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深まる謎

「城の地下牢、しかも最も厳重な所、ですか」


 あの二人が思っていたよりも厳重な場所に拘束されていたことに、デルタは少なからず驚いていた。


「あれだけの事件を起こした輩だからな。下手な牢屋に入れて脱獄されたら後が厄介だ」

「確かに」


 ウィベルに言われて、デルタは頷いた。


「で、どちらに話を聞いた方が効率的かね」

「どちらに?」

「当然のことだが、二人は別の牢に入れられているからな。同時に話を聞くことはできまいて」

「ああ、それなら先生も面識があるタスクの方がいいでしょう。俺はもう片方は顔を見ただけですが、いかにも堅物といった感じでしたので」

「ふむ。ではそうしようか」


 三人はタスクが囚われている牢屋へと向かう。


「これは珍しいお客様だね」


 三人の姿を確認するなり、タスクは相変わらずの軽口を叩く。


「気分はどうかね」

「はっ、こんな場所に閉じ込められて気分がいいわけがないだろう」

「まあ、それも君が犯した罪故だ。しっかり反省するといい」


 タスクに対しても教師らしい態度で接するウィベルに、デルタはらしいなと心中で呟いた。


「で、何の用かな。わざわざそんなことを言うだめに来たわけじゃないだろう」

「察しが良いな。君には聞きたいことがある」

「へぇ」


 ウィベルがそう言うと、タスクは意外そうな表情になった。


「でも、ある程度のことはそこの二人に話ちゃったけどね。それは聞いていないのかな」


 そして、デルタとレアルを交互に指差した。


「ああ。その上で改めて聞きたいこともある。君達の目的はこの世界をあるべき姿に戻すこと……つまりは、魔術も神術も存在しない世界にすること、という解釈でいいのかな」


 ウィベルは頷いた上で、タスクにそう尋ねる。


「ま、僕にとってはどうでもいいことだけどね。大体、その解釈で合っているんじゃないかな」


 タスクはさして興味がない、というように答えた。


「本気で言っているのか。魔獣が闊歩するこの世界で、魔術も神術もなくなってしまったら、人々はどうやって身を守ればいいんだ」

「でも、その魔術や神術が格差を生んでいるのも事実だよね。だから、その格差をなくすためにも、魔術や神術はなくした方がいい、らしいよ」

「らしい?」


 あくまで他人事のようなタスクの態度に、ウィベルは眉をひそめた。


「組織のお偉いさんがそう言っていたからね。ま、さっきも言ったけど、僕にとってはどうでもいいことだから」


 そんなウィベルの様子を意にも介さず、タスクは肩をすくめる。


「君の言うように、魔術や神術は生まれつきの資質で使えるかどうか決まってしまう。それが格差というのなら、確かにそうなのだろう。だが、本気でそんなことができるなどと思っているのかね」

「さあ、ね。ただ、お偉いさんは本気でできると思っているようだったけど」

「最後にいいかね。世界をそのようにして、それからどうするつもりかね。魔獣の対処はもちろんだが、今まであったものがなくなる。それがどのようなことになるのか、私には想像もつかないよ」

「そこは、僕も疑問に思っていたところかな。最初は、組織が世界を牛耳るつもりなのかとも思っていたけど、お偉いさんの様子を見る限り、そのつもりはなさそうなんだよね」

「そうか、手間を取らせたな」


 これ以上は有益はことを聞き出せないと判断して、ウィベルは話を切り上げた。


「思っていたよりも、簡単に話してくれましたね」


 帰り際、デルタはウィベルに声をかける。

 タスクは軽薄で口が軽そうな雰囲気はあったが、こうも簡単に喋るとは思わなかった。


「だが、わからないことも増えたな。魔術も神術も存在しない世界。それを作り出すことが目的だとして、何のためにそれをするのか。そして、その後はどうするのか」


 ウィベルは顎に手を当てた。


「そうですね。そんな世界を作り出して、一体誰が得をするというのか」

「だが、彼の言うことが事実なら、何かしらの対策をせねばなるまい。しかし、このような信憑性がない話を誰が信じる」

 

 ウィベルはやり切れないというように首を振った。


「はい。ですから、わたくしが何とかしようと考えています」


 そんなウィベルに、レアルはそう言う。


「レアル君、本気かね」

「わたくしの巡礼の旅は、今まで目的がありませんでした。ある意味で、宙ぶらりんだったともいえます。ですが、このような事態を見過ごすわけにはいきません」

「だが、君とデルタだけでは出来ることに限りがあるだろう。あれだけ大掛かりなことができる組織相手に、二人で挑むのは無謀だ」

「ですから、わたくしは一旦故郷に戻ろうと思います。そこで、様々な人の力を借りようと考えています。さすがに、巡礼の神術使いの言葉は無視できないでしょう」


 レアルは柔らかい笑みを浮かべた。


「なるほど、それで旅に出ることにしたわけか。急な申し出だったから、妙に思ったがそういうことなら納得だな」


 ウィベルは納得したように頷いた。


「はい。わたくしの我儘でここを見学させてもらうことになりましたのに、また我儘を言うようで少し心苦しいのですけど」

「いや、そういうことなら少しでも早く旅立てるように、できるだけのことはしよう」

「ありがとうございます」


 レアルは恭しく一礼した。

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