属性のない魔術師
「魔術学院の卒業生か。随分遠くから来たものだな」
「ええ、まあ」
面接官にそう言われて、デルタは曖昧にそう返事をする。
「一人で、かな」
「はい」
そう答えると、面接官はやや驚いたような顔持ちになった。
「属性は?」
面接官にとっては当たり前の質問だったが、デルタにとっては来てしまったか、という質問だった。
「ありません」
デルタは一呼吸置いてからそう答えた。
「……すまないが、もう一度言ってくれないか」
「ありません」
「そんなことはないだろう。断る口実なら、もう少し言葉を選ぶべきだな」
面接官は呆れ半分、怒り半分といった口調で言う。
「属性測定石はありますか」
「もちろんあるが」
「なら、持ってきてください。俺の言葉が嘘でないことを証明しますから」
デルタがそう言うと、面接官は不可解といった表情をしつつも人を呼んだ。
「属性測定石を持ってきてくれ」
しばらくすると、拳大くらいの大きさの石と布が運ばれてきた。
「これ、壊しても構いませんか」
「ああ」
面接官の返事を受け、デルタは属性測定石に布を乗せた。そしてそのまま魔力を籠める。
魔術は四属性から成り立ち、魔術師であればいずれかの属性を持っている。属性測定石は文字通りそれを判別することができた。
火属性であれば布が燃え、水属性であれば布が濡れる。雷属性なら布が帯電し、風属性なら布が浮く。
デルタが魔力を籠めてからしばらく経ったが、何の変化も見られなかった。
「本当に魔力を籠めているのか」
「もちろんですよ」
デルタがそう答えると同時に、乾いた音を立てて属性測定石が二つに割れる。属性測定石は脆くできていて、ある程度の魔力を籠めると簡単に壊れてしまう。
もっとも、そこまで魔力を籠めなくても反応を示すから、壊れるまで魔力を籠めることはまずないといっていい。
「本当に、属性がないのか」
面接官の表情が疑念から驚愕に変わった。
「はい、ご覧の通りです」
その様子からして、今回も望み薄かとデルタは感じていた。
「……すまないが、君を雇い入れるわけにはいかない」
面接官はしばし思案した後、デルタにそう告げる。
「わかりました。お手数おかけしました」
デルタは一礼すると、その場を後にした。
これで、6件目か。
デルタは内心で溜息を洩らすと、今後のことを考えるのだった。