〜3日後〜
ーーードワーフ城より遠く南方の森ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(あ、起きた。)
レオンが目を覚ますとそこには一瞬時が止まってしまうほどの美女が顔を覗き込んでいた。
彼女の名はサラマンダー。ドワーフの城で一時覚醒したレオンが召喚した4大精霊の内の一人である。
その美貌にレオンの顔が赤らむ。
サラマンダーはからかうような笑顔で話す。
(はは!まだぼ〜っとするかな?ちょっと待ってて、"ゼン"を連れてくる)
そう言うとサラマンダーは部屋を出て行った。
レオン「ゼン?どこかで聞いたような、、」
しばらくすると、部屋にサラマンダーと一匹の老いたドワーフ族が現れた。
ゼン「やっとお目覚めか?で、お前さんがレオンか。こんな小僧が"神の力"をねぇ、、」
ゼンはレオンのベットに飛び乗り、その顔をじっくりと見つめた。
サラマンダー(私がここにいる事が何よりの証拠じゃない?それに私は安心してるよ、こんな良い子がこの力の後継者で!)
ゼン「サラちゃんにここまで言われるとは、大した器じゃな!で、どうする?早速クロノスの所へは行くのか?」
サラマンダー(う〜ん、そうだねぇ。時間ないし。)
レオンは思い出した。ゼンとはヴェン達に奇能石を埋め込んだ者の名前だった。
「おじいさん!もしかして、あなたはヴェンに強力してくれていたゼンさんなんですか!?」
「ほう!、、お前さん、ヴェンの仲間だったのかい?なら、尚更信用は出来るか、、それと、、」
突如ゼンが俯き体をぷるぷる震わせた。
「ワシはおばあさんじゃーーーーーーーーー!!!!!」
レオンの顔に強烈な蹴りが飛ぶ。
意識が再び飛びそうな中、レオンはハルがゼンじぃ様と読んでいた風景が脳裏に浮かんでいた。
(ハルも、、分かってなかったじゃん、、)
「う、、ごめんなさい、、でもお会いできて良かったです。」
「まぁ、もうこの歳になるとどうでも良くなってくるがの。で、レオン、ヴェン達は元気か?」
レオンはこれまでの経緯をゼンに詳しく話した。
「なるほどのぉ。よもやネロが出てくるとは、だがヴェンもハルちゃんも生きているならひとまずは良かった。それとレオン、お主の手術の件、すまなかった!連絡用の葉っぱ、最近全然見てなかった!」
サラマンダー(でもとりあえずは目に見えて奇能石の色の変化が分かるし、修行中はこの腕輪で良いんじゃない?よく出来てるし。)
レオンは2人が続けている会話にずっと疑問を抱いていた。
「あの、さっきから修行ってなんの話ですか?」
サラマンダー(あっ、ごめん言ってなかった。すごく簡単に話すからね。今から私とレオンは、ゼンがずっと管理してくれている洞窟の中にある時空の裂け目から時の神クロノスに会いに行く。あなたはそこで最大でこっちの時間で3日間、あっちの時間でいうと7年間修行出来るの。)
レオンは目を丸くした。
「そんな事が本当に可能なんですか!?」
サラマンダー(そ、これからは、、ハイクだっけ?あの程度ならまだ良いけど、かつてネロの軍もそうだったように精鋭達はきっととても強い。精霊の力って術者の魔力に比例して真価を発揮出来るようになるの。だからレオンにはその7年間で魔力を上げて、ネロに対抗出来る様に私達の力を最大限に引き出す為に頑張って欲しいってわけ。)
レオン「、、、達?」
レオンが小さな疑問を抱いたその時、外から大きな爆発音が聞こえた。
レオン「今の音は!?」
3人は慌てて家を飛び出す。
ゼン「遠くから煙が上がっている、、あそこは、、レオン!お前達の家ではないか!?」
その光景を見てレオンはとっさにある可能性を考えていた。
(ヴェン達が再び追っ手と戦闘を行っているかも知れない!)
そして頭には帰りを待っているポポの姿が浮かんだ。
レオン「ゼンさん!僕、行ってくる!」
ゼン「ま、待てレオン!あれは十中八九ネロの軍の仕業だ!今はまだ行くな!!」
ゼンの忠告を無視して走り出した。
サラマンダー(私が付いていく!無茶はさせないから安心して!)
サラマンダーも後を追った。
ゼン「お前も十分に戦えぬだろう!!く、どいつもこいつも、、」
遅れてゼンも武器を取り後を追った。
ーーー ヴェン隊の家付近 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もうすぐ家に着くという所でサラマンダーは突如レオンの口を手で多い草影に隠れる。
レオン(サラマンダー!?)
サラマンダー(し!誰かいる。)
サラマンダーは慎重にならざるを得なかった。もしかつてのネロの精鋭クラスが出てこればレオンを無傷で守りきる自信はなかった。
ネロの手下と思われる2人は漆黒の翼をはばたかせ、飛び立つ所であった。
2人の会話がわずかだが聞こえてくる。
???「全く、かったるい任務だったぜ。俺たちも城の方に回してほしかったな。」
???「ま、ガキの探索と無人の家の破壊なんて簡単な任務でも金は出るんだ。儲けもんじゃねぇか?」
???「しかし、あのクソ猿。最後まで抵抗しやがって。そんなにあのガラクタが大切だったのか?」
2人はそういうと東へ飛び立って行った。
サラマンダー(行ったね、、)
レオン「猿、、、? ポポ!!」
レオンは再び家に向かって走って行った。
そこには無残な家の残骸が広がっていた。そしてバラバラにされた武器のそのすぐ隣には、焼け焦げたポポの姿もあった。
サラマンダー(酷い、、、)
サラマンダーがレオンに目を向けると、ポポを抱え大粒の涙を流していた。
「ポポ、、こんな時には逃げてよ。僕が頼んだから、、僕のせいだ、、、」
後ろからゼンが遅れて現れた。
ゼン「レオン、、違う、、お前のせいの訳が無い。悪いのは全てネロとその軍だ。」
レオンは俯きポポを抱きしめながら、ゼンの言葉を聞いていた。
ゼン「ネロがかつての力を取り戻しているのが事実であれば、この苦しみはこの大陸中に広がる。しかし、天の計らいでそれに対抗できるお前という存在も同時に生まれた。これ以上の悲劇を阻止出来るのは、お前とヴェン達、つまり本当の正義を追い求めている者達しかいない。」
レオンは立ち上がり、近くの木の下に無言で穴を掘り、ポポを埋めた。
そして決意した目で振り返る。
レオン「ゼンさん、サラマンダー、、行こう。クロノスの所へ。強くなりたい。3城で殺された多くの仲間とポポの分も、、もう、こんな事絶対に僕が許さない!」
ゼン「(なんとも綺麗な良い目じゃないか、、)レオン、今はネロの活動に加え、王国にも不穏な空気が流れておる。混沌の世の中が訪れた時、その時はお前がこの世界を正しく導いてくれ。」
サラマンダー(私もレオンと最後までずっと一緒に戦うからね。)
レオンは空を見上げる。
(ヴェン、ハル、コルト、ミストラ、リンナさん、バロン、、みんな生きてるよね。絶対に強くなって、次はみんなの事も守ってみせる。だから、少しだけ待ってて。)
ーーー ゼンの家周辺 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゼン「では、準備は良いか?」
レオン「色々ありがとうゼンさん、みんなの事もよろしくね。」
ゼン「うむ、安心せぇ。」
ゼンは3日間で出来るだけヴェン達の行方を探してみるとレオンと約束していた。
レオン「後、もう一つだけお願いがあるんだ」
ゼン「? なんじゃ?」
レオン「ポポのお墓にメロンフラワーっていう果物をお供えしてほしいんだ?戻ってきたらあげるって約束してたんだ。」
ゼンはにっこり笑って答える。
ゼン「あぁ、ええよ。」
その言葉を最後にレオンとサラマンダーは時空の歪みの中に消えて行った。
2人を見届けたゼンは優しい笑顔で天を眺めた。
(なんとも不思議な少年じゃった。喋れるとはいえ動物が人間との約束を守る為に命を投げ出すとは、、、確かに強く協力したくなる様な魅力的な器の持ち主じゃった。)
すると先ほどまで厚く空を覆っていた暗雲の隙間から僅かに光が差してきた。
(頼んだぞ、レオン)
ーーー クロノスの異空間 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
到着したレオンは辺りを見回した。
そこは現実の世界と大きく変わらない、のどかな自然の風景が広がる場所だった。
しかし歪な点があった。上空には巨大な時計が存在しゆっくりと時を刻んでいたのだ。
レオン「ここが、、クロノスの空間、、?」
サラマンダー(久しぶりに来るけど、相変わらず何もねー)
しばらく辺りを見回した後にサラマンダーはある場所を指さす。そこには巨大な家があり、その前には遠くて詳細は分からないが何かが立っていた。
サラマンダー(で、あのおっきいのがクロノス。近くに行ったら本当に大きくてびっくりしちゃうよ!)
レオンは細目でクロノスを眺めた。
レオン「ん、なんか今そのクロノスさんが動いたような、、」
サラマンダー(えっ?)
次の瞬間大きな衝撃音が鳴り響いた。
レオン「え?今のって!?」
サラマンダー(そんな!クロノスが誰かと戦闘をしている!?)
サラマンダーはレオンを抱えて、急いでクロノスの元へ向かった。
上空から眺めると、そこにはクロノスと対峙する2人の影があった。
クロノス「おのれぇ女ぁ〜〜!まさか物体を遠隔で動かせる能力者だとは油断した!ワシの大事な杖を返さんかいぃぃ〜!」
???「ふふ、全く話を聞いてくれる気配もなかったのでな。これで少しは私たちにかまってくれるか?」
???「ちょっとリンナさん!手荒ですよ!!」
レオンは2人の正体が分かり、驚きの表情を浮かべた。
レオン「あれは!?リンナさんと、、ミストラ!?」
次回〜修行開始〜