光の正体
宗平の活躍によってユダを倒すことができたアービター一同。達成感と安堵した宗平であったが、五十嵐に呼び出された。
五十嵐は宗平を部屋の外へと連れ出した。彼の顔は明るい表情ではなかったのは容易にわかった。そして他の班員に聞こえないであろう場所につくと彼は重い口を開いた。今までの軽い口調ではなく。
「お前、なんでユダの倒す術を知っていた?」
五十嵐の睨んだ目は宗平をただ一つ見ていた。
「倒す術って言われても・・・。 なんとなくと言うか」
宗平はとりあえず、あの光の話は信じてもらえるとは思えず、はぐらかした。
「なんとなくで倒せるほど甘くないと戦ったお前がよくわかるだろ」
確かにそうだ。獅子との戦いは簡単ではなかった。五十嵐が疑うのも無理ないことはわかる。宗平は黙り込み考えたが、小さく呟いた。
「光が…。」
光?五十嵐はその言葉に首を傾げた。こいつは何を言っているのかわからないというごく当たり前の反応であった。そのはずだった。
「お前、今光って言ったのか?」
五十嵐は疑わしく宗平に聞いた。どうやら宗平が予想していた反応ではなかったようだ。
「ええ、まぁ信じてもらえないと思いますけど」
「あぁ信じられないよ。 <<システムグリッター>>が見えるなんて」
──システムグリッター?
聞き慣れない単語に宗平は当然のように困惑した。
「光の正体だ。」
「そのシステムグリッターに攻撃をすれば獅子が倒せるってことですか?」
「あぁ大方そうだ。 そして通常見えてはいけないものだ。」
やはり他の人が見えないのは宗平の予測通りであった。
「あの女とんでもない奴を送り込んできたな」
五十嵐の言うあの女は、おそらくシルヴィアのことであろう。五十嵐はこめかみ辺りに手を当てメールを送信した。
「あのそれでシステムグリッターが見えるといけないんでしょうか?」
宗平は五十嵐に素朴な疑問を投げかけた。
「いけないに決まってるだろ。 お前が見えていた光はシステムの穴だ」
「穴?」
「そこを攻撃されればそのシステムは停止もしくは破壊される。 そうさっきのユダのようにな」
簡単に説明されたが重要なことだと宗平にもわかった。
「つまり、お前は今コンピュータの犇めくこの世界に存在してはならないということだ」
──存在してはならない・・・。
「ただ、今は管理下にいるから・・・。 そう言うことか」
五十嵐はなにか気づいたと同時に先程のメールを送った相手からの着信がきた。
「はぁ、なんでこうもあの女が絡むと面倒ごとが増えるんだか」
五十嵐は大きなため息と愚痴をこぼした。
「なんかすみません」
「なぜお前が謝る?」
「いや面倒ごとの種なので」
「まぁ面倒ごとの種なのは確かだが、、改めてグリッターを見えるやつがいるなんて信じられない」
「都市伝説的なやつですか。自分は聞いたことないですけど」
「そんなとこだ。 実際最近になって、認知されたがね」
「つまり私以外にも見える人がいるもしくはいたということですか?」
あぁと五十嵐は小さく頷いた。
「その方は今」
「行方不明だ」
「そんな・・・」
「そいつは元はDDNの社員で俺の同期だった」
五十嵐は過去のことを懐かしむと同時に少し悲しそうな顔をして続けた。
「グリッターが見えることが発覚してから・・・、ほんと馬鹿なやつだ佐久間は・・」
──佐久間
宗平にはその名前に特に覚えはなかった。なにが起こったのかも気になるが、それと同時に佐久間という者に会いたいという衝動にもかられた。
二人はしばらくその場に立ち尽くしていた。




