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結論

「まさか、君達が巡礼の神術使いとその従者だったとはね」


 一連の騒動も収まり、ある程度落ち着いてきた頃合いで、ラバンは二人にそう言った。


「隠していたことは謝るよ」

「いや、別に責めているわけじゃない。僕が君達と同じ立場だったら、やっぱり隠すだろうしね。ここに来たことが教会の上層部にばれたら、何かと問題だろう」


 レアルが謝ると、ラバンは仕方ないというように首を振った。


「う~ん、それはそうなんだけど。それ以前に、巡礼の神術使いってばれたら入れてもらえないかなって」

「確かに、それもあるかもしれない。誰でも入れていいとは言ってあるけど、巡礼の神術使いとなれば話は違ってきたかもしれない」

「その方針は改めた方がいい。今回みたいなことがまた起こる」


 デルタはそう口を挟んだ。テッサの最後の言葉ではないが、今回のようなことが度々起こったら機械の街の存続すら怪しくなってしまう。


「そのことなんだけど、しばらくこのままでいこうかと思っている。今回みたいなことが起こるかもしれないけど、それでこの街が終わるのなら、それもまた運命だと思って受け入れるよ」


 だが、ラバンは強い決意を持ってそう答えた。


「あなたがそう言うなら、俺はこれ以上言わないが」


 デルタは小さく息を吐いた。


「気を使わせてすまないね。それで、レアル君。君は機械が本当に禁忌なのか、それを確かめるために来たと言っていたけど、結論は出たのかな」


 ラバンはレアルに話を振る。


「そのことなんだけど、まだ結論は出ていないというか、結論を出すのはまだ早いかな、って」


 話を振られて、レアルはそう答えた。


「どうしてそう思うのかな」


 意表を突かれたのか、ラバンは意外そうな表情になっていた。


「教会は機械のせいで魔獣が生まれて、それで機械は滅びたって主張しているけど、この街に来て色々と見たり聞いたりして、それは違うんじゃないかなって」

「なら、機械は禁忌じゃない。そういう結論に至るんじゃないのかな」


 レアルの言葉に、ラバンはそう返した。


「ボクが否定しているのは、機械のせいで魔獣が生まれて、それで滅んだ、っていう部分だけだよ。現に機械は一回滅んだというか、こうして細々と使われているだけに過ぎないし」


 レアルはラバンの言葉をそう否定する。


「それは教会が迫害しているから、機械が普及しないだけだとは思わないのかな」

「あくまで、それは一回滅んでからの話だよね。機械が滅んだ理由そのものじゃないよ」

「なるほど。だから君は結論を出すのはまだ早い、と」


 ラバンは納得がいった、というように頷いた。


「そういうことだよ。だから、もっと旅を続けて色々なものを見て、聞いて、それで改めて結論を出そうって、そう思っているんだ」

「そうか、それがこの街で君が出した結論なんだね」

「うん、だからね、デルタ」


 そこで、レアルはデルタに話を振った。


「なっ……何だ」


 急に話を振られて、デルタはしどろもどろになる。


「もう、そんなに慌てなくてもいいのに」

「今の話の流れで、俺に話が振られるとは思わなかったからな」

「それで、お願いがあるんだけど」

「そうか、俺を従者にしたのはこの街に怪しまれずに入るため、だったわけだからな。もうその用件も終わったことだし、お役御免か」


 デルタはそう結論付けた。元からそのつもりではいたから、さして落胆はしていなかった。


「もう、どうしてそんなことを勝手に決めつけるかな」


 だが、レアルは不服そうな表情を作る。


「違うのか」

「違うも違う、大違いだよ」

「なら、一体何だっていうんだ」


 デルタはレアルの真意が掴めずに、そう言った。


「普通、お願いでお役御免っておかしいって思わないかな」


 レアルの表情がますます不服そうになっていた。


「いや、俺は属性がないし、レアルの従者じゃなくなったら、また仕官先を探すのは相当に大変だし、そんなのをお役御免にするのは、ちょっと気が引けるんじゃないかって」


 それを見て、デルタは言い訳するようにまくし立てていた。


「どうして、そんなに自分を卑下するのかなぁ。デルタは十分に実力があるよ。それは目の前で見たボクが保証するから」


 そこで、レアルは大きくため息をついた。


「あ、ああ。そう言ってくれるのはありがたいが」

「だからね、お願いはこれからもボクと一緒に旅を続けて欲しい、ってことなんだけど」

「いいのか。いや、俺はありがたいんだが、レアルは別に一人でも大丈夫だろう」

「ボクがそうしたいから、お願いしてるんだよ。それに、一人よりも二人の方がお互いに助かると思うんだけどな」

「それは、そうだが」


 デルタはそこで思案する。このままレアルの提案を受け入れるのは、確かに自分にとってはありがたいことだ。だが、レアルにとってはそこまで恩恵があるとも思えなかった。


「もう、深く考えないで、はいって言えばいいの」


 そんなデルタに業を煮やしたのか、レアルは有無を言わさぬようにそう言った。


「わかった。そこまで言われて断るのは、逆に失礼だろうからな」


 その剣幕に押されたわけでもないが、デルタはそう返事をしていた。


「話はまとまったかい」


 それまで黙っていたラバンが口を開く。


「うん」

「なら、もうこの街に長居する必要もないだろう。いつ旅立つんだい」

「そうだね、明日あたりにでも」

「そうか。君達の旅の無事を祈っているよ」

「ありがと」


 レアルはラバンにそう言うと、改めてデルタに向き直った。


「これから、よろしくね」


 そして、自分の手を差し出す。


「ああ、こちらこそよろしく」


 デルタはその手をそっと握った。

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