Asher-アシェル(4)
「近衛流儀、八炎陽」
色葉の澄んだ声には気迫があった。
「あらぁ、随分とやる気ね」
巨樹は相変わらずの態度であった。色葉としても、油断している相手をするのは好都合であろう。
巨樹は宋平と同じようにムチの攻撃を仕掛けた。色葉は一瞬、苦い顔をしたが、直ぐに冷静な顔になった。無数に襲いかかる枝を一本一本的確に処理していた。切れ味の良い色葉の日本刀は枝を次々なぎ落としていった。
「あらぁ、私の自慢の枝がこんなざまに・・・・・・」
巨樹は切れた枝を見ながら嘆いていた。
色葉戦いながらも五十嵐の言っていた、火のイメージについて考え、探っていた。
「アシェルさん、もうこれでおあいこってことにしませんか? 」
色葉は隙があれば交渉をした。仮に勝てたとしても、無事に帰れそうにないのは容易にわかったからだ。
「だめよぉ〜」
巨樹はそう言いながら、さっき切られた枝の再生を行なっていた。
「凄い、再生力・・・・・・」
顔くらいしか動かない宋平はただ見ていた。
巨樹の枝が全て再生するのに要した時間はものの数十秒であった。先の方の枝は新しくできたため、分け目との色の違いがよくわかった。
「貴方の再生能力は凄いわね」
色葉、少しでもイメージができるようにと時間稼ぎのために巨樹に話をした。
「そうね、ここであればいくらでも再生できるわ」
「ここなら?」
「えぇ、他のガーディアンも同じよ」
「ガーディアン?」
「貴方、ガーディアンも知らないの?」
「知らないわ」
「知らないなら別に話すこともないわ」
巨樹はそう言って、再び枝をしならせムチのように攻撃を仕掛けた。先ほどと違い変速的に動く枝があり、色葉は苦戦を強いられた。
「攻撃パターンが複雑になってる!?」
色葉はなんとか攻撃を防いでいた。
「えぇ、でも光栄に思いなさい。 貴方が強いから少し本気出してるの」
「へぇ、嬉しいわ」
色葉は内心さっきまで本気の攻撃でなかったことに絶望しそうになっていた。
「そろそろ終わらせましょうかね。私もそんなに暇じゃないの」
巨樹はそうい言うと何かを念じた。色葉は警戒しながらも、永遠に攻撃する枝の対処で手一杯であった。そのすぐであった。色葉は身動きがとれなくなった。色葉は焦って、足元を見ると地面から生えた根が自分の足に絡みついていることがわかった。
「うっそ・・・・・・」
思わず声が漏れた。
巨樹はこの隙を見逃さなかった。隠していたのであろうか、幹の後ろから更にを増やした。色葉は目閉じた。もう無理だと。
ガシャン
どこかで同じようなことがまた起きた。起きたというより、また助けられたと言う方が正しいだろうか。
「宋平!?」
色葉は驚嘆の声をあげた。宋平は枝を腹で受け止めていた。正直もうダガーナイフを出す余力もないのである。
「いてて、ほら早く」
宋平は声が掠れながらも言った。
「もしかして、宋平って・・・・・・」
色葉はこの何かを思い出したように言った。が、しかし今一番大事なことは宋平を助けることと思い、剣を握りしめた。
「宋平を助けてに来た私が助けられるなんてなんて情けないわ」
だが、宋平のおかげで色葉は立ち直ることができた。
色葉はさっきまで見えてこなかったものが見えた気がした。
五十嵐が言っていた想いは、今回は仲間を助けたい想いであったのだと気づいた。実際宋平も同じような想いで動けないはずの身体を動かしたのだろうと色葉は推測した。
「近衛色葉、今までの修行を思い出すのよ」
色葉は自己暗示と共に昔のことを思い出した。




