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トラック強襲

予定通りトラック強襲があります

 零戦七十五型は十八年冬から徐々に前線に配備され始めた。皮肉なことに零戦を置き換える予定だった紫電は零戦各型と供に前線から引き揚げられ始めた。

 また日本は、占領地で在ったラバウルは敵中に孤立しつつ有るとして放棄を決断。数々の武勲を重ねたラバウル海軍航空隊はここに消える。

 戦略上の要衝で有ったラバウルは米軍の監視が厳しく大規模な撤退をどう隠すかが問題となった。

 ラバウルの前哨基地としてブインとラエが有るがどちらも空襲で機能しなくなっていた。これらの基地に対する補給と見せかけて撤退作戦が行われた。

 ビスマルク海に機動部隊を展開、囮として使い作戦は成功した。

 だが、この囮作戦は次回ラバウル撤退作戦には使えない。柳の下の泥鰌は居ない。泥鰌を掬おうとするような作戦を考え出す人間は既に軍令部から追い出されている。艦隊側でも同様だった。まあ多少は残っているが。

 そのためブインとラエからの撤収は一時的な戦力の結集であり、再度進出するという印象を付けその隙にラバウルから撤収するという作戦が考えられた。

 ラバウルには陸軍二個師団、海軍陸戦隊二個連隊が駐留しているが、最も重要なのが陸海の熟練搭乗員と熟練整備員であった。


 暗号は解読を恐れ、真の作戦内容は連絡機を使って文書で手渡しすると言う迂遠な方法をとった。暗号電文には八割のウソと二割の事実が混ぜられていた。

 暗号電で送られた作戦内容は

『ガダルカナル島を攻略するためにラバウルの陸上戦力を引き抜き転用する。空母機動部隊にてガダルカナル島飛行場及び航空戦力を無力化。ポートモレスビーはラバウル海軍航空隊の全戦力で壊滅させる』という、派手派手しい作戦だった。如何にも日本軍が好みそうな二正面だが片方は囮作戦である。

 ラバウルの陸上戦力を引き抜くのは事実だった。陸軍はニューギニア西部へ、海軍陸戦隊はトラックへと向かうのだが。


 空母機動部隊は輸送船を護衛しつつラバウルに向かう進路を取った。機動部隊がラバウル沖を遊弋しつつ輸送船に陸上戦力を乗せるのを爆撃で確認した米軍は暗号解読に確信を深めた。

 この時の交戦で輸送船一隻が沈没。航空機八機の損害が出た。敵は十数機を撃墜となっているがいいところ半分だろう。


 翌日、ポートモレスビーが百式司令部偵察機の偵察を受ける。日本軍の攻撃前に必ずやって来るこの高速偵察機は厄介な存在だったが、攻撃が近いことも知らせてくれるのだった。

 ガダルカナルもポートモレスビーも日本軍からやって来るならわざわざ攻撃に行かなくても迎撃して戦力を減らしその後攻撃するという待ちの姿勢を取った。

 

 米海軍空母機動部隊は日本海軍空母機動部隊を殲滅すべくガダルカナル島南西サンタクルーズ沖で待機していたもののさっぱり潜水艦による哨戒網にもガダルカナル島からの航空偵察にも掛からないことを不思議に思った。まさか北から来るのかと偵察機多数を出すも発見できず。

 その頃日本海軍空母機動部隊はラバウル北方を遊弋していた。撤収する陸上部隊の援護のためだった。対潜哨戒のため多数の艦攻艦爆を出している。潜水艦二隻撃破の知らせもあった。

 一時的にラバウルに集結した陸攻や大艇は残った整備員などを乗せるためで攻撃のためでは無かった。搭乗員は護衛を兼ねて航空機で撤退を支援する。

 この大編隊は一時的にラバウルから進路を南に取りポートモレスビー攻撃を匂わせた。ただ陸攻や大艇はその後進路を北に取りトラック島へと向かった。それに続いて戦闘機隊も進路を北に取った。

 撤退は成功のうちに終わった。重装備は持って帰れなかったが人員の撤退が成功したことは後の戦力の維持にも繋がった。


 ラバウルからの撤退を知った米軍司令部は荒れ狂ったという。これが後のトラック強襲に繋がっていく。



 零戦七十五型の大々的な実戦デビューは十九年二月のトラック強襲だった。当時トラック島には零戦七十五型の他雷電二十一型、二十二型が配備されていた。

 雷電二十二型は火星発動機に二段二速過給器を装備した機体でP-38と高度六千メートルを超える高空で互角以上に戦えた。

 ラバウル発のトラック空襲は雷電二十二型の配備と供に損害が増しており、更にラバウルが常に火山の降灰に悩まされているため戦力の維持が難しかった。砂漠フィルターを使うことでかなり戦力の維持が楽になったが性能低下にもなった。そのため余計に迎撃を容易にされてしまった。

 このため米軍が陸軍航空隊単独でトラックの戦力を奪うことは無理とし、海軍にトラックの日本軍戦力を壊滅させようとした。

 何故陸軍航空隊かというと、ニューギニア沿いに西進する米陸軍にとってトラックは邪魔だったからであり、陸軍航空隊のみでの無力化にこだわったためだ。また、マリアナ諸島攻略後の日本本土空襲に対するモデルケースとしても見ていた為だった。



 日本海軍は増大する無線情報の中から有効な部分を抜き取り、トラック空襲間近と考えて在地戦力強化と温存していた機動部隊を当てることになった。

 期待の新鋭装甲空母大鳳は、進水後揮発油タンク周辺の構造的欠陥が見つかり再度ドック入りして工事中である。これは揮発油タンクと船体側配管に余裕が無く振動で配管に亀裂が入るという危険な欠陥であった。


 機動部隊は正規空母四隻、改造空母四隻の空母八隻という日本空母戦力全部と言っても良かった。

 そこに秋月級十隻を航空戦隊として組ませた。正規空母との航空戦隊で改造空母には量産が始まった松型八隻が当てられた。

 機動部隊旗艦は大和であり、その威容で敵航空戦力を引きつけるという役目も持っている。僚艦の武蔵はトラックまで来る途中で雷撃を受け内地に帰った。

 戦艦は大和と金剛・霧島の三隻で第一航空戦隊の正規空母四隻の直衛とした。長門・陸奥と伊勢・日向は改造空母四隻で構成される第二航空戦隊の直衛だった。

 正規空母は一航戦の瑞鶴・翔鶴、二航戦の加賀・蒼龍の四隻で構成される。改造空母の四隻は四航戦が飛鷹・隼鷹、五航戦が瑞鳳・千歳で構成される。改造空母の四隻は頑張って露天繋止までしても百八十機までしか積めなかった。一航戦は露天繋止をすれば三百機を超える。他に各艦に補用機が有るがこれは分解して収容し組み立てる補充機扱いで有り、即用出来ないため一次攻撃の戦力に含めてはいけない。 

 八隻合計五百機近い戦力は凄いと思われるが、予想されるアメリカ海軍はエセックス級を主力とする機動部隊であり、エセックス級六隻、インディペンデンス級軽空母六隻と予想され搭載機数は八百機近いと推定される。


 まともに渡り合える戦力では無かった。

 為にトラック島の航空戦力の陰からアメリカ海軍機動部隊に襲いかかるしか無いのであった。

 連合艦隊ではトラック島の維持は不可能と考えており、この会戦後マリアナ諸島まで後退する気でいた。

 これに軍令部が反対、陸軍もトラックが米軍の手に落ちればニューギニア戦線が危険になるとして反対した。

 作戦実施日というかアメリカ軍の襲来まで時間が無いのに無断な時間を潰したと後年ぼろくそに言われる。

 結局艦隊にやれたのはトラックの重油タンクと揮発油タンクを空にすることくらいだった。揮発油タンクは実働部隊数会戦分は残したのであるが。

 襲来までの間、せっせと飛行機を運んだのは改造空母四隻と特設航空機運搬艦だった。一航戦はこれら空母の搭乗員も纏めて訓練に参加させていた。

 トラック基地の航空機は戦闘機が主力となっていた。陸攻での艦隊攻撃は既に風車に立ち向かう蟷螂の斧のごとしであり、陸攻は哨戒に使われるだけだった。

 結局、襲来までに陸攻の他、戦闘機各種五百機余りと新司偵二十機、天山六十機、彗星八十機を揃える事が出来た。

 戦闘機は陸軍が鍾馗八十機のみで環礁の外には出ないという条件で迎撃を任せることになった。何しろ洋上航法が出来ないので島が見える範囲だけしか飛べなかった。

 海軍は雷電二十一型二十二型併せて百二十機余りであり、残りの三百機のうち二百機が零戦七十五型であった。百機は五十二型各種である。

 これでようやくアメリカ海軍機動部隊と互角になっただけであり、ラバウルから間違いなく間断無い空襲がある分不利であった。


 二月八日にラバウルからの定期便を撃退した後、すぐに次の梯団がやって来た。電探にははっきりと写っている。

 始まったと判断したトラック島の三航艦司令部は直ちに連合艦隊に連絡、これを受け第一機動艦隊に出撃命令が下る。

 雷電各機は燃料弾薬とも残り少なく補給のために降りてきている。零戦七十五型が上空哨戒中の機体も含めて迎撃に出る。

 機数はP-38、B-17、B-24合計六十機と少ないが、五月雨式にやって来て基地機能を麻痺させる気だろう。そこで機動部隊の出番と言うことだ。

 爆撃高度は八千であり零戦がいくら新型の七十五型と言えP-38の相手は不利だった。そこへ陸軍の鍾馗が突っ込んできた。思わぬ伏兵に護衛体制が崩れる。そこで七十五型が爆撃機に攻撃を始めた。

 損害は飛行場が一ヶ所一時閉鎖され駐機してあった天山六機と彗星四機が使用不能になった。空戦では零戦三機が被撃墜。搭乗員は強化された防弾のおかげで無事だった。礁湖に落下傘降下して救助されている。他に被弾した機体が十機ほど出たがいずれも修理可能であった。

 与えた損害はP-38撃墜一撃破二、B-17撃墜一撃破三、B-24撃墜二撃破三と言う内容だった。これはトラック島から見えており誤認の可能性は無かった。ただ撃破は煙を吐いたという程度であり、頑丈な米軍機ゆえにラバウルまで持つ可能性は高かった。現実にはP-38二機とB-17一機が途中不時着救助されていた。

 

 その日の夜、不思議なことにラバウルから夜間空襲がやってこない。ラバウル-トラック間に大規模な雨雲が発生。居座っているらしい。九日の朝、哨戒機によって見つけられた。まさに天佑である。


 九日の夜明け前、トラックから南東三百五十海里の海上に敵機動部隊が発見された。電波管制を行っており、最新の逆探を搭載している哨戒機には反応が無かった。哨戒機も自機位置の特定を防ぐため電探は使っていない。発見したのは哨戒中の呂七十八潜だった。トラック島配備の哨戒潜水艦である。呂七十八潜は直ちに通報を開始、同時にヒ連送の発信を始めた。

 ヒ連送を傍受した哨戒機は変針して電探を作動、敵艦隊らしき反応を確認。こちらも通報を始めた。

 敵機動部隊は電波管制を解除、大量の電探波が観測されるもすぐに妨害電波によってこちらの画面は真白になってしまった。通信は位置情報は届いたはずだ。後は敵機に注意して機動部隊に張り付く事を決意した。多分無事な生還は望めまい。呂七十八潜も同じ気持ちなはずだ。

 

 敵艦隊接近の報を受けた三航艦司令部は陸軍から借りている新司偵を投入。三型に試験的に風星発動機を搭載した機体で公試状態の全速は六百五十km/h出る。四機を第一次索敵として発進させた。

 新司偵は見事敵艦隊を発見。三群の機動部隊で正規空母七隻、軽空母四隻、戦艦四隻、巡洋艦他多数と発信。

 これを受け三航艦は対艦攻撃を迫る四三三空に対して空中退避を命令。どう見ても三百機以上で迎撃されそうな艦隊へ護衛を付けても艦攻艦爆合わせて百機で如何するのだと言って無理やり退避させた。彼等の出番は追撃戦の時であり今では無い。第一下手をすれば出撃準備中に敵がやって来る。 

 電探装備の陸攻二機には空中管制を命令する。護衛として一機に零戦四機を付ける。この零戦は長距離仕様だ。


 同日午前七時三十分トラックの電探が大編隊をトラック西方百海里に探知。推定四百機近い。既に戦闘機は発進準備を完了している。零戦から発進を始め遠距離迎撃を行う。上昇力抜群の雷電と鍾馗はもう少し後で発進する。 

 まず、管制された零戦七十五型が四機編隊でバラバラの方向から時間差で迎撃を行う。一航過のみで反転攻撃は行わない事を徹底されている。

 これにより編隊を崩される攻撃隊であるが数が多いのでほとんど崩れない。ただ今までなら容易に追いついて射弾を浴びせることが出来た零戦が追いつけないのだ。次第に護衛戦闘機はムキになって追い始める機体が増える。

 更に迎撃を加え編隊がある程度崩れたところへ零戦五十二型が突っ込む。狙いは艦攻艦爆のみだ。

 それを阻止しようとするF6Fと一航過して追いついてきた零戦七十五型と戦闘になる。今度は航過せずに食らいつく。

 見た目で百機くらいは削れた頃、トラックが見えてきた。今度は高空から雷電が被ってきた。F6Fを狙い撃ちにする。二十ミリ四丁はさすがに分厚い防弾を誇るF6Fでもたまらない。更に編隊が崩れたところに今度は鍾馗が逆落としに突っ込んできた。狙いは艦攻艦爆だ。

 それを何回か繰り返している内にトラックが爆撃を受けた。もちろん対空砲火も激しい。環礁内には囮として使用に耐えない旧式の商船や旧式駆逐艦を浮かべてあり、見事に引っかかる。  

 第一次攻撃が終わった。

 撃墜百五十以上撃破二百とか言っているが当てにはならない。いいとこ半分以下だ。

 こちらの損害は被撃墜四十八機、損傷五十六機。地上被害は飛行場二ヶ所が使用不能、地上で三十機が撃破された。半分は木のダミーで残りは使用に耐えない機体だった。他対空砲陣地数カ所が潰された。

 第二次攻撃隊はやはり同規模で発見された。戦闘機の燃料弾薬の補給が間に合いそうに無い。中には規定の補給を待たずに離陸していく機体もある。一番遠距離で迎撃するのだろうか。大丈夫だろうか。


 味方の第一機動艦隊は無線封止していてどこにいるか分からない。予定ではトラック西方に来ているはずだ。

 敵の第二次攻撃隊は第一次攻撃隊と同じように迎撃を受けるが今度はムキなって追いかけてくる機体が少ない。そのため中々編隊が崩せない。

 今度は押され気味でトラック上空まで来てしまった。だが、そこに上空から零戦七十五型が百機以上降下攻撃を掛けてきた。

 どこの所属は分からない。マリアナから来たのだろうか。だが一気に増えた味方機によって敵編隊は崩れた。後は乱戦だった。

 敵第二次攻撃隊はたいした成果も無く帰っていった。第三次攻撃は無いかあるいは小数機だとして追撃を掛ける。

 敵に与えた損害は撃墜二百三十機以上撃破二百機以上と来襲した機数を上回っている。撃墜百撃破百とした。

 こちらは被撃墜五十二機、損傷四十三機、地上で撃破された機体二十五機だった。これは補給が間に合わなかった機体である。滑走路の被害は少なく使用不能な滑走路は増えない。

 増援の機体は第一機動艦隊から来た機体だった。甲板繋止までして持ってきた零戦はトラックに降ろした。

 敵の第三次攻撃隊がやって来た。今度は機数が少ない。二百機程度だろう。こちらも相次ぐ激戦で使える機体が減っている。迎撃に上がれたのは百六十機だった。中には被弾痕のある機体も混じっている。増援の機体も入っている。

 相手の機数が少なく集中的に艦攻艦爆を狙うことが出来た。ほぼ有効な投弾をする事無く帰って行った。

 もう出鱈目な戦果は半分として処理をする。それでも八十機程度撃墜になってしまった。


 新司偵による索敵で敵機動部隊は三群に分かれている事が分かっている。距離はトラック東方二百十海里だ。

 第一機動艦隊はトラックの三航艦と共に一つの機動部隊を集中攻撃することにした。


 時間的には一回しか攻撃隊を出せない。敵の四次攻撃があるとマズいが思い切って三航艦の基地航空隊から零戦七十五型八十機と天山五十機・彗星六十機を母艦航空隊と共に敵機動部隊攻撃に向かわせることになった。

 攻撃隊は三航艦も一機艦も天山は全て雷装、彗星は五十番装備だ。零戦は遠距離仕様である。

 合わせて零戦二百七十機、天山百二十機、彗星百六十機の合計五百五十機という日本海軍史上最大の攻撃隊だった。

 偵察機からの報告では敵機動部隊は東へと進路を取った。一時退避するようだ。思ったより艦載機に損害を与えられたのかも知れない。



 アメリカ海軍機動部隊では艦載機の損害が思ったよりも多く、一時後方に下がり機材やパイロットの補充をする事に成った。

 三次にわたる攻撃で滑走路を四本潰し、船舶も三隻撃沈、地上で航空機九十機余りを撃破。更に迎撃に出た戦闘機を五百機近く撃墜破している。もちろん司令部は話半分でよく有る誤認だろうとしたが、それでもトラックにある戦闘機の大半を潰せたはずだった。

 こちらは戦闘機五十機、艦攻七十二機、艦爆五十五機が未帰還と言う大損害だ。さらに帰還した機体の内百二十機余りが被弾しており、そのうち四十機が修理不能という。日本は艦攻と艦爆を集中して狙ってきたという報告も届いている。第三次攻撃隊はまだ帰還していないが更に上積みされるだろう。

 やり方は戦闘機が護衛戦闘機をチクチクと攻撃して剥がしそこに別働隊が突っ込んでくというやり方だという。

 奴らもレーダー管制を始めたらしい。

 気になるのは戦闘機だ。去年F6F導入後は楽に勝てていたゼロが高性能になったらしい。速度がF6Fと変わらないし、防弾されているという。 


 そこに敵大編隊接近と報告が上がる。距離は空母から百二十マイル。外周に配置した警戒艦から通報が来た。少しして戦艦のレーダーでも探知された。上がれる戦闘機は全部上げろと各母艦では懸命に作業が行われる。だが、まだ第三次攻撃隊が帰還していない。第三次攻撃隊には燃料に余裕があれば百マイル後方の護衛空母部隊まで飛べと指示を出す。余裕が無ければ付近で空中退避をしていろと。

 護衛空母部隊には戦闘機を速やかに応援に出すよう命令をする。多分間に合わないだろうがやれることは全部やる。


 敵編隊の一部が速度を上げたと報告がある。三百マイルまで上がったようだ。高度も一万六千フィートまで上がったという。戦闘機だろう。直衛機が向かっているが数が多い。妨害が関の山だろう。


 高度と速度を上げたのは一機艦の戦闘機隊と彗星だった。彗星は戦闘機並の速度が出せる高速艦爆だ。その後高度二千メートルにはやはり一機艦の戦闘機隊と天山がいる。その後五十キロほど後方に三航艦の攻撃隊だ。

 雷爆同時攻撃をしたかったのだが、敵に時間的余裕を与えないために高速の彗星が先に突っ込むことになった。


 敵直衛機との空戦では有利な高度から零戦が仕掛け、数の力もあって彗星隊にはほぼ損害が出なかった。

 零戦の半分がグラマンとの戦闘で編隊から離れていく。そこに新たにグラマンが襲ってきた。

 更に零戦が剥がされていく。続いて上空から逆落としにグラマンが突っ込んできた。機数は少ないが脅威だった。そこに零戦が彗星の上に被った。落ちていく零戦。グラマンは他の零戦に追撃されている。

 隊長機から各自突撃せよとの無電と、指揮官機からの信号弾で突撃に入る。さっきの零戦の分まで爆弾を叩き込む。

 弾幕がきつい。僚機はとっくに消し飛んだ。あのでかい空母をやる。噂のエセックス級だろう。面舵を取って逃げる。逃がすか。更に降下角を深める。読み上げが続く「きゅうまる、はちまる、な


 敵急降下爆撃機の撃墜に沸く空母。だが喜びも長くなかった。七発が投弾され二発が命中した。一発は至近弾だ。二発は艦首に命中。一発はカタパルトを吹き飛ばし、もう一発は艦首備品庫付近で爆発。火災が派生して猛烈な煙が上がる。

 煙で火災に近寄れないという報告を受けやむなく速度を落とす空母。

 

 艦爆隊はいい仕事をした。敵大型空母二隻と軽空母一隻に命中弾を与え、大型空母一隻は火災が鎮火しないのか速度を落としている。もう一隻は船体中央部から煙を上げている。軽空母一隻は速度を落としている。

 更に直衛の戦艦や巡洋艦・駆逐艦にも被害を与えた。


 そこに天山が押し寄せてきた。零戦がグラマンを抑えている間に敵艦に迫る天山。

 戦訓に鑑み片舷異方向同時突入だ。零戦の一部は対空砲火に向けて銃撃を加える。

 空母に向かっても射線をそらされてしまった機体はそのまま目の前の敵艦に雷撃をくわえる。


 この攻撃で中央部から煙を吐いていた空母を撃沈。軽空母二隻も撃沈した。更に戦艦に魚雷二発が命中。大きく速度を落としている。巡洋艦も二隻が傾いた状態で停止している。

 

 とどめとばかりにトラックの三航艦がやって来た。薄く煙を吐いている空母を主目標とし次いで戦艦・巡洋艦という大型艦を狙う。

 他の空母から直衛機が飛んできているが、一機艦攻撃隊の迎撃で消耗したのか数が少ない。


 三航艦の攻撃隊が去った後、残っていた空母は飛行甲板を波が洗っている。戦艦は後部砲塔基部まで海面下だ。 

 傾いていた巡洋艦はもういない。他にも水面に重油後が幾つか残っている。


 偵察機の報告では大型空母二隻、軽空母二隻、戦艦一隻、巡洋艦四隻、駆逐艦七隻の撃沈が確認された。残った巡洋艦一隻と駆逐艦九隻で救助活動をしている。残りの空母二群は後方に下がったようで見えない。

 

 三航艦の攻撃隊が帰ってきたのは夕焼けの時間だった。


 久しぶりの確定した大戦果に海軍は沸き返った。




戦後の調査でアメリカ海軍の第一波は三百八十機、第二波が三百五十機、第3波が百七十機となっていた。




 




無事撃退できたようです。


この海戦で艦艇の被害はありませんが、航空機四百機余りが撃墜破され貴重な熟練搭乗員も多く失ってしまいました。日本の国力では再建に時間が掛かります。

その後短期間で再度トラックへの攻撃が有り、結局トラックは放棄されました。

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