合同訓練の報酬(1)
「取り敢えず、次の話に移るぞ」
話のひと段落がつき、次の話へと移ろうとした。特に誰も反論はしなかった。勿論さっき話された内容自体を完全に納得したわけではないが。
「それで、お前たちにはアービター全員の合同訓練に参加してもらう」
五十嵐は手元にある端末に写っているカレンダーを見ながら言った。
「合同訓練? 」
宗平は聞き慣れない言葉に疑問を抱いた。
「具体的にはなにやるの? 」
宇佐美は五十嵐に聞いた。
「まず、合同訓練内容は2つある。 一つ目はソロ戦、2つ目はチーム戦だ」
「思ったより普通だった」
宇佐美はつまらなさそうに言った。
一体なにを想像していたのだろうか。
「優勝者にはそれなりの報酬があるそうだ」
五十嵐は訓練概要の最後の方に書いてある一行を読んだ。
「その……報酬って? 」
色葉は興味津々で聞いた。
「お嬢様でも報酬には目がないんだな」
茶化すように笑った。それに対して特に色葉は言い返さなかったが、自分でもはしたないことを言ってしまったことに後悔しているようだ。
「で、その報酬ってなんなの? 」
色々察した宇佐美が質問をした。
「夢内のメモリー使用領域の拡張だ」
五十嵐は静かに言った。
「なんですかそれは」
真っ先に質問を投げかけたのは望月であった。
「単純に言えば夢での自身の強化だ」
腕組みをする五十嵐は横柄に言った。
「具体的には? 」
それに対して望月は返した。
「そうだな、例えば武器を出すのにもメモリーは使用されている。 単純に言えばそのメモリーの限界量の上限を増やして武器を多く出せたり、素早く具現化することができる」
「つまり個人各々にメモリー使用の限度があるってことですか? 」
望月は五十嵐の説明に質問で返した。
「あぁそうだ」
望月は小さく頷いき、感謝を述べた。
「でもそんなのできても意味なくない? 」
宇佐美は髪をいじっている。
「そうでもないぞ、武器だけじゃなくてイメージの具現の規模とかを大きくできる」
宇佐美は何か考えた後に口を開いた。
「どう言うこと? 」
「イメージの具現をいち早くしたやつに聞いた方が早いだろ」
五十嵐は色葉の方向を向いて目で合図を送った。
「私ですか? 」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている色葉は、少しして大方なんのことか理解したようだった。
「ほ、炎の刃ですか? 」
聞き返した。
「あぁ、まさにそれがイメージの具現化だ」
五十嵐はメアリーから端末を受け取り、手元の画面を押した。
「これを見てくれ」
宙に浮かび上がったのは何かの数値を表している。
「なんの数値でしょうか? 」
色葉はまじまじとデータを見た。
「これはアシェルと戦った時のデータだ」
棒グラフで表されていたものを別のグラフに切り替えた。
「これが消費されたメモリー値の推移だ」
折れ線グラフで表されたその数値はいっときに大きく降り上がっていた。
「この高くなっているところがイメージの具現化したところ? 」
宇佐美は触れない宙に浮かぶ折れ線を指でつつきながら言った。
「そう言うことだ」
五十嵐は腕を組み頷く。
「にしても一人一人データを収集してるんですか? 」
宗平は五十嵐を見た。
「収集していると言うよりかは、ログとして残っているってだけだ。 後、研究部の人間がこの手のデータを欲しがるしな」
嫌そうな顔をした五十嵐は何か研究部とやらに嫌な思い出でもあるのだろうか。
少しして五十嵐はため息をついた。
「これで少しはやる気出たか? 」
宇佐美は小さく頷いた。
「あの……」
申し訳なさそうに手を挙げていた宗平に五十嵐は何だ?と聞いた。
「その……話戻るんですけど、メモリー使用権限の拡張ってクライアントに負担をかけないんですか? 」
実際個々のメモリー使用のリミットが決まっているのはクライアントと機械に過度な負担がかからないようにと設定されているはずで、そう安易に拡張をしてしまってもいいのだろうか。
「あぁいい質問だ」
一息ついて話を続けた。




