初仕事(2)
「この森どこまで続くの?」
宇佐美は小一時間ほど歩いているが何も起きず、ただ木々の間を掻き分けている行為にうんざりしていた。
実際は森の途中でクライアントに関連した物があったりした。植物菜園の道具などが散在していた。菜園用のシャベルからDDNダイブする以前に育ていたであろう野菜まで。
「夢の中でなんでこんな泥まみれにならなきゃいけないの?」
宇佐美の愚痴は続いてた。他の皆も口にしていないが、宇佐美と同じことを考えている顔をしていた。
「点検のての字もしてないけど大丈夫なのか・・」
宋平はこの状況の危惧を皆に聞こえるように独り言を言った。
「いけない・・と思う。 でもさっきからメアリーからの通信が無いのよ」
宇佐美は色葉の言葉に少し嫌な予感を感じた。
「あのクソ教官の方には繋がらないの? 」
色葉は首を振った。色葉が言った通り森に入ったあたりからメアリーのオペレートが無くなった。最初はなにかの不具合かと思えたがどうも違う気がすると宋平は思っていた。
「自己脱出するのはどうですか?」
望月は冷静にこの状況を打破する案を出した。
「それもそうね。 えっと脱出の仕方はっと」
宇佐美は手元の端末の設定などを開いて確認している。
「にしても、自己脱出できるって言うのに、その仕方を教えてないのはどういうことかしら」
色葉は宇佐美同様、コンソール画面から今時珍しいタイピングをし、自己脱出のワードを調べていた。
「まぁあの教官だし」
宇佐美は笑いながら言った。
「多分ありました」
色葉はコンソールに打ち込んだ膨大な文字をこちらに見せた。
「色葉ちゃんはなんでこんなゴツイことできちゃうわけ?」
宇佐美は嫌味ったらしく言った。
「近衛家は常に・・」
「はいはい」
宇佐美はうんざりした顔して、色葉の言葉を遮った。
不満げに色葉は自己脱出の仕方を説明した。
「さっき言った手順でいけるはずです」
「えっと、設定から・・・・緊急時・・・・あーてってとこ?」
宇佐美は色葉の言われた通り進めた。
「ただなにか変なのよね」
「なにが?」
色葉はコンソール画面にタイピングをして説明した。
「元々システム自体は自己脱出できるみたいなんだけど、よくわからないけど正規の方法じゃできないみたいなの。 今は私が管理者権限を解除してできるようにしてるけど・・」
色葉は自分に視線が集まっていることに気づいて最後の方は小さく言い、手を止めた。
「謎なとこがオタクぽいとこがあるからモテないのよね」
「宇佐美さんね、、、あのねぇ。 それとこれはまた関係ありません」
「だって、この間なんて西條さんのみあぃ」
ばこんと叩く音と色葉が顔を真っ赤にして宇佐美の頭を叩いた。
「あらー、素直な色葉ちゃんだこと」
「次言ったら・・・」
「はいはい」
会話からわかる通り二人は仲良しなのだろうと宋平はしみじみ思っていた。
喧嘩するほど仲良いってか
望月が咳払いをした。それに気づいた色葉は話を脱線から本線に戻した。
「つまり、<<アーテー>>の機能は推奨されたものじゃないってことなのよ」
「単純に仕事を勝手に放棄する輩がいて、制限してるのでは?」
「そうね、あなたの言う通りかもしれない」
「では、今回どうしようもない状況では問題ないのではないでしょうか」
色葉は望月の提案にどうもすぐには同意できないが、このままいてもしょうがないとも思い、葛藤していた。
「じゃ私から押すよ」
宇佐美は色葉の指示を待ちきれず<<アーテー>>を押そうとした。その時は宋平に頭痛が襲った。あの時同じような。
「そんな」
宋平の目には<<アーテー>>の文字の辺りからあの光が見えたのだ。
<<システムグリッター>>
「それ押したらダメd」
宋平の言葉の前に宇佐美は既に押し終え、指を離す瞬間であった。刹那に宇佐美の姿は無くなっていた。恐らく強制的に覚醒したのだろう。
「おい、お前今押したらダメだって言わなかったか?」
望月は宋平に問いただした。
「それは・・」
「なにを隠してる。言え!」
望月は宋平の胸ぐらを掴んで叫んだ。
「望月やめなさい」
色葉は望月に命令した。望月は渋々手を離した。
「宋平くん、説明してくれる?」
色葉は宋平に優しく、だが静かに聞いた。宋平はもう隠すのも限界を察し、光について説明を決意した。
が、その時。地面が揺れたことがわかった。
「地震?」
色葉は大きな揺れに耐えられず地面に座り込んだ。
嫌な予感が当たったか。
色葉も同様のことを思ったらしく、刀を構えた。なにか来るかがわかった。




