の保持者でも、己が信頼しきっている国の城内では油断から大きな隙が生まれる。そこで突如として城の兵団に囲まれては自分の置かれた状況に気づいた時には戦う前に殺されてしまうのだろうと続けてヴェンは教えてくれた。


「そして俺たちはお前と似た境遇、つまり理由はどうあれ親や兄弟を殺されたりした結果、1人ぼっちになってしまった者の集まりだ。そして、そんな俺たちはある目的の為に集まっている。」


「目的、、?」


「あぁ、今この大陸の現状を少しはお前も知っているだろう?まず近年、国王軍とネロの軍の2大勢力の対立が急速に強くなっている」


ネロの軍に関してはレオンもグレイから教えてもらった事があった。300年前に奇能石を初めて手にした"悪"側の人間、それが「ネロ」。

ネロを中心に集まった当時の"悪"達は国王直下の兵団をもってしてもその全てを防ぐ事が出来ず、破壊の限りを尽くしたが、突如王国陣営に現れた英雄ヘルツォークの命がけの奮戦によって戦力を大きく削られ、現在の均衡状態が作られたとされている。


レオンは答える。

「うん。長年大きな動きがなかったのに、近年ネロの軍勢がまた力をつけてきているって聞いたよ。そのせいでまたみんなの命が危ないって。だから、お父さんとお母さんはそいつらにやられたと思ってた。でも、、」


「あぁ、だが実際にお前の命を奪ったのは紛れもない王国側の人間だ。何も知らない国民は未だに王国に対して強い信頼感を持っているが、真実は自身に都合の悪いものは全て闇に葬るただの人殺し達だ。今後もしこの大陸で国とネロで戦争が起こったとして、どちらが勝ったとしても未来はないと俺たちは思っている。その中で俺たちは"第3の勢力"となり、そのどちらの力も牽制できる存在になりたいと思っているんだ。」


力強い目でヴェンは説明を続ける。


「だからこの話を知って、国に対してもネロに対しても屈しない思考と力を持った人間には俺たちの仲間になって欲しいんだ。俺たちが力を持った後は国ともネロとも争うつもりはない。ただ、真実を知った行き場のない者達が安心して暮らせる場所を作りたい。お前はどう思う?」


レオンはこの国の"裏側"で起こっていた真実を知った。

自分の両親が殺された理由もおそらく今ヴェンが説明してくれた通りだろう。

それにその事件を引き起こしたのは自分の憧れていた調査兵団によるものだった。

当初は家に戻りたいとも思ったが、両親の亡骸は国がすでに回収、隠蔽しているであろう事も察しはついた。

話を全て理解した時、自分は突如として帰る場所を失ったのだと痛感していた。


昨日までの国に対する憧れは、一転して憎悪に変わった。

しかし同時にレオンの頭には、信頼している兵団の人間の顔も浮かんでいた。


「ヴェンの話は、、分かった。そして僕にも出来る事があるなら協力したい。でもまずは友達の兵団のおじさんにも会ってこの話がしたい。」


ヴェンは少し考えてから話す。

「会って真実を確認か。どんな関係性であれやめておいた方がいいな。この事は多くの国民ですら未だ知らない"超極秘事項"だ。お前が生き残りだと分かれば、せっかく助かった命をまた危険に晒す事になる。」


少し考えた後、国王軍の闇を知った以上ヴェンの言葉の通り今は下手に動かないことが得策だと思った。


「、、、分かった、、」


ヴェンの忠告を受け入れたレオンであったが、もう一つ理解できない事があった。


「でも、最後に分からない事があるんだ。お父さんもお母さんもいつも希能石は身に付けていたけど王国に狙われるような特別な力はどちらにもなかったと思うんだ。」


ヴェンは少し驚いたような表情を浮かべる。


「家族のお前が知らないってのは不思議な話だな。本来王国に狙われるような強力な能力を持っていたなら、どこかで気づいたはずだ。現に王国側にもその存在を知られていたのだから。ただ、魔力を知る方法ならある。全てはお前次第だがな。」


次回:秘密




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