Asher-アシェル(3)
「坊やの一撃、もう終わり?」
聞きたくもない巨樹の声がした。
「嘘だろ・・・・、今度は目とかじゃなくて光に・・・・」
宗平は落ちながらも、驚愕した。落下中はスローモーションのように感じ、嫌なぐらい巨樹の不敵な笑い顔をしっかりと見えた。そして地面に叩きつけられた。
「うっ・・・・」
「あらぁ、すごいわ。 この高さで落ちてもまだ生きてるなんて」
褒められているが、嬉しくもないし、もう戦う力などない。
「坊やの生命力をかって、何か言い残すことあれば聞いてあげるわ」
巨樹は目の前の崩れゆく小さな命へ慈悲を与えた。
「そ、、そうだな・・・・なんでいまの攻撃で倒れなかったのかくらいは聞いてみたいな・・うっ」
宗平は力を振り絞り言った。現にシステムグリッターを正確に当てたのにまだこの巨樹が生きていることが不思議でしょうがない。
「やっぱり坊や、システムグリッター見えるのね 」
巨樹の思っていた予想が当たった様子であった。
「坊や、答えは簡単よ。 守っただけよ」
「守る?」
宋平は巨樹の額を見上げた。そこにはさっきまで見えた宝石はなく、ドーム状のものがあった。
「そう、これで急所を防げるの」
そう言うと、ドーム状のカプセルが真ん中で二つに分かれ、またあの不思議な縞模様の宝石が顔を出した。
「そんなのずるいじゃないか・・・・」
「ずるい? 」
巨樹は宋平の言葉に低い声で言った。
「じゃ、坊や達は自分の弱点があるとしたら守らないのからしら? 」
巨樹はそのまま続けた。
「中世の騎士達は、その当時もっとも強かった剣を防ぐ為に全身金属で覆った。 銃弾を受けても大丈夫なように防弾ジョッキはできた。 弱点を守ることはどこもずるくことではないわ。 」
「まさか、、バグに説教じみたこと言われるとはね」
「ありがたい話って言いなさい。 」
巨樹は一通り話終えたと思い、攻撃態勢に入ろうとした。
「あっ言い忘れてたわ。 これだけは私言いたかったのよね、あんた達が私をバグって呼ぶの嫌いなのよ!」
今まで以上の力でしならせた枝が宋平を襲いかかった。宋平は虚ろ意識の中で巨樹の動きを見ていた。
これで終わりか・・・・瑞樹ごめん
一筋の光の軌跡が巨樹めがけて放たれた。
ぱぁん
音がずれて聞こえた。
「あぁぁああ」
巨樹の痛がる声がした。巨樹は宋平に向けた枝を元の位置に戻していた。額から煙が立ち込めていた。
「なんだ? 」
宋平はどの状況か理解できないでいた。
「宋平、大丈夫? 」
森の奥から聞き慣れた女の子の声がした。
「色葉さん? 」
宋平は色葉を見て、さっきの閃光の原因がわかった。
「望月の射撃か?」
「えぇ、森と少し離れた高台のところで」
「色葉さんは大丈夫?」
「とりあえずは・・・・。」
しかし完全には治っていないは容易にわかる。
「それにしても、なんで額に攻撃したんだ・・・・。 」
宋平は疑問に思った。別段望月に通信して急所であると教えたわけでもないのだから当然だ。
「教官の指示よ」
「教官?」
「えぇ、今望月がいるところでメアリーさんと通信が繋がってたのよ」
宋平は後ろにある高台を見た。そこにはスナイパーライフルの弾をリロードしている望月らしき影が微かに見えた。
「かなり離れているのに当てるなんてなんて正確さなんだ」
「まぁ望月はそう言う男よ」
宋平は少し違和感を感じた。よく考えれば自分以外の3人は既に面識あるように思えていたが、今のを聞いて確実に知り合いというだけではなく、昔からの付き合いだと確信した。
「教官命令で、撤退よ。 」
「撤退? 」
色葉は小さく頷いた。どうやら向こうで色々話をされたのだろうか。
「バグはこのままにしておいていいのか」
「それは後で話すから、今撤退よ」
色葉の真剣な顔を見て宋平はそれ以上なにも言わずにわかったと一言言った。森の奥へと色葉の肩を借りながら歩いた。
「ねぇ、あんた達ただで帰れると思ってるの? 」
巨樹の低い声が身体の芯まで響いた。
「アシェルさんごめんなさいね。 でもただで帰らせてもらうわ」
「は? あんだけ叩かれてもその性根は変わらないようね。 嫌いだわ」
「嫌われても良いから帰らせてもらってもよろしい? 」
宋平は後ろにいる巨樹が激怒しているのが、沸々とわかった。
「色葉さん、大丈夫?」
宋平は心配をした。
「えぇ、大丈夫。 少なくとも貴方をここで死なさたりしないわ」
男らしい発言に宋平は少し驚いた。
「アシェルさん? 貴方の領域を侵害したのは謝るわ。 でも私たちも今回が初めてだったの、許してもらえない?」
「初めてだったら、罪を犯しても許されると?」
巨樹はどうやら色葉との交渉を一切受け付けないようだ。
「仕方ないわ。 宋平、少し待ってて 」
そう言って、宋平を少し離れたところに座らせ、色葉は刀を抜いた。
「あら、やっと戦う姿勢になったのね。」
巨樹はさっき以上に枝を増やしたように見えた。一時的に急成長させたのだろうか。
「近衛流儀、八炎陽」
色葉、刀を顔の横で構えた。以前とはなにか違うオーラを感じた。




