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魔術戦

「魔術戦、ですか?」

「ああ、それなら俺の実力も示せるだろう」

「ですが、生徒と先生が魔術戦だなんて、聞いたことありませんよ」

「どうした、まさか怖気づいたのか」


 ここに来てしり込みをする生徒に、デルタは挑発するかのように言った。


「そこまで言うなら、いいでしょう。後で後悔しないでくださいよ」


 生徒は挑発に乗ったのか、そう言い切った。


「なら、魔術戦を行う場所へと移動するか。場所は俺が在学したいた頃と変わっていない……学院長室の隣で良かったか」


 デルタは学院にいた頃の記憶を引っ張り出す。


「はい、そこで変わりありません」

「特に許可を取る必要はなかったな」


 自分がいた頃と変わっている可能性があるので、念のために確認する。


「はい、いつでも自由に使えます」

「よし、なら場所を移動するぞ。ただし、他の授業中の生徒に迷惑をかけないように、静かに移動すること」


 デルタがそう言うと、生徒達は思ったよりも素直に従った。


「ねえデルタ、魔術戦って具体的に何をするの」


 魔術戦を行う場所に向かう途中で、レアルが囁いた。


「互いにある程度の距離を取って、魔術を打ち合う。ただし、直接相手に打つのではなく、魔力を一定量ぶつけると壊れる棒に対して魔術を放つ。棒を先に壊した方が勝ちだ」


 デルタはそう説明する。


「思っていたよりも、単純だね」

「まあやることは単純だが、棒をいかにして守るか、それともやられる前にやるか、各自の戦術で戦い方にかなり差が出る」

「で、あれだけ大見得を切って、勝ち目はあるの」


 レアルの言葉こそは心配しているものだったが、表情や口調は全くそうではなかった。デルタが負けるとは本気で思っていないようだ。


「俺は曲りなりにも卒業生だぞ。生徒相手に遅れは取らないさ」


 それを受けて、デルタは力強くそう言う。


 そうこうしているうちに、目的の場所に着いていた。


「さて、誰が俺と戦う?」


 デルタがそう言うと、二人の生徒が手を上げた。


「二人だけか? 他にはいないか」


 デルタは生徒達を見渡したが、これといった反応はなかった。


「そうか、二人ならちょうどいい。同時に相手をする」

「いくらなんでも、それは僕達を甘く見過ぎじゃないですか」


 生徒の一人がむっとした表情を作る。


「生徒と教師だからな。これくらいのハンデがないと不公平だろう」

「そこまでいうなら、二人同時に相手をしてもらいましょう」


 デルタと生徒二人は所定の位置に着いた。


「誰か、合図をしてくれ」


 デルタが合図をするように促すと、生徒の一人が手を上げた。


「お互いに、いいですか。では、始め!」


 その合図と同時に、二人の生徒は魔法の詠唱を始める。

 遅い、な。

 それを見て、デルタはそう感じていた。これなら同時詠唱を使うまでもない。


「氷よ、貫け」

「風よ、吹き飛ばせ」


 ほぼ同時に詠唱が終わって、二つの魔術がデルタ側にある棒に放たれる。


「凍り付け」


 デルタが放った氷は、生徒の氷をいとも簡単に打ち消した。それどころか、そのまま生徒側の棒にぶち当たった。


「風の刃」


 続け様に、風の方も同様に処理をする。


「なっ……」


 自分達が放った魔術が打ち消されたどころか、そのまま棒に当てられたのを見て、生徒達の表情が驚愕のものに変わっていた。


「どうした、まさかもう終わりじゃないだろうな」

「くそっ……氷よ」

「負けるかよ……風よ」


 デルタにせかされるように生徒が魔術を放つ。


「遅いな……凍り付け……風の刃」


 デルタは矢継ぎ早に魔術を放った。

 先程と同様に、デルタの魔術が生徒の魔術を打ち消して棒に当たる。そして、生徒側の棒にヒビが入っていく。

 その一方で、デルタ側の棒は全くの無傷だった。


「そろそろ終わりにするか……焼き尽くせ」


 デルタが放った炎が棒に当たると、棒が乾いた音を立てて崩れるように粉々になった。


「俺の勝ちだな」


 あまりに圧倒的な試合内容に、生徒達は言葉を発せずにいた。

 教師と生徒だから、ある程度の力の差はあって当然だ。だが、生徒側は二人がかりでも手も足も出なかった。


「本当に、属性がないのかよ」


 そんな呟きが、生徒の一人から漏れた。生徒側は自分の属性魔術を使っていたから、属性のないデルタ相手ならそれなりの勝負になると思っていたのだろう。


「確かに俺は属性がない。だが、基礎魔力を鍛え上げることである程度の相手までなら互角にやれるようになった」


 デルタはそう言ったが、生徒達は黙ったままだった。


「それから、お前達の魔術詠唱速度は遅すぎる。お前達が一つ魔術を詠唱する間に、俺なら二つ三つは余裕で詠唱できる」


 そんな生徒達に構うことなく、デルタはそう続けた。


「いくら基礎魔力を鍛えたといっても、ここまでの差になるなんて」


 生徒の一人が信じられない、というように言った。


「確かに、基礎魔力を鍛えることにも限界はある。だが、何もしないよりは圧倒的にましだろう。俺は学院にいた頃から、今に至るまで、基礎魔力の向上訓練を一日とて欠かしたことはない」

「結果が、それを証明していますね」


 デルタがそう言うと、生徒の一人がそう返した。


「まあ、お前達はこれからだからな。努力次第では、俺くらいあっという間に超えて行けるだろう。今後とも鍛錬を怠らないように」


 そこで、授業の終わりを告げる鐘が鳴り響いた。


「では、今日の授業はここで終わりにする」

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