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もう一つの決着

「邪魔だよ」


 タスクは苛立ったように言う。


「通りたければ、俺を倒してからにすることだな」


 デルタは右手に炎を宿らせた。


「……順番は逆になるけど、まあいいか。どの道、君達もどうにかしないといけなかったからね」


 タスクは腰元から二対の短剣を取り出した。


「それがお前の武器か。禁術使いにしては珍しい得物を使うな」

「魔術の専門家が集う魔術学院に、魔術師を送り込むのは愚策だよね」

「確かに、そうかもな」

「じゃ、そろそろ行かせてもらおうかな」


 タスクは一気に間合いを詰めると、左右の短剣で交互に薙ぎ払った。


「炎よ、焼き尽くせ!」


 デルタはタスク目掛けて炎を放った。


「その程度の炎で」


 タスクは短剣で難なく炎を切り裂いた。


「魔術封じの禁術か」


 デルタは舌打ちする。


「まさか。これはあくまで僕の実力さ。その程度の魔術なら、魔術封じの禁術を使うまでもないよ」


 そんなデルタを、タスクは鼻で笑った。


「いずれにしろ、お前に通常魔術は効かないことはわかった」

「まさか、僕が上位魔術を使う隙を与えるとでも」

「そうだな、そんな隙をお前が暮れるとは思わない。だが……」


 デルタは右手に炎を、左手に風を宿らせた。


「同時に複数の魔術を!?」


 これにはさすがにタスクも驚いた声を上げる。


「炎よ、焼き尽くせ!」


 デルタは右手の炎を放った。


「風よ、切り裂け!」


 続け様、風の刃を放つ。


「この程度で」


 タスクは右手の短剣で炎を切り裂くと、間髪入れずに左手の短剣で風を切り裂いた。


「まだ終わりじゃない……氷よ、砕け!」


 今度はデルタの右手から氷塊がタスクに放たれる。


「雷よ、貫け!」


 間髪入れずに、雷を放った。


「早い!?」


 全く異なる属性の魔術が絶え間なく飛んでくるので、タスクは思わずそう口にしていた。


「だけど、この程度の魔術で」


 タスクはほぼ同時に氷塊と雷を切り裂いた。


「こうも違う属性の魔術を連発するなんて、一体君は何属性なんだい」

「あいにく、属性を持っていなくてな」

「属性が、ないだって? そんな馬鹿な。魔術師なら何かしら属性があるはずだ」

「ないものはないのだから、仕方ない。まあ、おかげで複数の魔術を違和感なく使いこなせるから、それもありかと最近思うようになってきたところだ。そして……」


 デルタは右手に巨大な炎を宿らせる。


「まさか、上位魔術!? いや、そんな隙はなかったはずだ」


 デルタが上位魔術を使うのを見て、タスクは狼狽えていた。


「俺は複数の魔術を同時に使うことができる。そして、それは上位魔術であっても例外ではない……炎よ、全てを焼き尽くせ!」


 デルタは人一人くらいなら覆いつくせる程の炎を放つ。


「くっ」


 タスクは一呼吸置くと、炎をギリギリまで引き付けた。


「確かに、君は凄いようだね。でも、属性がないというのは裏を返せば十全の魔術ではないということ。なら」


 タスクは一回、二回と炎に切り付ける。当然ながら、その程度でどうにかなるような炎ではない。


「僕を甘く見ないでもらいたいね」


 タスクは一回や二回で駄目となれば、回数を増やせばいいとばかりに炎に切り付けた。巨大な炎に体が飲み込まれても尚、切り付けることを止めなかった。

 切り付ける速度が徐々に上がっていき、目にも止まらぬ程の速さになっていた。

 そして。


「さすがに、ちょっとばかりダメージを受けてしまったかな」


 全身から煙を上げているが、タスクは完全に炎を切り裂いていた。


「驚いたな。まさか上位魔術をも処理してしまうとな」


 デルタは決まったと思っていたので、素直に称賛の声を上げていた。


「そして、君の実力も大体わかった。だから」


 タスクは一気に間合いを詰めると、デルタに切りかかった。


「魔術そのものを詠唱する隙を与えない」


 巨大な炎に包まれてダメージを負ったとは思えない速度だった。


「くっ」


 デルタは何とかその斬撃をかわすが、体勢を大きく崩してしまう。


「まだまだ」


 タスクはその隙を見逃さずに、追撃する。


「風よ、障壁となって守れ!」


 デルタは咄嗟に風の障壁を張った。

 だが、その障壁はいとも簡単に切り裂かれてしまう。


「なっ」


 驚く間もなく、足を切り裂かれていた。

 デルタは痛みをこらえて大きく飛びのいた。


「逃がさないよ」


 タスクはデルタが離した間合いを一気に詰めてくる。


「炎よ、焼き尽くせ!」

「無駄だよ」


 デルタが放った炎を、タスクはいとも簡単に切り裂いた。


「なら、これはどうだ」


 デルタは右手に炎を、左手に風を宿らせる。


「その手品はもう見飽きたよ」

「炎の嵐よ、全てを焼き尽くせ!」


 デルタは炎と風を同時に放つ。それは混ざり合って炎の嵐になっていた。


「何だと!?」


 上位魔術並の威力を持つ魔術が、隙なく放たれたことにタスクは驚愕する。意表を突かれたこともあって、炎の嵐をまともにくらっていた。


「ぐぅ……この程度で」


 タスクはどうにか炎の嵐を処理しようとするが、最初にまともにくらってしまったせいで、体の自由が利かなくなっていた。

 炎の嵐が収まると、黒焦げになったタスクが立っていた。


「さて、まだ戦えるかもしれないからな」


 一見すると戦闘継続は無理そうだったが、デルタは警戒を怠らない。右手に氷を、左手に雷を宿らせていた。

 しばらくすると、タスクは膝から崩れ落ちるようにその場に倒れこんだ。


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