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タリム盆地

午後のお勉強は、お外でやることにした。

訓練場に二人を連れていくと、二人はあれ?って、顔をしてる。

うん。別に身体を動かす訳じゃないから。


「まずは、タリム盆地の成り立ちからだね?さて、ビアンカ。タリム盆地はどうして出来たのでしょうか?」


ビアンカが寄り目でうーんって顔をしてる。金髪のおさげ髪ってかわいいなあ。今度わたしもやってみよう。赤毛でも似合うかな。


「タリム盆地はその昔、山でした」


わたしは魔法を詠唱して、土を集めた膝の高さまでの小山を作った。

この日の為にこっそり練習しておいたのだ。


「そこに空から星が降ってきました。どっかーん」


作ったばかりの小山のてっぺんに適当に拾っておいた石を投げ付ける。

山の頂上は無くなり、丸く凹んだ形になる。

石が残ったままなので、そっと取り除く……実際には星も粉々になっただろうからね。


「こうして盆地が出来ました。その後、真ん中に湖が出来ました」


次はそこに少し水を注ぎ込む。これは水筒から出す。

本当は魔法でやりたかったんだけど制御が難しいから、今回は水筒から少しずつ、ゆっくりと注ぐ。真ん中に島があるから、その部分だけ少し土を盛る。こんな感じかな。

ちなみにこれがタリム湖と呼ばれてる。うん、そのままだね。


「はい、ここまでで何かある?……じゃあ、フロウラ」


なんとなくだけど、フロウラが何か言いたそうにしていたから聞いてみた。


「星が降ってきたというのは、どうして判ったのでしょうか?」


フロウラはビクビクしながらも、ちゃんと疑問を口にするね?意外と物怖じしない子みたい。青髪のおかっぱ少女ってクール系ってのが定番だよねってシューヤが言ってたけど、さすがに偏見だと思う。


「さあ?他にも山が爆発したって説もあるみたいだよ。でも、それなら地面から湯気が出ていないとおかしいから、それは無いってさ」


実はわたしもよく分かっていない。アオイ姉さんの受け売りだし。


「替わりにダンジョンから魔素が噴き出してるんだけどね。ダンジョンはわかるよね。魔物が湧き出てくる穴なんだけど」


ビアンカがうんうんって頷いている。山が吹っ飛んだ話は難しそうにしてたけど、これは知ってるみたい。


「ここタリム盆地にはダンジョン穴がいっぱいあります。どうしてかな?」


フロウラはきょとんとしている。なんかリスみたい。ドングリとかあげたくなる。


「吹き飛ぶ前の山にはかなり深いダンジョンがあったみたいなんだよね。それも山全体がバンデット・キラ―アントのアリ塚みたいに張り巡らされていたみたい」


ビアンカはうんうんって頷いているけど、多分、あんまし分かってないな?


「それが降ってきた星に吹き飛ばされて、中層部分が表に出て来ちゃったみたいなんだよね。でも、まだ中層部の一部と下層部分は残ってるから……」


あっ、フロウラは分かったかな?わたしが何を言いたいのか。


「今は、その上に土砂を被せているだけの状態なんだよね」


ビアンカが思わずといった感じで地面を見ている。そうなんだよ。この下にもダンジョンがあるかも、なんだよ。


「そんな訳でタリム盆地にはいろんな所にダンジョン穴が開いてます。そこから魔物も出てくれば、魔素っていう魔物の栄養分になる煙みたいなものも噴き出してきます。でも、盆地だから散らばったりしないで、そのまま溜まっちゃいます。」


ここでわたしは手から煙を出して、盆地の中に注いでいく。これは魔法じゃなくって、調合のスキルで作った。ある鉱石と樹液と魔物の体液を混ぜ合わせて作った特別製のパウダーだったりする。配合率をどうするのかが一番大変だったけど、うまく出来てるみたい。

さすがパウダー使いのムラサキちゃん、なのだ。……ステータスの称号付かないかな?


「そんな危険なタリム盆地なんだけど、人がいっぱいやって来るようになりました。なぜ、人はこんなに危険な所にやって来るのでしょうか?」


「貴重な素材が手に入ると聞きました」「貴重な鉱石があるからでしょうか?」


うん、どっちも正解。

多くの人を動かすのは何時だってお金。ただ単に冒険がしたいからって人はあんましいないんだろうなあ。


「本来はダンジョンの中にいる魔物が地上にウヨウヨといるから、貴重な素材が取り放題だし、魔素が濃い盆地には固有の植物が生えていて、それが貴重なクスリになる事も分ったのが理由の1つ。もう1つは、稀少な金属が多く採れるってこと。この金属で武器を作ると、すごい性能の武器が出来るんだよ。ちなみに、星が降ってきたって説が有力なのは、この金属が採れるってことが大きいんだってさ。エーテル属性の含有率がどうたらこうたらって、わたしも良く分かんないけど」


こう考えることも出来る。

このタリム盆地全体がダンジョンの上層部分なんじゃないかっって。だって、魔物だらけだし、盆地には霧がよく出るけど、あれかなり魔素が混じってるから……これって、もうダンジョンそのものだって思うんだ。

なんかワクワクするよね?


「ここは大丈夫なのでしょうか?」


ビアンカがちょっと怖がってる。さっきからチラチラ足元見てるけど、大丈夫だよ。

穴が開くなんて事はそんなに起きないから。運が良ければ大丈夫。きっと大丈夫。


「この周りにはシューヤが特別な結界を張ってるから安全だよ。だけど、それから出ちゃうと、危ないからね。ハナ姉から聞いてない?」


シューヤの結果は特別らしいから。そうじゃないと、こんな子どもだけで住んでたら、人とか魔物とかに、あっという間に襲われちゃって全滅だもの。


「「聞いてはいましたけど……」」


理由までは知らなかったと。おっと、ユニゾンしたぞ。二人で「あっ」って感じで見つめ合ってクスクス笑っちゃって。

お姉さんも混ざりたい。


「そんな訳で、そこいらに出る魔物にやられない程度の強さとかが無いと困るって訳。ハナ姉が特訓を厳しくする訳、分かるでしょ?」


二人がこくんと頷いた。

剣はハナ姉だから、それ以外はわたしが教えることになるね。

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