療養(2)
「で、どう? 仕事は慣れた?」
シルヴィアの心配していた顔はどこかへ行き、明るい表情で聞いた。
「慣れたのかな? この有様だからあれだけど」
その回答にシルヴィアは静かに笑った。
「何か面白かった? 」
宗平は笑うシルヴィアに不思議そうに聞いた。
「いや、ほんとあーちゃんらしいなって。 昔から変わらないなって」
「昔から? 」
シルヴィアと話すとなんだか引っかかる何かを感じるのだ。この前にあったことのあるような。
「ごめん、ごめん。 なんでもない」
シルヴィアははぐらかした。
「あのシルヴィア」
「なに? 」
シルヴィアは宗平からの呼びかけに首を少し傾けて言った。
「その俺の記憶にないだけで、実は前に会ってたりする? 」
宗平は今まで思っていたことを聞いた。それに対してシルヴィアは少し考え込んだ。
「どうしてそう思うの?」
逆に聞き返した。
「どうして思うって、今までの態度だとどう考えても前に面識あるようにしか思えないから」
「そうね……でも貴方とはあの路地が最初よ」
貴方とは?
「やっぱ何か隠してるよね」
宗平は確信へ近づくため更に問い詰めた。
「あのね、乙女には一つや二つ秘密事があるのよ」
シルヴィアは小悪魔的な顔をして宗平に微笑んだ。
可愛い……
「って!」
宗平は大きな声を出した。
「どうしたの急に」
シルヴィアはおかしな態度の宗平に更に笑った。
「でもまぁ、私の秘密はいずれ、あーちゃんにもわかるって」
「じゃ今でもよくない?」
「だーめ」
シルヴィアは頬を膨らませ怒った。
「そういうせっかちな男の子は嫌われちゃうぞ」
そう言われると何にも言えないじゃないか
「嫌われたくないから、もう聞かないでおく」
「あーちゃん可愛い!」
シルヴィアは嬉しそうな顔をした。宗平ははぁとため息をついた。
つくづく変な人だ
「あそうだ、今度からあーちゃんのサポートすることになったの」
笑っていたシルヴィアがハッと思い出して言った。
「サポート? 既に教官とメアリーさんがいるけど……」
「でも今回の件で色々あったから」
「でも、人事の仕事してなかったっけ? 」
「やめちゃった」
頭に握りこぶしをぶつけて舌を出した。
「DDNってそんなに緩い会社だったんだ」
変な発見をしてしまった気がした。
「私、こう見えても凄い人なのよ。 わがままの一つくらい聞いてもらえるの」
シルヴィアは簡単に言っているだろうが、そう簡単なことでも無いのは宗平でもわかった。なんだか申し訳なさがあったが、逆にそれについて話すと失礼な気がして特に言及しなかった。
「って言っても完全にあーちゃん達をサポートできるわけじゃないの」
「と言うと? 」
「人事の仕事は辞めたんだけど、流石にアービターの一班だけをサポートできるわけじゃないの」
「つまり、他三班全体をサポートするとかって感じ?」
「そうそう、肩書きだとアービター総合責任者っていうんだけど」
「え、それなんかすごいやつじゃん」
「そう言われると照れるなぁ」
シルヴィアは頬を赤らめ言った。
「待って……それ具体的に何する仕事?」
「そうね、まずは近々アービター全体の合同演習が行われる時の運営とか?」
「合同演習? 」
あっシルヴィアはまずいことをしてしまった顔をした。
「これ機密事項だったの忘れてた」
「もう仕事果たせてないね」
宗平はシルヴィアのポンコツぶりにお笑いした。
「でも近日にみんなに通達されるはずだから、今言っても大丈夫だと思う……」
「因みに何するの? 」
「簡単に言えば、お互いを鍛えあうみたいな? 」
「なにそのふわっとした説明」
「だって、そうなんだもん」
またシルヴィアは顔を膨らませた。
「とりあえずお互いに模擬戦闘を行ってもらうのよ、これならわかりやすいでしょ」
「おぉシルヴィアにしてはわかりやすい」
「馬鹿にしてるでしょ?」
シルヴィアは宗平の意地悪にむすっとする。
「まぁごうちゃんの方から詳しい説明あるから待ってて」
「ごうちゃんって? 」
「え? ごうちゃんてあーちゃんの教官だよ」
シルヴィアは不思議そうに言った。
「豪って言うんだ……」
今日は色々発見があるな。
それにしてもシルヴィアは自分以外にもあだ名つけているんだ
「それじゃ、引き継ぎがあるからこの辺で退散するわ」
「今日はお見舞いありがとう」
シルヴィアはその言葉に微笑み静かに部屋を出て行った。
部屋には柔軟剤の良い香りが残っていた。
宗平は物思いに病室の外を見た。
夢の世界の空ってどんなだっけか……
宗平の記憶は朧であった。




