〜終結〜
ーーードワーフの城ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「私は4大精霊の1人、サラマンダー」
突如現れた"それ"は両手広げるとレオンとハルを捕らえていたバリアーが溶けて消え、指から放たれた光はナイフを突きつけていたネロの兵を貫く。
そこで意識を取り戻したハルは落ちた腕を拾いヴェンに走って駆け寄った。
ハイク「こいつ、今何をした!?」
あまりにも一瞬の出来事にハイクは混乱していた。
その発言を気にするそぶりもなく、サラマンダーはレオンを見つめる。
(その腕輪が君の"ロマの結晶"なんだね。でも、まだ"緑色"の召喚士が私を呼び出す事なんて本来不可能なんだけどな)
レオンが自分の腕輪を見るとすでに虹色ではなく、緑色に戻っていた。
サラマンダーの声が届いたが、内容は理解が出来なかった。
(そっか、君たちはそれを"奇能石"って呼んでるんだっけ?でもその仕組みをまだ君は知らないんだね。)
その時ハイクは隙をついて最大威力のバリアーにサラマンダーを閉じ込めた。
「ふははは!何をよそ見している!?」
しかし、サラマンダーはハイクに目線を移す事すらせずにそのバリアーすらもすぐに溶かしてしてしまった。
「な、、!?馬鹿な!!私の最強のバリアーまでも一瞬で、、」
サラマンダーは辺りに広がるドワーフの死体を見回す。
(あの時のドワーフ達、、あの頃はたった10人ほどしかいなかったというのに、本当にあれから一生懸命頑張ったね。)
そのうちの一人に近づき、苦痛の表情を浮かべ死んでいったドワーフの目を優しく閉ざした。
(安らかに眠って、、私はあなた達が毎日一生懸命、私を大切に扱ってくれた事を忘れないよ。)
ハイクはその光景を黙って見つめるしかなかった。
「なんだ、何をしているのだ、、?(奴の力は未知数、片時も視線をそらす事は出来まい、、」
しかしその警戒とは裏腹に突如ハイクの左足が吹き飛んだ。
ハイク「!!!!???」
ハイクはとっさに後方に避難する。
(バ、バカな!俺は一瞬足りとも奴から目を離さなかった!!一体どこから!?)
その瞬間、サラマンダーがハイクの上空に一瞬で移動した。
目の前で繰り広げられる目まぐるしい展開にヴェン、ハル、レオンの3人は状況を把握出来ないでいた。
サラマンダー(私の可愛い、、小さな勇者達。この者は四肢を捥いだ状態であの世へ送る。そこで存分に恨みを晴らすと良いわ。)
ハイクの左腕も弾け飛び、次は場内にハンクの断末魔が鳴り響く。
サラマンダー(情けない男、、。自分が奪われる側になるなんて想像もしてなかった?)
ハイク「く、くそ、、(殺される、、この異常な力は間違いなく4大精霊!こんな化け物をレオンが呼び出したというのか!?どうすれば、、!)」
思考がまとまる前に右足も吹き飛ぶ。
ハイクの意識はすでに飛びかけていた
ハイク「(終わりだ。この世にこんなふざけた力があったとは、、全員、、撤、退、、)」
サラマンダー(もう終わりだね。、、)
その時、ハイクの倒れているすぐ隣から体中に漆黒の闇をまとった人物が突如現れた。
???「おっと!この男にはまだ使い道があるから死なせられないなぁ。いや〜、しかし面白い発見があった!やはり内緒でついてきた甲斐があったよ!」
レオンはそこで自分を捉えていたネロの兵がいなくなっている事に気づいた。
サラマンダー(私が気配に気づかないとは、、何者?)
???「そう怖い顔をするなよ精霊。久しぶりの再開だろ?」
そういうと男は仮面を脱ぎ捨てた。
サラマンダー(あんたは、、、ネロ!?)
予想外の敵の出現に今まで表情を変えなかったサラマンダーが明らかに動揺していた。
ネロ「驚いたか?でも正真正銘本物のネロだよ。その節は世話になったな。お前達4大精霊が俺を封印してくれてからこの時をずっと待っていたよ。」
サラマンダー(そんな、、、あの結界を解いたっていうの!?)
ネロ「ふふ、悪いがお前の言っている事は俺には理解出来ないよ。だから、そこのレオンという少年でも拐ってあとでゆっくり訳してもらおうか?」
ネロがレオンに目を移すと場が禍々しい空気に包まれた。
ハル「レオン!(息が苦しい、、これが、、ネロ?でもネロなんて今は名前だけが残っていて、本人は大昔の人間のはず!)」
ネロ「はは、冗談だよ!生憎まだ体調は万全ではなくてね。そんな状態でかつての伝説の力と"2つ"も同時に戦う事は流石にしない。」
ネロはヴェンに視線を移す。
「なぁヴェン?俺は君の力も見てみたかったよ。かつてヘルツォークと共に我々を壊滅に追い込んだ憎きデイダラボッチの力をね。それに君は俺と同じにおいがする。この状況では使えなかった"何か"奥の手をまだ隠してそうだね。例えば、使えばこの場の者を見境無く殺してしまう力、、、とか?」
ヴェンは自分の行動の全てを見透かされていた事に驚きを隠せなかった。
「(ネロ!?一体なんなんだこいつは!?)」
ネロ「まぁ、結果として2人は生きていて、"俺達"は撤退するんだ。良い判断だったと思うよ。」
ハイクを抱えたネロに漆黒の闇の翼が生える。
「もう一度あの時代の役者が揃いそうだな。簡単に世界を手に入れても面白くない。今回こそお前達を皆殺しにし、完全にこの世界を闇で覆ってやる。」
そういうとネロを天に向かって飛び立つ姿勢をとった。
「じゃっ、帰るよ。」
そこにサラマンダーが立ちはだかる
(この機会を私が逃すとでも思った?)
ネロは笑みを浮かべながら話す。
「無理をするなよ4大精霊の一人、炎のサラマンダー。呼び出した主があれでは、もうすでに力の半分も出まい?また戦いたければ主人の覚醒を待ち、残りの3精霊も呼んでくるんだな。」
サラマンダー(、、やっぱりそこも全てお見通しか、、)
「そう遠くない未来にまた会えるさ」
再び不敵に笑ったネロは飛び立ち、それと同時に他城の部下に念で指示を出した。
「ネロだ。お前達、とりあえず一時撤退だ。すぐに俺たちの城へ戻ってこい。」
ーーー リンナ・バロン 狼人の城ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ルードはネロからの指令を受け取った。
「"私たちの"城へ撤退?ハームリックには行かないの?でも分かったよ!こっちもやっと終わったから、、、」
通信が終わった後、戦闘の終わった場内を天井から見渡した。
「結局なかなか楽しいショーになったね。」
そう言うと隣の狼人の背に乗り、天井から下へ降りた。
「こいつは狼人族の中でも神童と呼ばれ、あのヴェンの隊の中でも特に重要な任務に当たっていたという核の人物とハイクは言っていた。さすが想像の何倍も強かったな。こっちの残りはもう10人にも満たないね。」
周りにはおびただしい数の狼人の屍が転がっていた。
城中に飛び散る血の光景はまさに地獄絵図であった。
「でも、こんなバラバラになるまで死ななかったなんて、、よっぽどリンナさんを守りたかったのかな?それとも別の何か、、、。」
「、、、まぁ、どうでもいっか!」
ルードが指を鳴らすと、残った奴隷の狼人は全て爆発して消え去った。
「はははははは!!!!こんな気持ち悪い奴隷はいらなーい!それより早く帰ってギルスから魔女の城の"お土産"をもらおうっと!」
ーーー 狼城の周辺 ファド遺跡 ーーーーーーーーーーーーーーーー
古の狼人の像に取り囲まれるように、長い髭を蓄えた男の像が立っている。
バロン本体が生き絶える少し前、リンナとバロンの分身はここに行き着いていた
リンナ「く、なぜだバロン。なぜ私も戦わせてくれなかった、、?」
バロンの分身少しずつ透明になっていった。この分身はバロンの意思で解除するか、もしくは術者が死ぬ事で消え去る。
バロンの分身は最後に答えた。
「リンナ、、オレタチ、、、キットマケテタ、、、ネロノグン、、トテモツヨイ」
リンナ「奴が強いのは分かっている!だからこそお前一人で残るなど無謀だ!」
リンナの目からは涙が溢れる。
バロン「コレカラ、アイツラト、、マタ、タタカウ、、ツヨクナル、、リンナ、、、」
そういうとバロンは男の像を指差す。
「ジカンガナイ、、アノゾウ、、ウカシテ、、、」
リンナは言われた通り像を持ち上げると、像の下には時空の歪みが現れた。
リンナ「一体これは、、?」
眺めるリンナをバロンは再び持ち上げ、その穴へ投げ込んだ。
リンナ「バロン!何を、、!?」
バロンは笑顔でリンナに伝える。
バロン「リンナ、、アリガトウ、、」
そのままリンナは穴に吸い込まれいなくなった。
その後、最後の力を振り絞って銅像をもとの位置に戻した
バロン「コレデ、、イイ、、」
バロンはこれからの展望も悟っていた。
(読みが甘かった。ネロの軍、思ったよりもっと強い。そして、迷いのない残忍さだった。あの暴力を野放しにする事は絶対にあってはならない。だが、あのクラスがまだ他にいるのであれば戦争になった時に対抗する術がオラたちにはない。つまり夢の実現の為には一人でも多く奴らに対抗するより強大な力が必要だ、、何より誰か一人でも生きていれば、夢はまだ繋ったままだから。)
そして銅像を見つめる
(ここは狼人族でも一部しか知らない神聖な場所。みんなはオラ達と同盟を結んだとしてもここだけは絶対に使わせてくれなかっただろうな。確かに無闇に使う場所ではないが、でも最短で強くなるにはここしかない。"時の神クロノス"どうかリンナを、、、)
バロンの分身の体はもう消えかけていた。
「ミンナ、、、ドウカ、、ブジデイテクレ、、」
バロンは最後に皆との記憶を思い出していた。
「フフ、、、、マタ、、、ミンナト、、、、」
優しい笑顔のバロンの分身は風とともに消え去った。
ーーー コルト・ミストラ 魔女の城 ーーーーーーーーーーーーーー
コルトは周りを何度も繰り返し確認していた。
コルト「あぁ!?ここは、、ハームリック城!?、、なのか!?」
???「コルト!!」
コルトは振り向く
コルト「えっ!?アンジェ!?こんな所で何やってんだよ!」
アンジェ「何寝ぼけてるのコルト?これから大事な結婚式でしょ?」
コルト「へ?、、あ、あぁ!そうだった、、っけな?」
アンジェ「しっかりしてよ!それよりリンナさんの作ってくれたあなたの衣装、とっても良い感じね!」
気づくと鮮やかな宝飾が施された服に身を包んでいた。
コルト「そうか?俺の好みじゃねぇよ。」
アンジェ「ふふ、そういえば、昔あなたに作らされた服はとっても面白かったわ。今日着るのがあの服じゃなくて良かった。」
コルト「は!?お前、そんな風に思ってたのかよ!でもレオンとミストラはカッコいいって、、、あれ?そういえばあいつらは?」
アンジェ「もう先にこの扉の先の会場にみんないるわ。早く行かなきゃ。」
コルト「(、、そうか、あの後俺はあの仮面野郎をぶっ飛ばして、、、その後みんなで合流して、ハームリックを取ったんだったな)」
コルト「へへ、やったなヴェン!俺たちの夢、やっと叶ったな!」
笑顔で空を見上げると、そこにはかつて狂獣と呼ばれ深い闇の中にいたコルトがヴェンという光と初めて会った時と同じ雲ひとつなくとても気持ちの良い青空が広がっていた。
アンジェ「コルト」
コルト「んぁ?」
アンジェ(、、、ありがとう、、、)
アンジェの笑顔を優しい光が包んだ。
これがみんなが望んだ世界、、、夢の世界、、。
しかし次の瞬間コルトの目の前は真っ暗になった。
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ギルス「即座に撤退だぁ!?どうなってやがる!(マズイな、、ミストラとかいうガキをまだ見つけに行けてねぇぞ)」
「、、だが、ネロからの命令を無視はもっとヤベェか、、、」
傷だらけのギルスは呟きながら城内を見渡す。
「どれもこれもこの化け物のせいだ、、、あれだけの毒と致命傷をくらったただの人間のくせにこれだけ暴れやがって、、体中が痛ぇ、、」
ギルスの背中から漆黒の翼が生え、上空へ飛び去る。
「この体で首二つを持って帰るのは重てぇなぁ、、、くそ、!!」
次回〜召喚神〜