〜撤退戦〜
ーーーリンナ・バレン 狼人城ーーーーーーーーー
リンナとバレンは城内に入ると、そこには驚愕の光景が広がっていた。
リンナ「狼人族同士で戦っているだと?」
バレンは視線を上に移す。
バレン「リンナ!、、ウ、ウエ!!」
リンナ「あぁ、これはあいつが操っているようだな、、」
天井付近の柱に緑色の仮面をつけたコートの女が座りながら戦況を見つめていた。
仮面の笑っている表情と同じ笑みが仮面の下に広がっている事は容易に想像出来た。
リンナ「今日はあんな奴を呼んだ覚えはない。ご退場願おうか。」
リンナは落ちていた剣を能力で扱い敵を貫こうとしたが、狼人の一人がそれを身を呈して守った。
リンナ「、、、!?」
仮面の女「ははは、危ないな!リンナさん?だったよね!後、お隣の一際大きい狼人はバレンさんだった?」
リンナ「なぜ我々を知っている!?」
仮面の女「まぁまぁ!とりあえず挨拶くらいさせてよ!私はルード、ネロの軍勢に所属してる!」
「!?」
リンナとバレンは敵の素性を知って驚愕した。
リンナ「では、ハイクの悪い予感が当たったという事か、、しかし、地上からネロの軍が迫っている気配などなかった!だとすると空からだが一体あのバリアをどうやって搔い潜った!?」
ルード「ははは!そんなの、そのハイクさんが入れてくれたに決まってるじゃん!2人の事もハイクさんからみーんな聞いてるよ。」
リンナ「何だと!?」
バレン「ハイク、、?」
リンナとバレンの思考は数秒だったが完全に停止していた。
その意識を再び戻したのはルードの一言だった。
ルード「はは!驚いてる驚いてる!そんな事よりたった今僕の軍が完成したから戦おうよ!」
気づけば辺りは多くの狼人族に囲まれていた。その狼人達の体は不気味な光の線で繋がれており、その顔に生気はなかった。
ルード「私は隠し事が嫌いなんだ!私の能力は"同調"。私が最初に殺して能力で操った最初の者が次の者を殺せば私の支配は数珠つなぎのように広がっていく。こんな風に30体を限度にね。どぉリンナさん、あなたの能力で扱えそうな武器がたくさん転がっているし、良い勝負になるんじゃない?」
広い場内の至る所に刺さっている戦闘で使われていたであろう武器は確かに戦いに有利に働くとリンナも考えていた。
じわりと迫り来る敵を前にリンナとバロンは臨戦体制に入った。
ルード「それから、バロンさんの能力も見てみたいな。」
バロン「、、、(本当に全部知ってるだか、、。)」
バロンが静かに目を閉じると、体が青いオーラに包まれる。そしてそのオーラはみるみる内にもう一人のバロンとなった。
ルード「それが噂に聞くあなたの能力"分身"ですか〜。すごい、本当に本物と同じなんですね。これであなた達は3人ですか。」
しかし戦局はまだまだ不利であった。一人一人が高い戦闘力を誇る狼人の相手だけでも苦戦は必死な上に、最後には戦闘力が未知数の仮面の女と戦わなければならないのだ。
リンナ「何とかして奴を叩けば、この能力も消える。奴が自身の周りを狼人兵で固めている事からも間違いないだろう。私が一撃で仕留める故、バレンは何とか奴の隙を作ってくれ。」
バレン「、、、」
ルード「作戦会議は終わった?じゃ、そろそろ始めよう。」
合図と共に、狼人達が一斉に動き始めた。
リンナ「来るぞ!!」
その時だった。バレンの分身がリンナを抱えて城から脱出し、すぐに森の中へ逃げ出した。
ルードは完全に虚をつかれた形となり、その行動を見送るしかなかった。
森を逃走する中、リンナは分身に向かって怒号を飛ばす。
「何のつもりだ!降ろせ!く、、バロン、今すぐ引き返せ!」
バロンは何も話さずに森の深くへ進む。
一方場内ではルードが残念そうにただ一人残ったバレンの本体に話しかけていた。
「まさか戦いもせずに逃げ出すなんて、、、あの噂のヴェンの軍団の一員ともなれば、すっごく楽しめると思ったのにな。」
分析力に長けるバレンはそのまま戦っていれば2人共敗北する事を悟っていた。夢の実現の為、絶対に全滅だけは避ける事を最優先事項だと判断したのだ。
ルード「そうか、あなたは人間の言葉は話せないか。残念だな、何でこんな馬鹿な真似をしたのか聞きたかったよ、、。」
バレン「、、、?」
喋りながら徐々にルードの雰囲気が変わっている事にバロンは気づいていた。
ルード「私、ここで楽しい戦いが観られる事がずっと楽しみだったのにな、、、どうするの、、?私のこの気持ちをどうしてくれる!!?この醜い化け物がぁぁーーーー!!!!!」
バレンはルードの禍々しい威圧を受け、自身の判断が正しかった事を確信した。
(こいつはやはり普通じゃねぇ、、!リンナ、上手く喋れなくてごめんなぁ、、、オラ達はお城をもらう前にやる事があるみたいだ、、)
ルードは自分の操り人形となった狼人に向かって大きな声で叫んだ。
ルード「おいこのクズどもーー!さっさとあいつを殺せ!あいつは奴隷にもいらねぇ!ぐちゃぐちゃにして女を追え!!」
バレンは心を決めた。
(リンナが"あの場所"に辿り着くまで、こいつを足止めする!それがオラの最後の仕事だ。)
バレンはここ数日間の出来事を思い出していた。
(みんなと過ごして楽しかったなぁ、、せっかくレオンと出会えて、これからもっともっとみんなと話す事が出来ると思ってたのになぁ、、)
そして落ちていた矛を手に取り、渾身の力で狼人に斬りかかった。
(ごめんなみんな、痛かったら許してくれよ。オラ達の夢が叶ったら、みんなもずっと一緒に笑って暮らせたのになぁ)
(なぁ、、そうだろ?、、ヴェン、、みんな、、、)
次回:〜ミストラ〜