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「よし、これで第3班全員集合だな」
五十嵐は部屋に集まった班員を見て端末になにか入力した。色葉が目を覚ましてから2週間ほど空いて、皆と顔を合わせるのは久しぶりであった。
「あらぁ、教官辞めさせられなかったんですね」
宇佐美は茶化すように自分と同じくらいの背の教官に言った。
「うるせぇ、元々はお前らの…」
五十嵐は言葉に詰まったが、そのまま続けた。
「なんでもない、取り敢えずお前達に説明できなかったことをする」
五十嵐らしくない言動からやはり上層部からなにかしらのお叱りを受けたのは皆わかった。
「まず、2週間前に遭遇したやつはアシェルなのは言ったよな」
五十嵐は夢空間で遭遇したオリーブの巨樹の名前を皆に確認した。
「あの木はなんだったんですか? 」
宋平はあの時の死闘を思い出しながら、質問した。
「焦るなって、やつはガーディアンだ」
五十嵐はメアリーに合図を送り、手元にある端末を操作して、空中にあの巨樹の3Dモデルを映し出した。
「ガーディアン? 」
宋平は首を傾げながらおうむ返しした。
「守護者ってことね」
五十嵐が答える前に色葉が答えた。
「あぁその通りだ。 アシェルは東ヨーロッパ支部のガーディアンだ」
更に説明を付け加えた。
「DDNって支部があるんですね」
宋平は驚いた。他の班員も同様な反応を見せた。
「あぁ全部で12支部と本部で構成されていて、ここ日本支部は12支部の中でもトップだったりする」
五十嵐は自慢げに言いながら、さっきまで巨樹のモデルを消し世界地図を表示させた。
赤い点がそれぞれの12個置かれ、そこに支部のタワーがあることを示した。日本支部、東ヨーロッパ、西ヨーロッパ、ロシア支部、中国支部、インド支部、中央アジア支部、南アフリカ支部、オセアニア支部、南米支部、北米支部、アメリカ支部とそれぞれ赤い点の上に表示されていた。国での支部と地域での支部で違いがあるのは戦争のなごりだろうか。
「まぁ12も支部もなきゃバベルの塔計画も完遂できないってことですか」
望月は自分の中で納得したようであった。
「流石、物知りなメガネくん」
望月はその呼び方に嫌そうにしていたが、それと同時に褒められたような気がして嬉しそうにしていた。勿論心の中だけだが。
「バベルの塔計画はテレビで聞いたことあるけど、実際なにしてるか知らないんだよなぁ」
宋平は妹がいることもあってDDNと契約することなど微塵も考えていなかったためにそう言った知識が乏しいのである。
「本当になにも知らないんだな、それでもアービターかよ」
望月は見下したような目つきで宋平を見た。
「バベルの塔計画って言うのは創世記にある物語を元にしたゴードンハンプソンの計画で、全人類を高い塔に集約して皆一つに結束し、世界平和にするためのものだ」
望月は計画の概要を語った。
「あらぁ無名くん嫌そうに思ってるのに親切に教えるんだ」
宇佐美の言葉で自己矛盾のようなものを察した望月は黙ってしまった。
「まぁバベルの塔計画は置いといて話を戻すぞ」
五十嵐は話の路線を戻そうと皆に呼びかけた。
「あの、質問なんですけど」
宋平は手を挙げた。腕には傷口は無いもののまだ違和感を感じている。
五十嵐は言ってみろと質問することを許諾した。
「そのガーディアンとバグの違いってなんなのですか? 」
実際巨樹と戦っていた時はバグであると思い、任務を遂行していたつもりであった。
「順に追って説明する」
五十嵐はさっきまで浮かび上がっていた世界地図を消し、別の図を表示させた。
「まず、ガーディアンから説明する。 さっき言ったようにDDNには12の支部があり、それぞれにガーディアンが設置している。」
12個のガーディアンの姿は動植物をモチーフにしているようだ。
「日本支部はなにがガーディアンなの? 」
宇佐美は浮かび上がる図に指で遊びながら聞いた。
「お前達のよく知っているユダだ」
五十嵐は12個の図の中から獅子の絵をタップし、大きく表示させた。
「げっ守護者と私たち戦わせてたの? 」
宇佐美は大きく映し出された獅子を見ながら、嫌そうに言った。
「まぁそうでもあるし、そうでもない」
五十嵐は曖昧な回答をした。
「それはどう言うことですか? 」
色葉は空かさず聞いた。
「ガーディアンとバグは見た目は実はほぼ一緒と言うこうことだ
だ」
五十嵐は説明をした。
「つまり、バグと言うのはガーディアンと同じ容姿で夢の中で横行闊歩してるってことですか? 」
望月は驚いたように言った。
「まぁそう言うことだ」
静かに答えた。
「じゃ対処しようがないじゃない?」
宇佐美は気怠そうに言い放った。
「見た目はほとんど一緒だが、唯一違いがある。それは額の宝石だ」
皆の前に浮かび上がる獅子の額にズームされた。
「ガーディアンそれぞれに宝石が額に埋め込まれている」
獅子の額には赤い宝石が埋め込まれていた。色味を見る限りルビーに相当するものだろうか。
「そう言えばあのオカマにも宝石が埋まっていた気がした」
ふと宋平はあの縞模様の宝石を思い出した。
「つまり、額を見ればバグかどうかわかるってことだ。 わかりやすいだろ? 」
得意げに五十嵐は言った。
「今後そこを基準に戦うかどうか判断します」
望月は真面目にメモをしながら答えた。
真面目過ぎてキモいと宇佐美は引いていた。
「取り敢えずバグについてはついては以上だ質問あるか? 」
五十嵐は周りを見渡した、一人手を挙げていたのがすぐにわかった。
「なんだ? 」
五十嵐は真っ直ぐこちらを見る色葉を見た。
「あの自己脱出についてなんですけど……」
言いかけたところで宇佐美が割ってきた。
「そうだ、あれなんだったの?」
色葉は少し嫌そうな顔をして宇佐美を見た。
「おい、お前あの時押したら駄目だとか言わなかったか?」
望月はあの時思い出したのか、宋平を睨むように聞いた。そうあの時、日光について話そうと決めた時にアシェルが来て阻害されてしまったままであった。色葉は更に話を邪魔にされたが、特に言及しようともせず流れに任せた。
「その実は…その光が見えたんだ」
宋平は遂に言えたことに対して開放感を感じた。
「光? 」
色葉は首を傾げた。
「それは<<システムグリッター>>のことですか? 」
今まで全く話さなかったメアリーがこれだけは食いついてきた。
「え…そうですけど」
メアリーの体の小さいを忘れさせるような気迫に負けて、戯けてしまった。
「メアリーはなんで知ってるんだ? 」
五十嵐はメアリーに問いた。
「実は大学でそれについて少し研究していまして、そんなのオカルトだって当時は途中で断念させられましてね」
メアリーははしゃぎながら言った。
「そうだ一応大学出てたのか」
五十嵐はわざと大げさに驚いて言った。
「一応ってなんですか! 」
メアリーは顔を赤くして頬を膨らまさせたが、直ぐに宋平の方へ駆け寄ってきた。
「それで、それで<<システムグリッター>>についてもっと教えてください」
かなりテンションが高い。流石研究していたことだけあって相当興味があるようだ。
「詳しくわからないけども、この前の獅子もその光に攻撃をして倒したんだ」
メアリー自身あの獅子をどうやって倒したのか疑問であったようで、興奮している。
「それで、それで。 その発生のメカニズムとかは? 」
相当気持ちが高揚している。
「それが実は自分でもわかっていないんだ」
その言葉にメアリーの熱が一気に冷めてしまったようで、そうですかと
静かに言った。いつもの大人しい感じの彼女に戻った。
宋平も疑問に思っていた<<システムグリッター>>の発生の原因はなにか。
「その、システムグリッターとやらとその自己脱出とはどう関係してるんだ? 」
望月は話についていけずにいたため、困ったような表情で聞いた。
「わからない、ただ自己脱出する直前にボタンの方から光が見えたんだ」
は?っと望月の頭にはハテナマークが浮かんでいるようだ。
「あの、話についていけないんだけど」
宇佐美もまた困っているようで、五十嵐の顔を見て助け舟を要請した。
「まずは<<システムグリッター>>についての情報共有からだな」
その言葉に色葉は安心していた。彼女もまたよくわからない話をされているのだから。
五十嵐は宗平に伝えた内容と同じようなことを説明した。佐久間について以外は……。
「それじゃ、それがあればバグなんて怖くないじゃない」
宇佐美は一通り説明を聞き、率直な思いを言った。
「でもさっき言ったようにいつそれが見えるようになるかわからないんだ、それにアシェルと戦った時にわかったけど、対策されてしまうくらい脆弱なものなんだ」
しかし同時にそれらの欠点をどうにかすれば夢世界を支配できてしまうのではないかと逆に怖くなった。
「だから<<システムグリッター>>に頼るようなことはするな、絶対な……」
五十嵐は思いつめたような顔をした。彼は何かを思い出しているようだ。良いものではなさそうなのは顔を見ればわかる。




