妹と兄
新年明けましてあめでとうございます。
前話からだいぶ時間を空けてしまいましたが、これからもよろしくお願いします。
「お兄様!」
幼気な少女が4つ上の兄の背の高いその姿に声をかけた。
「なんだ色葉?」
優しそうな顔をした青年は妹の頭を撫でている。
「あのね、これ出来たの!」
そう言って、手にある折り紙の鶴を見せた。
「おぉすごいなぁ。 お母様にも見せておいで」
少女の兄は満面の笑みで小さな手にある折り鶴を愛でていた。
少女はキャキャと笑いながら奥の部屋いる母親の元へと向かっていった。廊下の道中、冷たい視線が少女に集まっていた。
少女の母親というのも、奥にいるのは病弱であったためである。色葉を産んで以降体調が優れていないのだ。近衛家では代々、二人目の子が女児であればその子は呪いの子という迷信があった。そのため少女は家の者から常に妬み忌み嫌われていた。兄と母を除いて。
「お母様! 見てください!」
少女は襖を勢いよく開け、布団に寝ている母親に駆け寄った。
「ふふ、今日も元気ね。 あら」
兄と同様に微笑んで母は折り鶴を見た。
「お母様も一緒に作りましょ」
少女の着物の袖から綺麗に4つに折り畳まれた折り紙を取り出した。
「はい、はい」
元気の良さに少し呆れつつも、その折り紙を受け取った。
二人はしばらくたわいも無い話をしながら折り紙で遊んでいた。少女にとって母と過ごす時間はとても幸せな時間であった。そんな時間もすぐに終わりを告げた。
丁度少女が2つ目の折り鶴を完成させた時、激しく襖が開いた。
「おい! お前がなぜここにいる! 」
少女の父が激怒しながら、鬼のような形相をした。足音は畳を軋ませた。父は娘の衣紋を掴み、外に放り出そうとした。
「待ってください あなた! 」
病気で身体が弱いながらも大きな声で父の行動を止めた。その言葉に父は掴んだ手を離した。
大声を出したため母は咳き込んでしまった。父は使用人に合図を送り、薬を持って来させた。
「お前はここから出て行け……」
小さく低い声で言った。少女は半分べそをかきそうにながら母の部屋を後にした。後ろは振り向かなかった。
一人、人のいない縁側でひっそりと少女は泣いていた。着物の袖は涙で雨が降り始めたように濡れていた。
「ほら、泣かないの」
優しい澄んだ声が後ろからした。
「お兄様……」
色葉は兄の姿を見て更に泣いてしまった。この小さな少女には酷な体験なのであり、優しくされたら泣くのは至極当たり前であった。
「まったく、泣き虫な妹だ」
少し兄も泣きそうな声で、妹の目から溢れる涙を拭き取った。
何があったのか兄は妹から聞かなくても容易にわかったのであろう。
それと同時に自分の無力さも感じたのだろうか。手を強く握った。
それからだ。兄は妹と今まで通りではなくなったのは。
そして兄は立派な次期当主としての威厳を獲得して行った。妹とは裏腹に...。
お兄様……。




